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もの・こと  |    2026.04.14

朝市で手湯体験?30年以上続く「鶴巻温泉朝市」が教えてくれる、ちょうどいい土曜日の始め方

毎週土曜、鶴巻温泉駅前で開催される「鶴巻温泉朝市」。新鮮な野菜や地元の加工品、温かいコーヒーに手湯まで。30年以上続く、気取らないけれど「ちょうどいい地域の日常」がそこにはある。

新宿から1時間、小田急線「鶴巻温泉駅」を降りると、そこには駅前ならではの活気と、小さな温泉地らしい穏やかさが共存している。今回ご紹介するのは、この街で30年以上愛され続けている土曜朝市。派手な観光イベントではない、けれど心になんとなく残る「地域のオンリーワン」を覗いてみた。

20260301鶴巻温泉朝市

改札を出れば、そこはもう「市場」だった

鶴巻温泉駅の北口改札。自動改札を抜けて一歩外に出ると、目に飛び込んでくるのは色とりどりのテントと、活気に満ちた人々の姿。

20260301鶴巻温泉朝市

「おはよう!」「久しぶり!」「最近調子どう?」

そんな威勢のいい声が響く会場は、鶴巻温泉駅北口広場。通勤や通学で駅を利用する人々も、朝市の間をすり抜けていく。その間に思わず足を止めてしまうほど駅までのアクセスは抜群。しかし、ここにあるのは観光客向けの派手なパフォーマンスではない。並んでいるのは、秦野の水と土が育んだ力強い野菜や、地域の人たちが手塩にかけた加工品たち。

20260301鶴巻温泉朝市

「イベントに参加する」というより、「地域の台所にお邪魔する」ような、素朴で温かい空気がそこには流れている。

「秦野の旬」を五感で楽しむラインナップ

朝市の主役は、なんといっても地元の生産者が直接持ち込む新鮮な農産物だ。

コンテナに山積みされた白菜、泥のついた立派な長ネギ、そして冬の朝陽を浴びて輝く柑橘類。秦野市は名水百選にも選ばれるほど水が豊かな街だが、その恩恵を受けた野菜たちは、驚くほど色が濃く、瑞々しさに溢れている。

ここで注目したいのが、初めての人にも優しい「明快な値札表示」だ。「大根 100円」「ホウレンソウ 100円」と、大きな文字でシンプルに書かれた値札は、気軽に手に取るという行為の背中を押してくれる。

最近は外国の人たちも野菜を求めて足を運ぶ。「これあなたはどんな料理にするの?」「炒めます」という簡単なコミュニケーションもできたりする。

そんな何気ない会話から、地域だけではない食文化を学ぶことができるのも、鶴巻温泉朝市ならではなのかもしれない。

常連さんに学ぶ「朝市を楽しむために知っておきたい、ちょっとしたこと」

鶴巻温泉朝市の野菜コーナーには簡単なローカルルールがある。その一つが、「買い物カゴでの事前キープ」だ。

20260301鶴巻温泉朝市

実はこの朝市、開始時刻の20分ほど前から、自分が欲しい野菜を選んで買い物カゴに入れ、列に並べておくことができるシステムになっている。人気のお買い得品は、20分前になると手が次々と伸び、販売開始と同時に完売してしまうこともしばしば。

「今日は長ネギが安かった」と笑う地元の方の姿を見ていると、この場所が単なる買い物の場ではなく、一週間のリズムを作る大切な「居場所」になっていることが伝わってくる。

野菜の次は、パンを選ぶ

野菜をカゴにいれ、ホッと一息つく暇はない。パン屋さんの準備ができる頃合いだ。地域のパン屋さんが、出来立てのあんぱんとカレーパンなどを持ってきてくれる。

最初からパン狙いの常連さんも多く、まだ何もない場所に行列ができるという不思議な光景が現れる。パン屋さんがやってくると、テーブルの設置などを常連が手伝い販売開始。70個近いパンが見る見るうちに減っていく。

うっかり話し込んでいると、あっという間に売り切れてしまう。朝市でパンを買おうと思ったら、割と努力しないとありつけない。

コーヒーの香りと「手湯」で整う、至福のひととき

買い物を終えたら、そのまま帰るのはもったいない。会場の一角からは、香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。

20260301鶴巻温泉朝市

朝市で愛される「さくらコーヒー店」が提供する一杯は、冬の冷えた朝に染み渡る優しさ。紙コップを手に、朝市の賑わいを眺めながら、知人との会話を楽しみながら一息つく時間は、何物にも代えがたい時間だ。

そして、仕上げに立ち寄りたいのが、会場横にある手湯「千の泉」。鶴巻温泉の源泉が贅沢に溢れるこの場所では、指先を数分浸すだけで、体が芯からポカポカと温まっていくのが分かる。

20260301鶴巻温泉朝市

日本有数のカルシウム含有量を誇る名湯を、まずは手軽に体験できる。この「温泉地×朝市」という組み合わせは、鶴巻温泉が誇るメインコンテンツの一つだろう。

無理がないから、ずっと続いていく

鶴巻温泉朝市を歩いて感じるのは、そこに漂う「無理のなさ」だ。大きな予算を投じたイベントではない。地元の生産者が自信のあるものを持ち寄り、近所の住民がそれを楽しみに毎週集まる。そのシンプルな循環が、30年以上の月日を積み重ねてきた。

派手な演出はないかもしれない。しかし、ここには確かな手応えがある。 人と人が言葉を交わし、旬を分かち合い、手湯の湯気に包まれる。そんな週一回の小さな楽しみを求めて、駅前の広場に人が集まる。

20260301鶴巻温泉朝市

もし、あなたの土曜日がちょっぴり物足りないなら、ちょっぴり早起きをして鶴巻温泉へ向かってほしい。 小銭とエコバッグを手に、秦野の今に触れる。そこには、あなたの週末を豊かにしてくれる「ちょうど良さ」が待っている。

鶴巻温泉朝市
  • 住所:神奈川県秦野市 鶴巻温泉駅北口広場
  • 開催時間:毎週土曜日 4月〜10月:AM7時〜 11月〜3月:AM8時〜
  • 開始時間より少し早めに来るのがおすすめ
  • アクセス:小田急小田原線「鶴巻温泉駅」下車すぐ
  • 備考:現金のみの取り扱い。小銭の準備をおすすめ。

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この記事を書いた人

梅下智弘

神奈川(秦野周辺)で地域の活動や場づくりに関わりながら、ローカル取材もしている。 人やプロジェクトを「何をしているか」だけでなく、「なぜやっているか」まで掘って伝えるのが好き。

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