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フード  |    2026.03.16

彩ムスヒ「山本ちあきさん」一人で続けるキッチンカーという選択【後編】|愛媛県松山市

前編では、日替わりのおむすびと紅茶、キッチンカーという形を選んだ「彩ムスヒ」の姿を追ってきた。

後編では、店主・山本ちあきさん(以下、山本さん)が「一人で続ける」ことを選んだ理由や、売上や規模の拡大よりも、自分の感覚を大切にしている理由などに焦点を当てる。

誰の指示も受けず、自分の判断で立てる場所を持つこと。それは、華やかな独立物語とは少し違う。迷い、時間をかけ、細々と始めたからこそ見えてきたものがある。このキッチンカーが続いている理由は、数字ではなく、その選択の積み重ねにあった。

前編はこちら

おむすびと紅茶のキッチンカー「彩ムスヒ」の魅力とは【前編】|愛媛県松山市

誰の指示も受けない場所が欲しかった

揺るぎない信念を持つ山本さん

山本さんがキッチンカーを始めた理由は、シンプルだ。

自分の居場所が欲しかったんです」誰かの指示を受けて働く場所ではなく、自分の判断で立っていられる場所。それを作るには、店を持つしかないと思った。

食べることが好きだったこともあり、飲食という選択肢は自然だった。その中でも、キッチンカーは初期費用を抑えられ、一人で始めやすい。ただし、勢いで始めたわけではない。

「やりたい」と思い始めてから、実際に形にするまでには、10年という時間がかかっている。

10年かかった踏ん切り

ステキな笑顔に引き込まれる

栄養士などとして働いていたものの、どこか物足りなさが残った。

私じゃなくてもできる仕事かもしれない、って思ってしまって」自分がそこにいる意味を、どうしても考えてしまう性格だったという。

最終的にたどり着いたのが、「好きなことでお金を稼ぐ」という選択だった。整体、占い、キッチンカー、水引のハンドメイド。一見するとバラバラだが、本人の中では一本の線でつながっている。

「全部、私が好きなことなんです」

一人でやるという選択

力強い眼差し

キッチンカーを続ける中で、「誰かを雇わないのですか?」と聞かれることもある。答えは、はっきりしている。

全部、自分でやりたいんです

誰かを雇えば、楽になる部分はある。売上を伸ばすこともできるかもしれない。

けれど、人が入れば、やり方を共有しなければならない。自分のペースは変わる。せっかく「自分の居場所」を作るために始めたのに、その居場所が他人の都合で変わってしまうのは、本末転倒だと山本さんは感じている。

準備がどれだけ忙しくても、営業の翌日にまた仕込みがあっても、一人でやることを選んでいる。

売上よりも、「受け入れてもらえた」という感覚

仕事を楽しんでいるのが伝わる

このキッチンカーが続いている理由を聞くと、山本さんは少し考えてから、こう話した。

買ってもらえるって、受け入れてもらえてるってことじゃないですか

自分が美味しいと思ったものを出す。それを誰かが選んでくれる。その積み重ねが、続ける理由になっている。売上の数字だけを追っているわけではない。むしろ、「ありがとう」と言われた瞬間の方が、ずっと記憶に残っている。

細々とやるつもりだったのに

準備から片付けまですべて1人で

最初は、本当に細々とやるつもりだったという。自分から売り込みに行く気もなかった。それでも、不思議と声がかかった。

イベント主催者に見つけてもらい、出店の機会が増え、キッチンカー仲間とのつながりもできた。結果的に、想像していたよりも安定して稼働できている。

「運がよかったんだと思います」そう言いながらも、運を受け取れる位置に立ち続けていたことが、何より大きかったのかもしれない。

これからやりたいこと

どれも美味しそう

将来的には、キッチンカーだけでなく、自分の店を持ちたいという思いもある。表向きは、おむすび屋。そこに整体や占い、ハンドメイド、ワークショップが重なる。

「これだけをやる、って決めなくていいと思ってて」一つに絞るのではなく、好きなことを全部やれる場所を作りたい。それもまた、「自分の居場所」を作るという発想の延長にある。

常連のお客さんの声

商品の提供方法にも妥協はない

取材中も、何人かの常連客が足を止めていた。紅茶を受け取りながら、山本さんと短い言葉を交わしていく。そこに、特別なやり取りはない。

けれど、その距離感が、このキッチンカーらしさをよく表している。和紅茶という言葉を、この店で初めて知った人もいる。

「紅茶なのに、日本茶みたいで飲みやすい」そんな感想が自然と口に出る。おむすびを食べたことがなく、紅茶だけを目当てに通っている人もいた。無理に勧めないからこそ、それぞれの関わり方が続いているようだった。

まとめ

商品への愛が伝わる

一人で続けることは、決して楽ではない。準備も営業も、すべて自分で背負うことになる。

それでも山本さんは、この形を選び続けている。誰かに合わせるのではなく、自分の感覚を信じて立てる場所だからだ。このキッチンカーは、「こうすれば成功する」という答えを示してはいない。

ただ、自分の居場所を探し、時間をかけて形にしてきた一人の選択を、そのまま伝えている。派手さはない。けれど、無理をしないからこそ、続いている。その静かな姿勢が、今日もまた人を引き寄せている

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・想いを取材し、 文章✕映像✕出版✕AIで編集、 世界に向けて発信しています。 神社仏閣、地域活動、仕事など、 現場に足を運び、空気感を伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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