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もの・こと  |    2025.11.09

“石磨き”が世界をつなぐ。万博で話題のアートを支えた石材店|大阪府東大阪市

大阪石材工業ーLove Stone Project EXPO 2025:石を磨く参加者たち

大阪府東大阪市に本社を構える大阪石材工業株式会社は、「世界一おもろい石材店」を掲げる石のプロフェッショナル企業です。そんな石材店が、万博で注目を集めたアートプログラム「Love Stone Project EXPO 2025」に深く関わっていることをご存じでしょうか。

今回は大阪石材工業の営業担当・安達裕樹さんに、Love Stone Projectとの出会いや万博での取り組みについて伺いました。

石材店とアートの出会い

大阪石材工業ーLove Stone Project in EDOBORI

「Love Stone Project」とは、彫刻家・冨長敦也さんが手がける体験型アートプロジェクトです。ハート形に彫刻された石を、参加者が一緒に磨き上げて完成させるというもので、2011年以降、日本国内だけでなく世界各国でも実施されています。

SNS検索から始まった、思いがけないご縁

「4年前、Facebookで『石 イベント』と検索したときに、『Love Stone Project』が大阪で開催されることを知りました」と安達さんは振り返ります。

大阪石材工業ーLove Stone Project in EDOBORI:ギャラリーに設置された石たち

2021年4月、大阪・西区のギャラリー佑英で行われたサテライト展示では、世界各地の石から1つを選び、冨長さんがハート型に彫刻して後日自宅に郵送。同封された紙やすりで各自が磨き上げるという形式でした。

「衝撃的でしたね。とんでもなく石を愛している方に出会えたと感動しました」

石を“商品”として扱ってきた安達さんにとって、商業を離れた純粋な“アートとしての石”との出会いは新鮮な体験でした。この出来事をきっかけに、冨長さんとの交流が始まります。

Love Stone Project in tondabayashi

大阪石材工業ーLove Stone Project in Tondabayashi:子どもたちが石を磨く様子

2023年、岡山県の採石場でハート型の万城石を見つけた安達さんは、Love Stone Projectの開催を冨長さんに打診。快諾を得て、大阪石材工業 南大阪店(大阪府富田林市)で石磨きプロジェクトがスタートしました。7段階の研磨シートを使い、足かけ7年で石を磨いていく計画です。

その活動は南大阪店にとどまらず、「LOVEとんだばやし」や「HANAZONO EXPO」などの地域イベントにも広がりました。多くの参加者が訪れ、特に子どもたちは石磨きに夢中になったといいます。

何かと効率を求める時代に、時間をかけて1つのことに没頭する体験って魅力的だなぁと思いました。お子さんたちは楽しそうに長時間でもずっと磨いてくれます」

万博で実現した“最もアナログなアート体験”

こうした取り組みを経て、安達さんと冨長さんの思いは大阪・関西万博の舞台へとつながりました。

愛と平和を表現した石のアート

大阪石材工業ーLove Stone Project EXPO 2025:石を磨く安達さんと冨長さん
日本産・能勢黒石を磨く安達さん(写真左)と冨長さん(写真右)

石磨きには水を使うため、室内パビリオンでの実施は難しいという理由で、当初はなかなか実現に至らなかったそうです。そんな中、風アートプランニングの泉井さんから声がかかり、「Study:大阪関西国際芸術祭2025」のパブリックアート部門での参加が決定しました。

万博では、五大陸(アメリカ・ヨーロッパ・アフリカ・アジア・オセアニア)から採取された5つの石を冨長さんがハート型に彫刻。世界中の来場者が磨くことで、国や文化を超えた「愛と平和」を表現する壮大なアートです。石の調達・搬入・設置、さらには現地でのワークショップ運営サポートまでを担ったのが大阪石材工業でした。

「最先端」が集まる万博で、ただ石を磨くだけ

大阪石材工業ーLove Stone Project EXPO 2025:五大陸の石の配置

「大阪・関西万博で一番アナログなコンテンツ」として注目された、Love Stone Projectの石磨き。行列に並ばず参加できる気軽さもあって評判を呼びました。好評のため、予定されていた全14回に加え、2回の追加開催も実施。「見知らぬ人と自然に会話が弾んだ」「時間を忘れて夢中になった」などの感想も多かったのだそう。

「お子さんが石磨きにハマってしまって、朝磨いた後、午後にもまた磨きに来てくれたことがありましたね」

大阪石材工業ーLove Stone Project EXPO 2025会場全体の様子

石磨き最終日だけで947名、会期中のべ7462名、24の国と地域の方が参加。安達さんは、「磨いた“結果”ではなく、たくさんの方が語り合いながら想いを込めて磨く“時間”こそが、Love Stone Projectの醍醐味だと思います」と語ってくださいました。

五大陸の石は、大阪市内へ寄贈

大阪石材工業ーLove Stone Project EXPO 2025の立て看板

万博での全日程を終えた五大陸のハート型の石は、今後、大阪市内の施設に設置される予定です。「子どもたちが頑張って磨いた石を、万博後も見られるのは嬉しい」という声も上がっていました。

その前に一旦、大阪石材工業本社へ戻され、11月に開催されるオープンファクトリーイベント「こーばへ行こう!」で一般公開されます。当日は、五大陸の石磨きワークショップが再登場。「万博で体験できなかった方や、初期に磨いた石の仕上がりを見たい方にもぜひ来てほしい」と安達さんは話します。

石を磨くというシンプルな行為が、人と人、地域と世界をつなぐ。
大阪石材工業が支えるLove Stone Projectの魅力は、これからも静かに、けれど確実にその輪を広げていきそうです。

写真提供:大阪石材工業株式会社

 

こーばへ行こう!2025

2018年、住工共生のまちづくりの一環として始まったオープンファクトリーイベント。
モノづくりのまち東大阪を内外にアピールするため、各工場が見学ガイドツアーやワークショップを開催。2025年度は47社の企業が参加する。

【開催日時】
西エリア 2025年11月7日(金)~8日(土)
東エリア 2025年11月14日(金)~15日(土)
各日10:00~16:00

公式サイト:https://ko-ba.jp/
 

大阪石材の「こーばへ行こう!」概要

参加日:東エリア 2025年11月14日(金)~15日(土)
“お墓の工場”見学ガイドツアー、石の彫刻体験、石ころアートのワークショップ、お墓パンの販売など。
大阪・関西万博「Love Stone Project EXPO 2025」の五大陸の石磨きも実施する。

 

大阪石材工業株式会社 大阪本社

住所: 〒578-0921 大阪府東大阪市水走3-8-43
TEL:  0120-1114-90(フリーダイヤル)
営業時間: 9:00~17:45(年末年始は休業)

HP: https://www.osaka-sekizai.jp/

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この記事を書いた人

九重 十彩

生まれも育ちも東大阪市。カフェ巡りから一人飲みまで、美味しいものと共に在りたいWebライター。 実は調理師免許を持ってるけど、ほぼほぼ持ってるだけ。 大阪の中核市としての一面と、生駒山系の自然、振り幅の広~い「モノづくりのまち東大阪」の魅力を発信していきます。

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