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もの・こと  |    2026.07.23

音楽でかつての賑わいをもう一度 | ストリートライブイベント「Code-K」の挑戦

愛媛県四国中央市、JR川之江駅にほど近い「川之江栄町商店街」。かつてはここに赴く際「街に行く」と言い、おしゃれして足を運んだものだ。アーケードの下には多くの人が行き交い、暮らしに必要なものがほぼすべて揃う場所だった。

しかし時代の流れと共に歩く人の姿はまばらになり、シャッターを下ろした店舗が目立つようになった。私はこの土地で40年ほど暮らしているが、衰退はじわじわ進んだ気もするし、気が付けば今の形になっていた気もする。

さて、その静かな通りに、若者たちの歌声や軽快な旋律が響く日がある。ストリートライブイベント「Code-K(コード・ケー)」だ。

初回の開催は2024年2月。2026年5月に記念すべき10回目を迎えた。

Code-Kの仕掛け人のひとりが、長年ピアノを教えてきた髙橋英理子さんだ。

彼女はなぜ、この場所でイベントを立ち上げたのか。その背景には、音楽の指導者として、そして母親として抱き続けてきた、子どもたちへの熱い思いがあった。

自主性を引き出した中学校での経験

短大を卒業してピアノを教え始めた髙橋さんは、市内の中学校で音楽を教えることになった。

「生徒たちを大きな声で歌える、表現できる子にしてください」

当時の校長先生からそう言われた髙橋さんは、音楽室で眠っていた楽器を引っ張り出した。「好きなように、自由に演奏していいよ」と声をかけると、子どもたちの目は輝いた。

教え子のなかには引っ込み思案な生徒もいたという。しかし、自由に音を奏でる楽しさを知った彼らは「卒業式で歌いたい」と、校長先生に直談判するまでに成長した。

「自分たちから『こういうのをやりたい』と言ってくれたのが、すごく嬉しかったんです。やりたい気持ちと、みんなで作り上げる一体感が育つ姿を見られたことは、その後の私の生き方や、子どもたちとの関わり方のベースになりました」

与えられたものをこなすのも大切だが、子どもの内から湧き出る「やりたい」という想いを引き出すのも、大人が果たすべき役割なのかもしれない。

厳しいだけの先生からの脱却。「一人ひとり」と向き合う音楽へ

その後、結婚と出産を経験した髙橋さんは、我が子の成長を見守るなかでひとつの気づきを得る。

「一生懸命やれば、子どもはみな同じようにできることが増えていく」と思っていたが、必ずしもそうではなかったのだ。

発達のスピードも物事のとらえ方も、一人ひとり違う。

同じ言葉をかけても、伸びる子もいれば萎縮する子もいる。多様な子どもたちの存在に直面した彼女は、音楽療法のひとつである「ミュージック・ケア」を学び始めた。

「昔の私は、ただただ厳しい先生でした。ピアノの技術以上に、礼儀作法にはとても厳しかったんです」

懸命に練習してきた生徒に「より良くなってほしい」という気持ちで厳しく指導する。しかし、それが原因でそっぽを向く子もいたという。時代が変わり、怒られ慣れていない子どもが増えるなかで、髙橋さんは自身の指導スタイルを少しずつ変えていった。

「今求められているのは、大人が子どもたちの気持ちを汲み取って対話することだと思うんです。子どもだって、自我をもったひとりの人間ですから」

一人ひとりの個性と向き合い、対話を重ねる。その真摯な姿勢は、教え子たちにも伝わっているようだ。

「あの時は怖かったけど、先生に教わって絶対によかった」。そう言って、大人になった教え子たちが髙橋さんのイベントを手伝いに来てくれるのだという。

自己表現の場を奪われた子どもたちへ。「Code-K」の誕生

髙橋さんは音楽教室の傍ら、地元のお祭りの実行委員や、子育て支援施設での音楽活動など、地域と深く関わる活動を続けてきた。地域の人々と信頼関係を築くなかで、ずっと気にかかっていたことがある。

「今の四国中央市には、若者が自己表現できる環境が少ないんです」

昔は、大人に反対されても内緒でライブハウスに赴く若者も少なくなかった。しかし今は、そんな場所も限りなくゼロに近い。子どもたちが熱量高く打ち込んだことを活かして、自己表現する場を提供したい。そう考えた髙橋さんが目を向けたのが川之江栄町商店街だった。

「歩く人がいないなら、人を集めればいい。音楽だけじゃなく、美味しいものがあればみんな来てくれるかも」

そうして立ち上がったのが、ストリートライブイベント「Code-K」だ。最初こそこぢんまりしたイベントだったが、SNSを通じて少しずつ若者たちが集まり始めた。2年の歳月を経て、小さな輪は着実に広がっている。

静かな街に響き渡る歌声。熱気溢れる「Code-K」当日の様子

イベント当日。静かだった商店街は、若者たちと地域の人々の熱気に包まれていた。

初夏の夕方はまだ日が高い。少しずつ人が集まり、会場はワクワクした空気に包まれていく。

髙橋さんのハキハキしたMCでイベントスタート!

