
東京・台東区元浅草。
観光地・浅草のにぎわいから少し離れた場所に、120年にわたり木材と向き合い続けてきた老舗材木商、佐久間木材株式会社があります。
建材用木材の卸売にとどまらず、全国シェアを持つ抜型用合板の供給、ネット通販による全国展開など、時代の変化に応じて事業を進化させてきました。
同社が掲げる言葉は、「木のため、世のため、人のため」。
一般的に聞かれる順序とは少し違いますが、そこにこそ佐久間木材の価値観が表れています。
前編では、創業から現在に至る歩みと、主力事業である抜型用合板、そしてネット通販に至る背景を伺いました。
明治38年創業。材木とともに歩んだ120年

佐久間木材の創業は、明治38年(1905年)。
初代・佐久間喜三郎氏が浅草の材木店を買い取ったことから、歴史が始まりました。
二代目・大吉氏、三代目・英樹氏、そして現在の四代目・賢之氏へと、四代にわたり事業が受け継がれています。
「木が、自分のアイデンティティなんです」
そう語る社長の佐久間賢之(マサユキ)さん。
実は佐久間家では、代々名前に「キ」の音を入れてきたそうです。社長のご子息の名前も「キスケ」くん。木との深い縁を感じさせます。
店舗の前を走る新堀通りは、かつて材木の川流しが行われていた場所です。地域とともに材木を扱ってきた歴史が、今も街の中に息づいています。
120年の間には、関東大震災や東京大空襲での全焼といった大きな試練もありました。バブル期には本社ビルを建設し、多額の借金を背負った時代もあったといいます。それでも佐久間木材は、急激な拡大を目指すことなく、年輪を重ねるように事業を続けてきました。
全国を支える「抜型用合板」という仕事

佐久間木材の主力事業が、「抜型用合板」の卸売です。
抜型用合板とは、段ボール箱や紙器を打ち抜くための「型」の土台となる木材で、「金型」の木材バージョンといえば分かりやすいでしょう。
お菓子の箱、化粧品のパッケージ、薬の紙箱、家電製品の梱包材。
私たちの身の回りにある多くの製品は、箱に入って流通しています。その箱を作る工程で、抜型用合板は欠かせない存在です。
「箱が必要な産業は、ほぼすべて関わっていると言えます」
「また、自動車関係のゴムのパッキンもこの合板で作られた型なんですよ」
佐久間さんはそう説明します。
かつて台東区や隅田区、足立区などの下町には、抜型製作所が数多く存在していました。職人がミシンを使い、合板に溝を掘り、刃を埋め込む。狭い工場で行われるその作業を支えるため、佐久間木材は毎日のように合板を届けていたといいます。
しかし時代が進み、レーザー加工が主流になると、職人の高齢化や廃業が進み、下町の抜型産業は大きく変化しました。
それでも佐久間木材は、全国へと販路を広げ、抜型用合板分野で全国シェアの3分の1以上を占めるまでになっています。
ネット通販という新たな挑戦

もう一つの柱となっているのが、木材のネット通販事業です。
佐久間木材が通販に取り組み始めたのは、2000年頃。当時、木材業界ではまだ珍しい試みでした。
「地方では、必要な材料が手に入りにくいことが多い。東京にはいろいろな木材が集まるので、それを地方へ届けられる役割があると思いました」
木材は価格やサイズが分かりにくいというイメージがありましたが、佐久間木材はそれを一つひとつ明確にし、合板やMDF、OSBといった木質材料を全国に届けてきました。
エンドユーザーと直接やり取りすることで、喜びの声が届くのも大きな魅力だといいます。現在では、ネット通販は同社の重要な収益の柱となり、事業を支えています。
MDF…木材チップを繊維状に細かくして熱圧成形した、均質で平滑な表面を持つ中密度繊維板
OSB…間伐材などを薄い木片にして接着剤で熱圧着した配向性ストランドボード
「木のため」を最初に置く理由

佐久間木材が掲げる使命は、「木のため、世のため、人のため」です。
人や社会の前に、あえて「木」を置いていることが印象的です。
佐久間さんは、穏やかですが、熱を込めて次のように語りました。
「東京って、実はあまり木を使わなくても成り立ってしまう街なんですよね。
だからこそ、木を使わなくなってきている今、木の良さを東京の人にもちゃんと感じてもらいたい、という気持ちはあります。
一方で地方では、どうしても流通が十分じゃない部分があって。東京のほうがいろんなものが集まってくる分、うちはその強みを生かして、幅広い木材を地方に届けられる。そういう点でも喜んでいただいています」
「うちは木という資源を扱う商売です。もちろん『世のため、人のため』という思いはありますが、その前に『木のため』を入れているんですね。
『木のため、世のため、人のためになる仕事をしよう』。それが使命感です。
環境保護を前面に出す活動とも少し違いますし、人間さえ良ければいいとも思っていません。人と自然が、無理なくバランスよく共存できる社会になればいいな、そんな思いでやっています」
人間中心でもなく、自然保護一辺倒でもない。
人と自然がバランスよく共存する社会を目指す。その考え方が、佐久間木材の事業の根底にあります。
後編では、国産材の活用やSDGsへの向き合い方、木育活動、地域文化との関わり、そして「ゆっくり成長する」ことへの思いに迫ります。
お店の情報
佐久間木材株式会社
住所 〒111‐0041 東京都台東区元浅草3‐12‐10
電話 03‐3843‐5221
メール info@ecomoku.jp
公式ホームページ https://sakumamokuzai.jp/
エコモク(木質材料の専門店) https://ecomoku.jp/
comoku(木の雑貨専門店)https://www.kinozakka.com/
@合板(いろんな合板店)https://gouhan.net/




