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もの・こと  |    2026.01.25

都市の隙間に「いのちの道」を。NPO法人グリーンフィールドが描く、100年先の生態系

「都市の中に生物多様性の拠点を再生する」を目指して、都内で活動するNPO法人グリーンフィールドの代表を務めるコスギ淳子さん。

学校や教育現場、地域と連携して、緑化や生きものの大切さを伝えています。

NPOを立ち上げたきっかけや、なぜ緑化が大切なのかをお伺いしました。

グリーンフィールドを立ち上げた理由は「街の中の自然再生」

コスギ淳子さんは話します。

NPO法人を設立した大きなきっかけは、前身である「グリーンネットスクール」(植物に関する知識や技術を持つ人材を育成するスクール)の運営を通じて、都市緑化の限界を痛感したことにあります。

都会で行われる緑化の多くは営利目的や景観維持に偏っており、本来あるべき自然環境の保全とは程遠いものでした。

昔は田んぼにいたゲンゴロウなどが、都内23区では絶滅したと言われています。

自然や生物は一度なくなってしまうと、もう元には戻らない。だからこそ、まだ生物資源がわずかに残っている「今」のうちに動かなければならないという強い想いを持っています。

私は「主体的市民の実践」をテーマに、このNPOを立ち上げました。

単なる緑化ではない「自然再生」を推進するためには、一人ひとりが当事者として関わり、できる範囲から行動を重ねていく。活動を地域に根付かせて、持続可能な取り組みを続けていきたいと考えています。

グリーンフィールドの活動内容とは

私たちの活動の核は「都市の中に生物多様性の拠点を再生すること」と「子どもたちへの教育」です。

生物多様性型の緑地創りは、一坪の小さなスペースからでも、適切な手法のメンテナンスと生きものサポートをすることで、自然を再生して環境を豊かにする取り組みです。

従来のような「人工的に整えられた庭」を作る管理ではなく、生きものが共生できる環境をどう守るかという視点で取り組みます。

 

グリーンフィールドが作る生物多様性緑地は、駅前などで見かける整然とした左右対称の花壇とは異なります。あえて非対称に植物を植えて、それぞれの生態に合う配置にすることで、植物本来の生命力を引き出しているのです。

メンテナンスの際も、それぞれの植物が「生きたい方向」へ伸びるように手入れを行っているため、力強い生命力を感じます。

緑化の活動だけでなく、子どもたちへの教育にも力を入れています。


子どもたちへのレッスンを行う理由は、幼少期に生きものに触れる体験がないと、大人になってから自然の生命に理解や関心を持つことが難しいという問題意識があるからです。

子どもたちは本能的に生きものが大好きで、自然の中に放たれると、目をキラキラさせて夢中になります。

自然の中で体験するリアルな感覚が「感受性」や「想像力」を育て、「非認知能力」の核になります。そしてさらに大きく深い自然と対峙する機会があれば、人間の力の小ささを実感できます。

自然の中で行動するとき、他者や環境との共生が不可欠なため「協調性」や「解決力」が養われます。

街の自然体験はその導入です。そうした人間力の基礎が無いまま大人になって自然と接しても、どうしたらよいのかチンプンカンプン。川の中州で無防備にキャンプしたり、2025年のクマ騒動はそうした事例のように感じています。

「生きものレッスン」は、単に知識を教えるだけでなく、生きものが今の姿になるには何万年何億年もの長い年月がかかっていると、生命の大切さを伝えています。

「感覚統合遊び」は、子どもたちが本来持っている「肉体」としての脳や身体能力を健やかに伸ばすための取り組みです。芝生で寝転んだり、落ち葉に触れたりする五感を通じて、背骨、腕、脚など全身のボディイメージや、バランス感覚の発達を促します。

通常の実施は屋外。雨天のため武道場の畳で開催。

人工的な遊具や室内遊びでは得られない、生きるための力を、自然を通じて伝えていけたらと思います。

大人から自然に対する意識を変えて欲しい

私たちは、大人向けに「街の中の自然探索」として環境啓発レクチャーを行っています。理由は、子どもだけでなく、大人も自然に対する意識を変えて欲しいからです。

子どもが自然に興味を持ったとしても、身近にいる親が「虫は汚い、嫌い」と拒絶すると、子どもの好奇心の芽は摘まれてしまいます。

まずは大人が自然の価値を再認識し、子どもたちが自然と触れ合える環境を認めて欲しいです。大人が自然に対して敬意を払うようになれば、社会全体の自然に対する時間や資金の投資の意識も変わっていきます。

次世代に豊かな自然を繋ぐための最短ルートは、大人が自然に関して興味を持つことです。

「街に『チョウの道』(の駅)をつくろう!」プロジェクトとは?

