
大阪府の北部に位置する千里ニュータウン、吹田市、豊中市、箕面市エリアでは、11月1日から30日までの1カ月間、まちおこしイベント「千里祭り2025」が開催されています。
2日・3日には、千里中央駅近くの会場でオープニングイベントが行われました。プログラミングやクッキングなど様々なワークショップが開かれる中に、「超はじめてのおつかい」という面白そうなタイトルを発見!実はこちら、地域のママたちの力で実現した初めての取り組みだったのです。
実施までの苦労話やこの企画に込められた思いなど、その裏側を取材してきました。
住んでいる“まち”がまるごとテーマパークに!?
「千里祭り」は「このまちと、学ぼう!遊ぼう!」をコンセプトに、地元企業や地域の大学、市民団体、個人などが、そこに住む人たちとのつながりを育むイベントです。千里ニュータウンがまちびらき60年を迎えた2022年から開催され、今回で4年目を迎えます。
千里地域が学びと遊びのテーマパークになることを目指し、薬局やラジオ放送局でお仕事体験ができたり、文化教室でワークショップに参加できたりと、子どもから大人まで楽しめるイベントが各地で開催。
千里中央駅周辺では2日間にわたってオープニングイベントが行われ、多くの人でにぎわいを見せました。

現役ママたちが企画・運営した「超はじめてのおつかい」
オープニングイベントで体験型ワークショップの一つとして行われた「超はじめてのおつかい」。某テレビ局の人気番組を連想される方も多いかもしれませんが、内容はちょっと違います。
2~6歳(未就学児)の子どもを対象に、パパやママへの贈り物を買いに行くという想定ですが、一人ぼっちではありません。子ども一人につき一人のスタッフが道中やお買い物をサポート。お店までのルート上には目印が付けられ、途中歩けなくなった場合はスタッフが手をつないだり、抱っこしたりして、イベント会場内にあるお店まで連れて行きます。
お店では6種類の商品の中から買いたいものをセレクト。何を選んでもOKです。お金は主催者が手作りしたオリジナル紙幣を使います。
なぜこんなにも簡単なルールになっているのでしょうか。それは、子どもの小さな“できた!”を積み重ねていくことに重きを置いていたからです。

ママたちの熱意の連鎖で始まったプロジェクト
このワークショップを考えたのは、子育て真っ最中のママたち。ALLDE(おるで)のユニット名で子育てひろばを企画・運営する元保育士の飯隈さん(くまちゃん)と、親子英語講師としても活躍中の松尾さん(ゆかちゃん)です。
「以前から、保育士として、また幼い子を育てるママの視点からも、子どもが泣かずに楽しく行って帰ってこられるようなおつかいイベントができないかなと考えていました」と飯隈さん。
どこかでできたらいいなと思っていた矢先、松尾さんと参加した地域の交流会で「千里祭り」が行われることを聞いたそうです。「イベント会場内なら車も通らず安全で、マルシェがあるなら食べ物も扱える。ここなら実現できるかもしれないと思い、実はこんなんしてみたいねんって、ゆかちゃんにぽろっと言ったんです」。
その話を聞いた松尾さんは大賛成。「子どもの成長と、その子のママの子育ての頑張り、両方を感じてもらえるいい企画だなと思いました。私自身、自分の子育てに自信が持てない時があって。周りの人が我が子の成長を見つけてくれて、自分の子育ては間違っていないのかもしれないと感じた経験があったんです。子どもはもちろん、日々子育てに奮闘するママにとっても自信につながるいい機会になる。だから絶対、やってみたいって言った方がいいよって」。
飯隈さんはその言葉を聞いた30分後には「千里祭り」全体の運営に携わる堀内さん(あやちゃん)に電話して、企画内容を伝えたそう。「こんな面白い企画、やるしかないでしょ!」。
堀内さんの賛同も得て、「超はじめてのおつかい」プロジェクトがスタートしました。

