横浜駅直結のそごう横浜店に店を構える「牛鍋処 荒井屋」。明治時代から続く牛鍋文化を今に伝える老舗の味を、日常の延長で味わえる一軒です。
落ち着いた照明の館内に入り、席へ案内されると、周囲にはゆったりと食事を楽しむ人たちの姿。百貨店内という利便性の高さがありながらも、店内にはどこか静けさがあり、慌ただしさから少し距離を置いた時間が流れています。
今回いただいたのは「牛鍋御膳(松)」。鍋だけではなく、刺身や茶碗蒸し、甘味までがセットになっています。配膳された瞬間、整然と並ぶ器と、中央に据えられた牛鍋の存在感が目に入ります。
横浜名物の一つである牛鍋

牛鍋は、横浜の開港とともに広まった食文化のひとつです。
明治初期、西洋文化の流入によって牛肉を食べる習慣が広がり、それを日本の調味で仕立てた料理として定着したのが牛鍋でした。醤油や砂糖をベースにした味付けで肉を煮るこの料理は、現在のすき焼きの原型ともいわれています。
当時はまだ珍しかった牛肉を扱う料理として、文明開化の象徴のように人々の関心を集め、やがて横浜の名物として根付いていきました。時代が進む中で調理法や提供スタイルは変化しながらも、「鍋を囲んで牛肉を味わう」という基本は変わらず受け継がれています。
荒井屋は、そうした歴史の流れの中で長く営業を続けてきた店のひとつです。そごう横浜店は百貨店内という立地にありながらも、味や提供の丁寧さにはその背景がしっかりと感じられます。
豪華なラインナップの牛鍋御膳(松)

牛鍋御膳(松)は、牛鍋や刺し身、茶碗蒸し、ご飯など豪華なラインナップ。
まず主役となる牛鍋は、火を入れる前の状態で提供されます。器の中に広げられた牛肉は一枚一枚が大きく、細かく入ったサシが均一に広がり、見た目にも質の高さが伝わります。下にはすでに割り下が入り、火を入れる準備が整えられています。

刺身は本マグロの赤身とトロ、そして炙り鰆の三種。赤身のすっきりとした旨味、トロの脂の甘さ、炙りによる香ばしさと、それぞれに異なる方向の味わいが用意されており、牛鍋とは違った楽しみを挟み込む役割を果たしています。

さらに茶碗蒸しや香の物、ご飯、味噌汁が並び、最後にはあんみつが控えています。
牛鍋の味わい

火を入れると、薄切りの牛肉はすぐに色づき、柔らかくしなやかな状態へと変わります。箸で持ち上げると、ほどけるような感触があり、過度に火を通す必要がないことがわかります。
割り下は甘さと醤油のコクがしっかりと感じられる味付けですが、濃さが前に出すぎることはなく、あくまで肉の旨味を支える位置に収まっています。脂の甘さと重なったときにちょうどよいバランスになるよう調整されている印象です。
具材では、焼き目のついた豆腐が特に印象に残ります。表面の香ばしさと中のなめらかさが対照的で、牛肉とは異なる食感の変化を生み出しています。春菊やねぎ、しらたきといった具材も、それぞれ味が染みていました。

溶き卵にくぐらせることで、味わいはさらにまろやかになります。
まとめ
横浜の歴史とともにある牛鍋を、肩肘張らずに楽しめる点は、この立地ならではの魅力です。駅直結という利便性がありながら、落ち着いた空間でゆっくりと食事ができるため、買い物の合間や少し時間をとりたい日の食事にも向いています。
伝統的な料理を現代の環境で無理なく体験できる。そのバランスが、この店の価値を形づくっているように感じられました。
牛鍋処 荒井屋 そごう横浜店
住所:神奈川県横浜市西区高島2-18-1 10F
定休日:不定休(そごう横浜店に準ずる)
営業時間(昼の部)
平日11:00~15:30(L.O.15:00/コースL.O.14:00)
土日祝 11:00~16:00(L.O.15:30/コースL.O.14:30)
営業時間(夜の部)
17:00~23:00(L.O.21:00/コースL.O.20:00)
電話番号:045-548-9001