トップバッターは「音造&こっしー」。ベテランの安心感で魅了する。

少年の爽やかで伸びやかなボーカルが印象的な「四神」。

イベント当日が誕生日。軽妙なトークで「年齢は秘密」と語るサマーナイトラヴさん。

小羽さんは今年高校を卒業したばかり。圧倒的歌唱力。

日が陰り始めるものの、人の数は増すばかり。

みどりんさんのふわふわした綿菓子のような声に癒される。

穏やかな語り口と歌声のHikaruさん。

「SHARK2」は結成したての学生バンド。観客の前での演奏は初!

夜の気配が漂い始める会場。出演者の音楽に耳を傾けたり友人や知人との語らいに興じたりと活気に満ちている。

幼馴染の「灯」。小さなハプニングがあったものの、堂々としたパフォーマンス。

懐かしい曲で昭和生まれの心を沸かせた「IRON BEAT」。

大トリはJUNさん。歌もさることながら、トークスキルの高さに脱帽!

「自分たちで創り上げるのが楽しい」。運営を支える高校生たちの声

この日、運営側の高校生たちに話を聞くことができた。中学時代から「四国中央市を笑顔であふれる街にしたい」という思いでボランティア活動を続けているという。

「今回は飲食の販売サポートもしましたが、実はバンドでもステージに出させてもらったんです。たまたま楽器を持ってる子たちが集まって、バンド組めるねって話をしていて。イベントの1週間くらい前に、髙橋先生から『やってみない?』って声をかけられたんです(笑)」

髙橋さんの何気ない「やってみない?」の一言が、若者たちの一歩を助ける。学校の部活動や勉強で忙しいなか、どうやってイベント運営と両立をしているのかと尋ねると、頼もしい答えが返ってきた。

「両立のコツは『気合い』です! 高校生にとって最優先すべきは勉強なので、授業では絶対に集中。スキマ時間にコツコツやる。インプットとアウトプットはワンセットです。それさえできていれば、イベントの準備やバンドの練習と勉強は両立できるんです」

大人顔負けのしっかりとした眼差し。自ら考え、行動し、表現する。そのひたむきさから生まれる充実感が、言葉の端々から溢れていた。

利益ではなく「思い」で繋がる。大人と若者が交差する場所

「Code-K」を支えているのは、髙橋さんの思いに共感した地域の大人たちだ。

「人がたくさん来てくれる日ばかりではありません。雨が降って、売上がほんの数千円にしかならない日もあります」

イベントを盛り上げるには、やはり「食」を満たすのも必要だ。人が集まるところには、たいてい美味しいものがある。しかし、収益面で見るとなかなか厳しい部分があるようだ。

「それでも、『子どもたちのためにも、地域のためにもなる取り組みなんだから』と、出店し続けてくれるキッチンカーの店主さんや飲食店の方々がいるんです」

利益を度外視してでも、若者の居場所づくりを応援したい。大人たちの温かい背中を見て、中高生たちも自らの意思で運営に関わっている。

大人たちが子どもたちを思い、子どもたちはその愛情を受け取り、また次世代へと伝えていく。

「Code-K」は、音楽で世代をつなぐストリートライブイベントなのだ。

次回の開催予定日は、2026年9月12日。

まだ暑さが厳しいであろうこの日、再び晴れやかな歌声が街に響く。

イベントの紹介

開催場所:川之江栄町商店街

【Code-K 公式インスタグラム】

https://www.instagram.com/codek2024?igsh=eGVoM2gzZHgyajll
次回開催日:2026年9月12日(予定)

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この記事を書いた人

佐藤恵美

愛媛県の最東端、四国中央市在住のWebライター・ICT教育支援員です。 教育、介護、メンタルヘルスなど、人の暮らしに寄り添う分野を中心に執筆しています。 介護職・相談員の経験を活かし、心に寄り添う文章を心掛けています。 あまり外を飛び回るタイプではありませんが、ひとりで行動する時間が大好きです。外出先で美味しいお店に飛び込んだり、急に気が向いて海を観に行ったりしています。

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