チョウの「キアゲハ」は、品川区の内陸部では2000年頃を最後に姿が見られなくなりました。理由は、街に幼虫の食べもの(食草)が無いからです。

品川区に昆虫再生のシンボル「キアゲハ」を再び生息させたいと願い、今から8年前、都心で成虫がかろうじて残る植物園に隣接する公園に生物多様性タイプの花壇を作りました。その「バタフライガーデン」には、キアゲハの食草であるアシタバと蜜が多い花を、冬にも絶えないよう植えています。

現在は、生物資源の残る植物園から「キアゲハ」が産卵をしに来るようになり、一定の成果は出ていると感じています。しかし、この1か所だけでは「キアゲハ」の再生存続は難しいのが現状です。500m間隔で、食草を含む生物多様性型緑地『チョウの道』(の駅)をつながなくてはなりません。

公園などの既存の緑地に残っている生きものたちが、移動の途中で立ち寄り、産卵できる「拠点(駅)」を作ることで、都市の中に「チョウの道」を復活させることを目指しています。

既存のバタフライガーデンを「点」から「面」へと広げるために、企業や自治体へのコンサルティング営業にも積極的に取り組みたいです。

ビルの屋上や小さな空き地を、単なる「緑の飾り」ではなく、本物の生態系が息づく「生物多様性の拠点」へと変えていくプロジェクトにしたいと思っています。

街全体を「道」にすることで、生き物たちが移動し、命を繋いでいける未来を作っていきたいです。

都市部で生物多様性緑地を広める難しさ

自然は手をかけず何もせずとも保てる、自然は「タダ」という誤った認識や、街中では自然保全の大切さをイメージしづらいことが、都市の生態系再生を阻む大きな壁となっています。

多くの人が「自然は大切だ」「緑があるのは良いことだ」と口では言いますが、いざ自分が管理を担ったり、その維持のために資金を投じたりすることには非常に消極的です。

夏場の「水やり」は植物が生きるために欠かせない作業ですが、地味で大変です。しかし、多くの現場ではこれが「誰でもできる雑用」として軽視され、せっかく苗を植えて育てた植物が酷暑で全部枯れてしまう惨劇は「あるある」な課題です。

都内の小学校の園庭をリメイクし「バタフライガーデン」を作り、生きものが好む環境を育み保ち続けた結果、3年目にトカゲやメジロ、そして多様な昆虫が飛来するようになりました。最初は荒れ果てていた場所で、生態系を復活させていく様子を子どもたちに見せられたことは大きな成果です。

しかし、区立の小学校なので、セキュリティや管理上の理由から外部へオープンに出来ないのが現状です。そのため気軽に地域住民が関われる機会がつくれず、活動が地域へ広がりません。活動が点で留まってしまうことに強いもどかしさを感じています。

生物多様性の保全には地域全体のネットワークが必要不可欠です。

近隣の公園や企業のビルなど、地域全体を巻き込んだ連携を模索しています。学校で興味を持った子どもが、帰り道の公園や自宅のベランダでも自然に触れられるような「地域ぐるみの都市緑地」を作ることが理想です。地域のサポーターが実動で支えることで、共に豊かな環境を育むシステムを構築していきたいと考えています。

グリーンフィールドの目指す未来とは

私たちが描く究極のビジョンは、都市の中に植物と生きもののネットワークが完成し、街の生態系の頂点である猛禽類(タカなど)が営巣できるような環境を取り戻すことです。

タカが住めるということは、その下に豊かな鳥類、爬虫類、昆虫、そして植物、微生物の生態層が厚く存在している証です。都市が単なるコンクリートの塊ではなく、多様な生命が循環する豊かな場所になることを目指しています。

自然は一度完全に失われてしまったら、人間の力だけで再生することは不可能です。50年後、100年後の子どもたちが、当たり前のように虫の音を聞き、草花の香りに触れ、命の尊さを肌で感じながら育っていける社会を残したい。

C.W.ニコル氏が荒れ果てた土地を買い取り「アファンの森」を再生させたように、私たちも都市の隙間に「小さな森」を増やしていきます。

地域の人々が自発的に緑地を守り、育て続ける仕組みが根付いている未来。

それこそが、グリーンフィールドが到達したいゴールです。

※画像の一部はNPO法人グリーンフィールドさまよりご提供いただきました

 

 

■NPO法人グリーンフィールド

グリーンフィールドでは、メンバーを募集しております。

「自然のために何かしたいけれど、何をすればいいか分からない」という方は、ぜひ一度私たちのバタフライガーデンを覗きに来てください。あなたの参加が、100年後の生態系を救う一歩になります。共に未来を育てていきましょう!

問合せ:https://www.npo-greenfield.jp/contact

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この記事を書いた人

とき

神奈川県横浜市都筑区在住 | 子ども3人 | よく行くお店はサイゼリア🍝と回転寿司🍣 | 海が好き | 将来の夢は子どもとシュノーケル&ダイビングすること

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