手帳類図書室湘南台分室(以降、湘南台分室)では、誰かが手書きで残したスケジュール帳やメモ帳、日記帳、家計簿などの個人的な記録「手帳類」を読むことができます。
前編では、隔月で開催されている「手帳類読書会」の様子を紹介しました。
後編では、湘南台分室室長のナオエダカナコさんにインタビューし、手帳類のさらなる魅力に迫ります。

手帳類と出会った衝撃から、分室を開くまで
自身を「記録魔」と称すナオエダさんは、中学2年生の頃から日記をつけ始め、読書や映画の日記、家計簿、育児日記など、これまでにあらゆる記録を残しているそう。
もともと自分の日記を読み返すことが好きで、商業出版された日記もよく読んでいたというナオエダさん。東京都渋谷区にある手帳類図書室本室※で初めて手帳類を手に取ったとき、肉筆で残された生々しい記録の数々に「こんなものを読んでいいんだ」と衝撃を受けたといいます。
※移転のため現在閉室中。2026年2月に、東京都港区にて新店舗をオープン予定
そのうち、自身の読書日記を手帳類図書室に寄贈したことで、手帳類収集家の志良堂正史(しらどう まさふみ)さんと繋がりができます。
志良堂さんの膨大なコレクションは手帳類図書室本室の書棚には入り切らず、まだ公開されていないものも多数あると知り、ナオエダさんは手帳類の一部を借り受け、分室を作る構想を練りはじめます。
そして2025年7月、よい物件との出会いがあったことから、自宅近くの湘南台に分室をオープンしました。
怖いほど人生に入り込む体験
そんな日記好きのナオエダさんに、手帳類の魅力を聞くと「没入感」というキーワードが。
「映画を観たり、小説を読んだりすると、自分が経験したことのない人生を追体験できますよね。手帳類を読むことは、それらとは比較にならないほど、怖いくらい没入感があります。手書きだからこそ、筆圧や字の乱れで伝わってくるものがあったり、白紙のページが続くと、この間に何があったんだろうと想像力をかき立てられたりして」
何十年分の日記を長時間読んでいると、書き手になりきったような気持ちになり、自分のことを忘れてしまいそうになる、とナオエダさんは笑います。
共感できること、できないことの両面がある
「手帳類には、人には見せない欲望とか、ドロドロした本音が吐き出されていることもある。読んでいると、こんなことを考えているのは私だけじゃないんだ、と共感します」
とはいえ、手帳類の中には、ギャンブル依存症の10年間の日記や、引きこもりの日記、看護学生の奔放な恋愛事情をつづった日記などもあります。読みながら「なんでこんなことをするんだろう」とまったく共感できないこともあるそう。
「『多様性』と言うのは簡単だけど、こんなに考え方の違う人がいるんだと、実感を伴って理解できます。手帳類を読むようになって、想像力が広がっている感じがします」

手帳類を通じて多様性に触れる
手帳類を読む人が増えたら、世界は平和になるんじゃないか――そう呟くと、ナオエダさんも「本当にそうなんです」と力強く頷きます。
「他人のことに興味を持って、理解する手がかりを持てば、みんなわかり合えるのかな、喧嘩にならないんじゃないかな、と思います。『あ、こういう人がいるんだな』と受け止めて、もし合わないなら離れてもいい」
「生身の人間と『わからなさ』に向き合って、一気に深い話をするのはすごく難しいですよね。日記なら、一方的にその人の考えを知ることができる。世の中にはこんな人がいるんだ、と知るための手立てとして、手帳類っていいツールだと思います」
筆者も、手帳類を読んだ後「まったく違う考え方を持つ他人が集まって、社会ができているんだ」ということを実感しました。人それぞれ、その人だけの喜びややりがい、悩みや悲しみがある。そんなかけがえのなさを感じて、世界を見る目が少し変わったような気がします。
手帳類を読む文化を広げたい
ナオエダさんは、2026年2月15日(日)に大さん橋ホールで開催されるZINEフェス横浜に出店し、湘南台分室をオープンするまでの日々をつづった「手帳類図書室 湘南台分室 開業日記」や、手帳類の目録を一冊にした「手帳類図書室 湘南台分室 目録」などを販売予定です。
手帳類の面白さと魅力をより多くの人に届けられるように、ナオエダさんの活動も日々、広がっています。
手帳類図書室・湘南台分室
住所/〒252-0813 神奈川県藤沢市亀井野477-6 1階
利用料金/1人あたり1,100円(税込)〜
利用時間/木・金曜日は1枠90分、土曜日は1枠60分 ※空きがあれば延長可能
営業日/木・金・土曜日 ※最新のスケジュールは公式Instagramより確認可能
営業時間/午後1時~5時
公式サイト/https://techorui.jp/
公式Instagram/https://www.instagram.com/techorui_bunshitsu/