告知、人集め、予約受付…すべてが手探りだった
準備段階を振り返ってみて、「超はじめてのおつかい」のルール説明が一番難しかったと3人は話します。
「私たちがやろうとしているオリジナルのルールや意図を、『千里祭り』の主催者をはじめ、協力いただくボランティアスタッフさん、子どもたちが買う商品を用意してくださる事業者さん、そして参加対象の親御さんに伝えることに苦戦しました。某人気番組のインパクトが強すぎて、どうしてもそのイメージを持たれてしまうんです」と飯隈さん。
ルールの説明は、飯隈さんの頭の中にある細かなニュアンスも含めて松尾さんが文章化。堀内さんが何度も添削して推敲を重ねたうえで、インスタグラムなどで告知したそうです。ALLDEの公式インスタグラムを見てみると、Q&Aや動画でも説明するなど試行錯誤された様子がうかがえました。
また、運営に協力してくれるボランティアスタッフを集めるのにも苦労したそう。
「ママやパパから初めて離れて挑戦する子もいる中で、子どもたちを安心させる声掛けができ、頑張っているねって褒めてあげられるのは、誰もができることではありません。私たちと同じ思いで子どもたちをサポートしてくれる人を見つけるのも大変でした」と松尾さんは振り返ります。
「今回参加してくれた人は皆、この企画の細かいルールなどではなく、子どもが初めておつかいに行くっていうこと自体に魅力を感じて手伝いたいって言ってくれた人ばかり。皆さん活動内容は違うけれど、根本に持っている地域の子どもやママを思う気持ちは同じでした」と堀内さんも加えます。
入念な準備と告知をして臨んだ予約開始日。予約枠はなんと開始3時間で埋まったそうです。
小さな“できた!”が積み重なった笑顔あふれる一日
イベント当日は子どもたち39人が「超はじめてのおつかい」に挑戦。
ママから離れるのが不安で、行き始めても「ママーっ」と帰ってくる子。ゆっくり慎重に目印をたどってお店まで行く子。目をキラキラさせながら一目散にお店を目指す子。参加したご家族それぞれに、様々なドラマがありました。
「最初は不安そうだった子も、帰ってくる時はみんな笑顔。買い物をするお店が見えるちょっと手前から、子どもたちの足取りがどんどん軽くなっているのを感じました。それは子どもたちが“できるかも”って感じたからなのかなって思います」と松尾さん。
「ママやパパのところに戻ってきて、『ママにはこれ、パパにはこれ買ったよ』と得意そうに見せている姿がすごくかわいかったし、親御さんもすごくうれしそうにされているのが印象的でした。自宅保育で毎日一緒にいると、ぐんと成長を感じることは少ないですが、こういう機会を通じてママやパパに褒めてもらったり、家族以外の人から頑張ったねって言ってもらえたりすると、その子の自信につながると思うんです。私たちが目指している“子どもの『できた!』を育てたい”、それが形になったワークショップだったと思います」と飯隈さんも続けます。


このワークショップの運営には、千里中央周辺で活動する保育士、リトミック講師、カメラマン、デザイナー、カフェオーナーなど20人ものボランティアスタッフが携わりました。
「スタッフさんが側でうまく声掛けをしてくれたおかげでスタートできた子もたくさんいました」と堀内さん。「朝から結構長時間だったので疲れもあったと思いますが、スタッフの皆さんが最後まで笑顔で運営を支えてくださって。感謝の気持ちでいっぱいです」。飯隈さんの言葉に松尾さんもうなずきます。



子どものワークショップは地域の新しい共創の場へ
今後もこの取り組みを続けたいというALLDEのお二人。
「『超はじめてのおつかい』を通じて、地域のコミュニティの輪がどんどん広がったらいいなと思っています。私は田舎出身で、帰省したら近所の人も“ゆかちゃん、おかえり”って言ってくれる、故郷(ふるさと)と言える場所があるんですが、私の子どもにはありません。隣りに誰が住んでいるかもわからない土地で子育てを始めたからです。じゃあ作ったらいいやんと思って、地域の子育てひろばの活動を始めたんですね。お陰様でくまちゃんやあやちゃんのように我が子を知ってくれている人も増えて、ここが自分の子どもの故郷だと言えるようになりました。『超はじめてのおつかい』も地域のつながりを大切にしたくて、子どもたちが買う商品は地域で独立して展開されているお店さんから購入しました。おつかいを通じて、自分たちが住むまちにあるお店の魅力も知ってもらいたいです」と松尾さんは語ります。

「協力してくださる方々もwin-winになるような活動ができたらいいなと思います。もちろん根本には“子どもの「できた!」を育てたい”という気持ちがあるので、ゆくゆくは大きな場所で開催して、ハイハイレースの次は『超はじめてのおつかい』に挑戦、みたいな形で定着させていきたいですね」と飯隈さんはにっこり。
「超はじめてのおつかい」が地域の新しい共創の場になる日もそう遠くはないのかもしれません。
ALLDE(おるで)
親子英語講師のゆかちゃんと、元保育士のくまちゃんによるユニット。
未就学児を育てるママでもある2人が2025年9月から活動をスタート。
大阪北摂地域で子育てひろば(親子の居場所)を企画・運営している。
活動の最新情報は公式Instagramへ




