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もの・こと  |    2023.12.21

犬も人もつながる、新しい居場所づくり「キドックスカフェ」|茨城県つくば市【後編】

前編では、茨城県つくば市で保護犬と出会えるカフェ「キドックスカフェ」を運営する認定NPO法人キドックスについて、NPO設立の経緯や活動内容をご紹介しました。後編ではカフェを含むキドックスの施設、ヒューマンアニマルコミュニティセンターキドックス(HACCキドックス)について詳しくご紹介します。

愛犬を連れても楽しめるドッグカフェとドッグラン

HACCキドックス外観

ここからは、カフェの様子やその魅力についてご紹介していきたいと思います。ゲートをくぐると目の前には中庭と広いドッグランがあります。ドッグランは犬の大きさによってエリアが3つに分けられており、犬同士の思わぬトラブルを回避できるよう考慮されています。

3つに分かれていても、それぞれのドッグランに十分なスペースがあります

中庭に面した左手の建物には、ドッグシェルターとトリミングサロン、ペットホテルが入っています。

キドックスでは保護犬のQOL(Quality of life)向上を最優先しているため、ドッグシェルターに収容する犬は最大15頭と制限しています

こちらの中庭、草刈りだけでも大変そうですが、ちょうど地域のボランティアの方と一緒に「コミュニティガーデン」として整備を進めている最中だそう。お花やお手製の看板、日暮れからライトアップされるイルミネーションなどが設置され、雰囲気も良くなって、ドッグランとしての利用も増えてきているそうです。

中庭をスタッフと一緒に散歩している保護犬のさすけ

そして左手手前の建物は愛犬と一緒に入れるドッグカフェです。以前は保護犬との相性などが理由で積極的に犬を連れて訪れるのが難しい一面もありました。そこで移転後は保護犬カフェと建物を分けることで、愛犬を連れて気軽に遊びに来やすい仕様にしました。

ドッグカフェの大きな窓からは中庭とドッグランが一望できます

こちらで提供されているスープとサンドイッチは、つくば市のフレンチレストランB6のオーナーシェフが監修した本格派。種類は4種類で、材料も地元農家さんを中心にオーガニックのものを仕入れており、味も絶品です。

サンドイッチなどのフードメニューはドッグカフェで、ドリンクメニューとわんちゃんおやつはキドックスカフェでも注文ができます
具材がたくさん入ってボリュームたっぷりのサンドイッチ。筆者の子どもはスープがおいしすぎて帰り際に2杯目をテイクアウトしたほどでした

お客さんにはシンプルにおいしい食事で満足してもらいたいという岡本さんに、フードへのこだわりについて尋ねてみました。

「僕たちの活動は未来を作る活動だと思っています。そう考えたとき、環境のことを考えずに作られたものを使うのは、キドックスの活動と矛盾しているなと思うんです」

良い社会はいろいろな人たちが手と手を結び合って作っていくもの。だから活動は違っても、同じような方向性や考えを持っている地域の人たちと一緒に取り組むことを大切にしたいと笑顔で語ってくれました。

犬と人の間に温かな時間が流れるキドックスカフェ

各スペースにはテーブルとソファやベンチが用意されていて、犬たちも思い思いの場所でお客さんを待っています

ゲートを入って右手は、いよいよお待ちかねの保護犬と触れ合えるキドックスカフェです。

スタッフの方に扉を開けてもらうと、中にはさらに脱走防止のゲートがあります。店内はメインスペースの他にゲートで3つのスペースに区切られていて、それぞれのスペースで里親への譲渡に向けたトレーニング中の保護犬たちが待っています。

HACCキドックスでは、料金をすべて円ではなくdonation(ドネーション) で表示しています。入場料はキドックスの活動費に充てられます
各テーブルにはそれぞれの「犬生」をつづったファイルが用意されていて、保護された経緯や性格、いまトレーニングしている内容などが細かく記載されています

まだトレーニングの最中なのでお客さんが入って来ると最初は吠えてしまう犬もいますが、そんな犬にも警戒させないように優しく接するお客さんたちの様子は、見ていてとても温かい気持ちになります。

知らない人にはまだ控え目な様子の保護犬・しらたま
オプションでおやつを追加購入でき、トレーニング中の内容に合わせて「おすわり」や「お手」、「伏せ」ができたらおやつをあげます(写真は今夏に訪れた時の様子)

現在カフェにはキドックスのスタッフが勤めており、社会復帰を目指す若者は主に犬のトレーニングに当たっています。キドックスでの仕事は「やりがいだらけです!」と語るスタッフの波能(はのう)さんにもお話を伺いました。

「キドックスの活動に参加できているというだけでうれしいですが、やっぱり保護犬の里親が見つかったときや、動物のおかげで人が一歩踏み出す姿を見られたときは、ここで働いていて本当によかったなと思います」

波能さんの“推し”は、保護犬のふうちゃん。見た目や愛嬌の良さはもちろん、心を許した相手にはとても甘えん坊なところもチャームポイントです。

首回りのモチモチも推しポイント。キドックスカフェに通いつめれば、ふうちゃんがゴロンとお腹を見せてくれる姿が拝めるかも?!

将来は自分も、人と動物が一緒に過ごせる空間づくりをしたいと語る波能さん。平日は若者の自立支援を行い、週末はキドックスカフェで働いています。

「いろいろな人や動物と関わることで、もっと成長していきたいです」

そう語る姿はとても頼もしく感じられました。                                      

最後に、岡本さんからこの記事を読んでくださったみなさんに向けて、メッセージをいただきました。

「どんな形でもいいので、まずはキドックスの活動に触れてもらえたらと思っています。そして『いい所だな』『こういう社会を一緒に作っていきたいな』と共感してくれる方がいれば、いつでも歓迎します。それぞれに合ったやり方で、一緒に活動したり支援したりしてくださるとうれしいです!」

キドックス卒業犬の里親さんからの近況報告とメッセージがファイリングされたアルバム

キドックスカフェが目指す姿は「犬と人、人と人、犬と犬が出会い、自然とつながりが生まれる居場所」と語ってくれた岡本さん。キドックスの活動がもっと広がれば、岡本さんたちメンバーが目指す未来は必ず実現できるはず。訪れたお客さんや犬たちの幸せそうな様子を見て、そう感じたひとときでした。

<お店の情報>

キドックスカフェ

住所:茨城県つくば市下広岡1054-5

電話番号:029-846-0661

営業時間:月木金土日祝(火水定休)11:00~17:00(L.O.16:30)

認定NPO法人キドックス公式サイト:https://kidogs.org/

キドックスの見学ツアーや寄付については、こちらの公式サイトで詳細をご覧ください

認定NPO法人キドックス公式Instagram:https://www.instagram.com/kidogsfarm/

認定NPO法人キドックス公式X:https://twitter.com/KIDOGSofficial

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この記事を書いた人

那須あさみ

山口県出身、栃木県在住4児の母。日々、子どもたちに翻弄されながらもライターとして活動中。趣味は読書、映画鑑賞、ヨガ。お店も人も自然も、まだまだ知られていない地元の魅力をみなさんにお届けしたいと思います。

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