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もの・こと  |    2026.02.13

知らない誰かの日記やスケジュール帳を読む「読書会」とは?手帳類図書室湘南台分室で体験|神奈川県藤沢市【前編】

紙の手帳や日記帳は、本来書き手の自分だけが読む、プライベートなもの。ですが、そんな個人的な記録を読むことができる、不思議な場所があります。

訪れたのは、神奈川県藤沢市にある「手帳類図書室湘南台分室(以降、湘南台分室)」。今回は、こちらで開催されている「手帳類読書会」に参加し、知らない誰かの手帳や日記を読む面白さを体感してきました。

スケジュール帳やメモ帳、日記帳、家計簿など、手書きで残された個人的な記録を「手帳類」と名づけて収集しているのが、手帳類収集家の志良堂正史(しらどう まさふみ)さんです。2014年から集め始め、そのコレクションはなんと2,000冊以上。

湘南台分室室長のナオエダカナコさんは、志良堂さんのコレクションの一部を借り受け、2025年7月に湘南台分室をオープンしました。

手帳類図書室湘南台分室が入る建物の外観

誰にも見せないはずの、人の手帳や日記が並ぶ本棚

湘南台駅西口を出て、線路沿いに10分ほど歩くと、踏切近くの建物の入り口に「手帳類図書室」の看板が。1階のドアを開けると、室長のナオエダカナコさんが明るく出迎えてくれました。

写真左奥の茶色い扉が入口
こちらのテーブルで手帳類を読む

ピアノのBGMが流れる室内は、ゆったりと落ち着いた雰囲気。カウンターを抜けた先には大きなテーブルが置かれており、突きあたりの壁一面にファイルボックスの詰まった本棚があります。この中に400冊ほどの手帳類が収納されているそう。

湘南台分室は木、金、土曜日が開室日です。カウンターで利用料を支払い、テーブルに置かれた目録の中から気になる手帳類を選んで読むことができます。

右のファイルが目録。書き手の属性や、手帳類の見どころが書かれており、これだけでも読みごたえがある

日記から浮かび上がる、ひとりの人生

今回は、隔月で行われるイベント「手帳類読書会」(2時間、参加費2,200円)に参加しました。

参加者は、ナオエダさんを含め3名。自己紹介の後、ナオエダさんが本日読み込む手帳類を広げて見せてくれました。まだ湘南台分室の目録には登録されていない、レアな手帳類だとか。

手帳類は現在、手帳類図書室のホームページから寄贈を受け付ける形で収集されています。複数冊持ち込む人も多く、今回の読書会で取り扱ったコレクションも、3冊の日記と3冊のスケジュール帳、合計6冊が一人の女性から寄贈されています。

まずは、書き手が中学生~大学生の頃に書かれた日記を1冊ずつ分担し、1時間かけて読み込むことに。

計6冊の手帳類を3人で読み込む

「人の日記を読む」という非日常の体験に、少し後ろめたさを感じてドキドキします。手帳類はすべて寄贈者の許諾を経て公開されているものなので、書き手に敬意を払いつつ、そっと人生を覗かせてもらいます。

表紙を開くと、シャープペンシルで一行ずつ、ぎっしりと文字がつづられていました。「~やねん」「~やで」と、方言で親しげに話しかけるような文体に面白さを感じ、すかさず気付きをメモに残します。

読み進める中で、書き手の女性が浪人生時代の日記であることや、音楽活動に力を注いでいることなどがわかりました。

日記の中には失恋のエピソードも。その日の日記は「終わった。長くて長くて短かった。」という書き出しから始まり、文学的な表現に強く惹かれました。

他にも「好きな人と一緒にいたいっていう感覚は、お花飾っときたいっていうのと似てるんかもね」などの名言が飛び出し、そのたびにページをめくる手が止まります。

独自の恋愛観や死生観、自分のアイデンティティを探す内面描写に引き込まれ、メモをしては読み、を繰り返していると、あっという間に時間が経ちました。

1時間後、日記の中で気になった描写や、気づいたこと、感想などを他の参加者とシェアし合います。

「持病の話があり、だからこそ若いうちから深い死生観を持つようになったのでは」「自分を俯瞰するような内面描写が多く、頭の良さを感じる」など、三人それぞれの解釈が集まり、書き手の人物像がだんだんと浮かび上がってきます。1冊の日記を読んでいるだけではわからなかった情報がつながり、パズルのピースが組みあがっていくような感覚にワクワクします。

日記は、就職を控えて進路に悩んでいるところで途絶えていました。書き手の女性は今何をしているのだろう、健康に楽しく暮らしていたらいいな、と思いをはせながら、2時間の読書会が終了しました。

自分だけの気づきがあるはず

もくもくと日記を読み、誰かの人生に没頭する。日記の解釈を共有し、誰かの人生に心を寄せる。どちらも、手帳類読書会でしか味わえない特別な体験でした。

読み手の属性や状況によって、書かれているものから受け取るメッセージや、印象に残る言葉、読み取れる情報はさまざまです。

一風変わった読書体験がしてみたい人は、ぜひ、手帳類図書室を訪ねてみてください。今のあなたにとって、気づきのある手帳類にきっと出会えるはずです。

後編では、室長のナオエダカナコさんに、手帳類の魅力と楽しみ方を詳しく聞きました。

後編はこちら

手帳類図書室湘南台分室・室長に聞く、人の日記を読む楽しさと魅力|神奈川県藤沢市【後編】

手帳類図書室・湘南台分室

住所/〒252-0813 神奈川県藤沢市亀井野477-6 1階
利用料金/1人あたり1,100円(税込)〜
利用時間/木・金曜日は1枠90分、土曜日は1枠60分 ※空きがあれば延長可能
営業日/木・金・土曜日 ※最新のスケジュールは公式Instagramより確認可能
営業時間/午後1時~5時
公式サイト/https://techorui.jp/
公式Instagram/https://www.instagram.com/techorui_bunshitsu/

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この記事を書いた人

枝田氷

東京在住の取材ライター。美術館、書店、水辺の散歩、知らない味に出会うことが好きです。

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