「子どもの『やってみたい』という気持ちは、家だと叶えにくいんですよね」
そう話すのは、保育士として約20年現場に立ち続け、現在は子どもの主体性を育む体験づくりに取り組む、株式会社Coannaの浜田 郁さん。
横浜を拠点に活動するチーム 「Coanna(コアンナ)」は、「子どもが自分で考え、決めて、やってみる」という経験を日常の中へ取り込むためのサービスを展開しています。
今回は、事業立ち上げの背景から、人気のワークショップ、子育てのリアル、そして街とつながる未来像まで、お話をうかがいました。
保育士から起業家へ

現在3期目を迎えている「Coannna(コアンナ)」を立ち上げたのは、元保育士の浜田さん。約20年間、保育の現場で子どもたちと向き合ってきました。
「保育園では、保育士と子どもたちが毎日たくさんのことに取り組んでいるのに、園での様子が外に出ることはない。保育園で当たり前に行われている『子どもたちの主体的な活動』は、社会に伝えられていない」と感じていたそうです。
保育士が保育園を飛びだして、子育てを伝えたい

保育園は、子どもが主体的に活動できる環境が整っています。
「やってみて、失敗したら次を考える」という経験を積み重ねると、子どもは自然と成長していきます。
浜田さんはこの考えを大切にしてきました。
「私は、子どもが生まれて思ったことがあります。
保育園で大切にしてきた、子どもの主体的な活動は、自宅になると全く思い通りにいきませんでした。
仕事が終わって家に帰ったら時間がなくて、自分の子どもに怒るばかりの子育てになってしまっていました。
保育士の私でさえ、このような状況になってしまう。それなら一般のお母さんたちはもっと大変なんじゃないかと思いました」
浜田さんは「保育士が外に出て、子育てに関して伝えられることがあるのではないか?」と考え、元保育士仲間を集めて起業しました。
「Coanna(コアンナ)」という社名は、「子どもと、みんなが幸せに」という想いを込めて、「子ども」と「みんな」を組み合わせた造語です。
子どもは自ら育つ力を持っていますが、見守る大人や社会の存在が不可欠です。しかし、見守る側に余裕がなければ、それは子どもにも伝わってしまいます。
「子どもと、子どもを取り巻くみんなが幸せでいてほしい」
その願いが社名に込められています。
親子を「あえて分ける」人気のデザイン体験

Coannaでは、子どもの主体性を育むワークショップやイベントを行っています。
特に好評なのが、百貨店やイベントスペースで行う「デザイン体験」です。子どもが描いた絵を、バッグやTシャツなどの実際に使える形にして届けます。
この体験には、子どもの主体性を育てる仕掛けがあります。
親と子どもをあえて別室に分けるのです。
親はモニターで子どもの様子を見守り、子どもはスタッフと一緒に制作に取り組みます。何を描くか、何色にするか、どこに配置するか、すべての決定を子ども自身が行います。
親が子どもの近くにいると「もう少し上の方がいいんじゃない?」「これは黄色がいいんじゃない」と、どうしても口を出したくなるものです。その気持ちはとてもよくわかります。
だからこそ、口出しできない仕掛けを作っています。

完成品が届いた瞬間の子どもの表情は、格別だといいます。
幼少期の「自分が作ったものが、自分の使うものになる」という喜びや誇りは、大きな自信と自己肯定感に繋がり、更に人生において何かしたいと起点となる原体験にもなります。
もし完成品を見て「これはもっと真ん中に書けばよかった」と思ったとしても、それは次につながる学びです。
子どもは、大人が特別なことをしなくても育つ力を持っています。感性も、挑戦する力も、考える力も、本来は自然に育っていくものです。
「子どものために」と思うほど、親は子どもが転ばないように、つい先回りしてしまいます。しかし本当は、転ぶ経験こそが、子ども自身が「次は転ばないように」と創意工夫するきっかけとなります。
だからこそ、家庭や社会の中でも、子どもが「自分でやってみる」機会を増やしていきたいです。
「体験が学びになる」活動

Coannaでは、デザイン体験以外にも、「体験が学びになる」活動を行っています。
公園での自然遊び「自然探検隊」では、自然を壊さずに上手く活用して遊ぶ方法をネイチャーゲームの資格を持つスタッフと一緒に体験できます。
具体的には落ち葉や木の実を拾ったり、虫を見つけたりして、道具に頼らず自然と触れ合います。親が子どもと一緒に楽しむことで、親子間のコミュニケーションも増えるんです。
また「ミックスジュース作り」では、子どもたちにオリジナルドリンクを作ってもらいます。

事前にオンラインで「どんなドリンクを使いたいか」をヒアリングします。
子どもたちが使いたいと希望のあったドリンク、牛乳や炭酸飲料、ジュースなどを用意。イベント当日は子ども自身がドリンクを混ぜ合わせて、とっておきの1杯を決めます。
組み合わせ方は、種類も量も、すべて子ども任せです。親は別室で待機し、その様子を見守ります。
大人から見れば「それは合わないだろう」と思う組み合わせでも、意外とおいしいものができたり、予想通り失敗したりします。その体験自体が学びとなるのです。
イベントの最後は、自分がおいしいと思ったドリンクを親に試飲してもらい、なぜこれがおいしいと思ったかを伝えてもらいます。
イベントを通じて、「意外と美味しい」という発見や「これは失敗だった」「親はうれしそうだった」という気づきが得られます。「組み合わせたらどうなるんだろう」という探求心を刺激することが、この活動の大きな狙いです。
変わったのは子どもではなく環境

保育士として20年、現場を見てきた浜田さんは「子どもは昔も今も変わっていない。変わったのは、子どもを取り巻く環境です」と語ります。
便利なものが増え、動画など刺激の強いコンテンツも身近になりました。それ自体は悪いことばかりではありませんが、使い方が重要です。
たとえばYouTubeなどの動画コンテンツは、ただ見ているだけでは受動的な体験にとどまります。これを能動的な行動に変えることができるのは「親の声かけ」です。
見終わった後に、親が「何を見ていたの?」「誰が出てきた?」と子どもに聞くことで、インプットをアウトプットに変えることができます。
子どもは、記憶を遡って、考える習慣が身につきます。
子どもの想像力で社会を元気に

Coannaが主力としているイベント事業は、単発になりがちという課題があります。
そのため、一過性で終わらない継続的なサービスの構築に取り組んでいます。オンライン化も視野に入れながら、持続可能な事業モデルを模索中です。
将来的には、街や企業とのコラボレーションを通じて、「子どもの想像力と社会をつなぐ」ことを目指しています。
「子どもが主体的にやりたいことに取り組み、それが形になっていく。主体的な子どもが増えれば、社会はもっと面白くなる」浜田さんはそう確信しています。
「子どもがワクワクする社会」を目指して、浜田さんは今日も一歩ずつ挑戦を重ねています。
■株式会社Coanna
公式HP:https://coanna.jp/
活動拠点:神奈川県横浜市
CoannaではLINEとInstagramで、イベント情報を配信しております。
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