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もの・こと  |    2026.03.14

「木のため、世のため、人のため」木の声を届ける、台東区・佐久間木材【後編】

前編では、佐久間木材の120年にわたる歩みと、抜型用合板やネット通販を軸とした事業展開について紹介しました。
後編では、国産材の活用、環境配慮への考え方、木育活動、そして地域文化や未来への思いに焦点を当てます。

前編はこちら

「木のため、世のため、人のため」木の声を届ける、台東区・佐久間木材【前編】

国産材を使うことが、山を生かすことにつながる

佐久間賢之さんが社長に就任したのは2000年頃。当時、日本の木材自給率は20%を下回っていました。

「これは正直、かなり厳しい数字だと思いました」

国産材が使われなければ、山は手入れされず、林業も衰退してしまいます。佐久間木材では、国産材、特に間伐材を積極的に使うことを通じて、日本の森林資源を支える取り組みを続けてきました。

25年が経った現在、木材自給率は42.5%まで回復しています。
佐久間さんは「自分の力は微々たるもの」と謙遜しますが、国産材の価値を伝え続けてきた地道な努力が、確実に時代の流れを後押ししてきたことは間違いありません。

戦後、燃料や復興資材として伐採され裸同然になった日本の山には、その後、成長の早い杉や桧が多く植えられました。80年が経ち、今まさに使える木へと育っています。一方で、樹種が偏っていることや、花粉問題など新たな課題も見えてきました。

「急いで成長させることが、必ずしも良い結果を生むわけではありません」

端材を無駄にしない木質材料という選択

佐久間木材が扱うMDFやOSBといった木質材料は、環境配慮の面でも重要な役割を担っています。

丸太は円柱のため、製材するとどうしても端材が出ます。
MDFは木材を繊維状に細かくし圧着、OSBは木片を圧着して作るため、歩留まり1が非常に高く木を無駄なく使うことができます。

「昔は端材を割り箸に使っていましたが、環境破壊だという誤った認識で割り箸産業が衰退しました。その結果、中国産が主流になったのです」

佐久間さんは、環境配慮やSDGsの名のもとで進められる認証制度についても、冷静な視点を持っています。
認証を取得するためのコストや事務負担が重く、小規模事業者ほど厳しい状況に置かれる現実があるからです。

「認証を取っていなくても、真面目にきちんとやっている事業者はたくさんあります。認証だけが正義だとは思っていません」

  1. ※木材の歩留まり(ぶどまり)とは、1本の丸太や板材などの原材料から、製品として使える部分がどれだけの割合で取れるかを示す比率のことです。 ↩︎

木育インストラクターとして見た現実

佐久間さんは、木育インストラクターの資格を持ち、かつて上野の国立科学博物館で子ども向けの授業を行っていました。
木材の種類を見せ、水に浮く木、沈む木を実験し、香りを確かめてもらう。45分間の体験型授業です。

その中で、忘れられない出来事があったといいます。

「桧の匂いを嗅いで、『臭い』と言う子がいたんです」

木に触れたことも、香りを嗅いだこともない。
その現実に衝撃を受け、木を身近に感じてもらうために立ち上げたのが、木雑貨の通販サイトでした。

現在は在庫分のみの小規模な運営ですが、「木のそばで暮らす感覚」を取り戻すことの大切さを伝えたいという想いは今も変わっていません。

神輿を支える木と、地域文化とのつながり

佐久間木材の地域とのつながりの中で、最も象徴的なのが神輿の「担ぎ棒」です。
鳥越神社の千貫神輿との縁は深く、担ぎ棒は1928年と1982年に、佐久間さんの祖父によって寄贈されました。その切れ端が、倉庫に残されていました。

「この千貫神輿の担ぎ棒は、18cm×18cm×長さが6.5mの立派な木曽ヒノキの角材です。次に取り換える時期は2039年頃なのですが、 その時、これだけの木材が確保できるかどうか…」

その不安は、林業や森林の未来を考えることそのものであるとも語ります。

「木を守るというより、木を育てる。その視点が大事だと思っています」

ゆっくり育つことを許容する社会へ

関東大震災での全焼、東京大空襲での全焼、バブルやコロナショックなどの経済の波。

佐久間木材の歴史は、決して順風満帆ではありませんでした。

それでも続いてきた理由を、佐久間さんはこう語ります。

「木は年輪を刻みながら、ゆっくり育った方が強くなります。人も会社も、同じではないでしょうか」

成長を急がず、無理をせず、持続することを大切にする。
その姿勢は、SDGsや地方創生といった言葉が広まる以前から、佐久間木材が実践してきた価値観です。

木のため、世のため、人のため。
この言葉の順番が変わらない限り、佐久間木材はこれからも、森と街、人と自然をつなぎ続けていくことでしょう。

お店の情報

佐久間木材株式会社

住所 〒111‐0041 東京都台東区元浅草3‐12‐10 

電話 03‐3843‐5221

メール info@ecomoku.jp

公式ホームページ https://sakumamokuzai.jp/ 

エコモク(木質材料の専門店) https://ecomoku.jp/

comoku(木の雑貨専門店)https://www.kinozakka.com/

@合板(いろんな合板店)https://gouhan.net/

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この記事を書いた人

takahashi-tomiyo

静岡県出身、台東区在住のwebライターです。台東区の魅力や、ふるさとの静岡県、気になる街の情報を発信してまいります。

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