Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

フード  |    2024.05.18

「おいしい備え」を埼玉から全国に!人気クッキー専門店の試行錯誤で生まれた3年保存「おともクッキー」

埼玉県北本市の「クッキークル」は、行列の絶えない人気店。その店主・尾上由子さんが2年半を費やし作り上げたのが、3年保存可能な「おともクッキー」です。

 そこに込められた、尾上さんの熱く優しい思いをお届けします。

お菓子は「贅沢」ではない。「日常」だから。

お菓子作りを独学した尾上さんは、2010年に工房を、さらに2015年には現店舗をオープン。

以来、クルは様々なメディアで取り上げられ、2018年には尾上さんによるレシピ集も出版されました。

表向きは順風満帆。ところが、尾上さんはある想いを抱えていたといいます。

 「工房オープンの直後に発生したのが、東日本大震災。クルのクッキーで現地の方の心をほどくお手伝いができれば、と思いつつも、そこにクッキーを届ける術がない。とてももどかしく思いました」

さらに震災支援を通じて知り合った現地の方から、こんな言葉も届きました。

「食べ慣れない菓子パンばかりの毎日は、心が辛くなってくる。そんなとき欲しくなるのは、誰かとつまめるような、おいしいお菓子なのよ」

非常時にお菓子だなんて贅沢だ!と思われがち。ところが現場では、平常心でいるためのエネルギー源であり日常である――そんな生の声が、尾上さんの心を揺さぶります。

「クルのクッキーは、仕事・子育て・介護など、それぞれの暮らしに寄り添う存在でありたい。キッチンに立ちながら、家族を送迎する車の中で、パクッとつまんでほしいんです。災害の状況下でも日常は営まれる。だからこそ、お店に並ぶのと同じ味で、いつでも手に取れる長期保存クッキーを作りたいという思いを抱いていました」

無添加で、口の中でほどける食感に。クルらしさを貫き辿り着いた「3年保存」

いよいよ開発へと動き出したのは、2021年4月。ところが、製造先探しで難航します。

 「試作まで進んでいた企業が、撤退してしまいました。店と同じく、保存料や酸化防止剤は使わない方向性でしたから、難易度が高かったのでしょう。けれど、当時はクラウドファンディングが始まる直前。もう真っ青です(笑)。思わず弱音を吐いたときに手を挙げてくれたのが、前田食品さんでした」

前田食品は、クルの工房立ち上げ当初から、その在り方に共感してくれていたのだそう。そんなパートナーが、今回も応援の気持ちを寄せてくれたというわけです。

 「開発では、通常販売するクッキーそのままのレシピを起点に試作を進めました。クルらしさの一つが、ほろほろ食感。そのためにバターを多めに使うのですが、時間が経てば油分が酸化し、味が落ちます。当初目指していた5年保存では味が維持できないのでは、と、別素材でも試作を重ねました」

レシピが迷走する裏側で、 クラウドファンディングが始まり、ふるさと納税の返礼品としての準備も着々と進む。「なんとしても形にしなくては」と長期保存の呪縛に囚われる尾上さんの心をほぐしてくれたのは、前田食品からの一言でした。

口にすると思わず笑顔がこぼれるクルのクッキー(現在は喫茶スペースはCLOSE中)

「保存期間を優先して素材を変えた試作品に『これはクルの味じゃないよね。だったら、理想の素材で加速試験(=温度・湿度等を上昇させた環境で保管し、短期間で賞味期限を推測する)にかけて、どこまで保存できるか結果を見ようよ』と提案してくれたんです。“とにかく長持ちするクッキー”を目指しかけていた私を、“クルらしい味わいでいつでも寄り添えるクッキー”という出発点に引き戻してくれました」

結果的に、無添加素材でクルらしい味わいと食感が3年間楽しめる「おともクッキー」が誕生。「妥協した5年保存よりも、クルらしい3年保存を実現できたことが何よりうれしかった」と尾上さんは振り返ります。2023年10月のことでした。

ワクワクできる備えを、一人でも多くの人に

1缶に入っているのはおよそ20枚のクッキー

 実は筆者もクラウドファンディングの支援者の一人。取材直前、リターンとして受け取り保管していた「おともクッキー」を開封して試食してみました。すると……保存食の常識を覆すほろほろ食感!甘いものに興味がない夫も「これはおいしい。パサパサ感がなくて水がなくても食べられる」と言います。次女には何度もおかわりをせがまれました。

イベントでは試食も。おいしさに納得して購入する人が多いのだそう

それを尾上さんに伝えると、「わ~うれしい!まさに、そういう声が多いんです。防災食って、義務感に駆られて準備しがちですが、このクッキーは『防災用に購入したのに、思わず開けて食べきっちゃいました!』とまた買いにくるお客さまもいるんです。ワクワクしながら買える防災食って、なかなかありませんよね」と笑います。

2種類の味を詰め合わせたギフトセット 2,470円(税込2,666円)

 そして尾上さんは、日々旅立つおともクッキーに思いを馳せながら、こう語ってくれました。

「備えとしてはもちろん、毎日頑張っている大切な誰かへワクワクをお裾分けする感覚で、気軽なギフトの選択肢の一つに加えてもらえたら。キッチンにちょこんと置かれたおともクッキーが、全国のあちこちで安心と楽しみを生み出せる存在になれたら、とてもうれしいです」

・写真提供(1,2,4,8~10枚目)/クッキークル

おともクッキー 

・「しお」「チョコ」(各100g・約20枚入り)
・1缶1,210円(税込1,306円)
・賞味期限:製造日より3年

▼購入はこちらから
クッキークル オンラインショップ
ふるさとチョイス

▼尾上さんが綴る「おともクッキー」の開発秘話
note「街のクッキー屋が作る3年保存可能「おともクッキー」

クッキークル

Instagram
埼玉県北本市中央3-84
11:00~17:00/日曜・月曜定休

記事をシェアする

この記事を書いた人

矢島 美穂

埼玉県さいたま市在住、実家は県内のイチゴ農家|2人の姉妹を育てる、40代のフリーランスライター|日常に横たわるストーリーを発掘し手渡すことで、読者の目に映る世界がちょっと変わるのが喜び。Mediallでは、情報だけではなく、この土地に生きる人々のストーリーもお伝えしたいと思います|チョコレート・コーヒー・カフェ・読書・手帳・紙モノが大好き

関連記事