成人式や結婚式、卒業式、七五三、お宮参り。
人生には、いつもとは違う装いで迎えたい大切な節目があります。
愛媛県松山市で1973年に創業した「華屋衣裳店」は、婚礼衣装をはじめ、成人式の振袖や卒業式の袴、七五三、お宮参り、喪服、長寿祝いなど、幅広い衣装を取り扱ってきた地域密着型の貸衣装店です。「あなたのそばに、特別な日のクローゼット」を掲げ、人生のさまざまな節目に対応しています。
今回は、華屋衣裳店を支えてきた専務に、53年間の歩みや仕事への思い、今後について伺いました。
人生に寄り添う貸衣装店

華屋衣裳店の特徴を尋ねると、専務から出てきたのは「ゆりかごから墓場まで」という言葉でした。
お宮参りの産着から、七五三、成人式、卒業式、結婚式。そして人生のさまざまな場面で必要になるフォーマル衣装や喪服まで。
「人生の節目に必要な衣装を幅広く扱っている」という意味だけではありません。
一人のお客様の人生に、長く寄り添っていく。それが華屋衣裳店の根底にある考え方です。
1973年の創業から時代の変化とともに

華屋衣裳店が創業したのは1973年。
専務自身が店に入ったのは、結婚して3人の子どもを育てた後のことでした。長く商売を続けるなかで、華屋衣裳店を取り巻く環境は大きく変化してきたそうです。
特に大きかったのが、婚礼スタイルの変化です。
近年では、和装を選んでもかつらではなく洋髪にしたり、昔から受け継がれてきた習わしを簡略化したりするケースも増えています。

そこで華屋衣裳店は、婚礼だけにとどまらず、成人式や卒業式、七五三など、人生のさまざまな節目へと事業の幅を広げていきます。
時代が変われば、お客様が求めるものも変わる。
その変化を受け入れながら、華屋衣裳店らしい仕事を続けてきたのです。
大切にする「接客力」

専務が繰り返し口にしていたのが「接客」の大切さでした。
どれだけ気に入った衣装があったとしても、接客が合わなければ、お客様は帰ってしまう。
だからこそ華屋衣裳店では、商品だけではなく「人」を大切にしています。
現在、店では20代から70代まで幅広い年代のスタッフさんが働いています。
専務が特に大切にしているのが、経験豊富なスタッフさんの存在です。

「年齢を重ねている方は、知識が宝だと思うんです。いくらでも引き出しがありますから」
教科書だけでは分からないことや、長年の経験によって身についた感覚もあります。
一方で、若いスタッフさんには若いスタッフさんならではの良さがあります。
幅広い年代のスタッフさんがいるからこそ、お客様のさまざまな相談に対応できる。
それも華屋衣裳店の大きな強みです。
長く働く人がいる理由

30年、40年以上にわたって働いているスタッフさんもいるという華屋衣裳店。
「嫌だったら辞めますよね。給与などの条件もありますが、『この場所で働きたい』という気持ちを持ってもらっているのではないでしょうか」と専務は話します。
専務が大切にしているのは、スタッフさんとの信頼関係。「安心して働いてもらえる環境をつくるのが仕事」という言葉にも、その考え方が表れています。

女性スタッフさんが多い職場だからこそ、結婚や出産、子育てなど、人生の変化によって働き方が変わることも。
だからこそ、一人ひとりと向き合いながら働ける環境をつくることを大切にしています。
お客様が「ここに決めた」と言ってくれる瞬間が何より嬉しい

専務に、長年この仕事を続けてきたなかでのやりがいを聞くと「お客様が喜ぶ顔を見ることです。最初はあまり興味を持っていなかったお客様が、少しずつ心を開き、最後に選んでくれた瞬間が嬉しいです」と返ってきました。
衣装を見に来た方が、最初から「ここで借りよう」と決めているとは限りません。だからこそ、自分たちのお店を選んでもらったときの喜びは大きくなります。

衣装という「モノ」を提供するなかで、実際に向き合っているのは「人」だと感じました。
「華屋でないといけない」と思ってもらえる店へ

53年間、地域で営業してきた理由を尋ねると、専務は「先代から守ってきたこと」を挙げました。
創業者から受け継いできた、お客様を大切にする姿勢。そして、家族や従業員との関係を大切にすること。
「皆様から信頼していただける店にしたい」それが、これからの華屋衣裳店への思いです。

松山という地域は決して大きな街ではありません。
だからこそ、人から人へ評判が伝わります。良い仕事をすれば、それが横へ広がっていく。
逆に、誠実でない仕事をすれば、それもまた伝わってしまう。

専務は「松山は狭いからこそ、横に広がる場合もある」と話します。
地域密着で商売を続けるからこそ、一つひとつの仕事を大切にする。それが、53年という歴史につながっています。
次の世代へ「自分で決めてほしい」

現在、華屋衣裳店は次の世代へとバトンを渡しつつあります。
しかし、専務は「必ず継いでほしい」とは考えていません。
「自分でやるって決めてほしい」それが、次の世代への願いです。

極端に言えば、貸衣装業そのものを継がなくてもいい。その人自身がやりたいことを見つけ、幸せになるのであれば、それも一つの道だと考えています。

これから何が起こるかは誰にも分かりません。
だからこそ、次の世代には華屋衣裳店という場所を基盤にしながら、新しいものを取り入れてほしいそうです。
「やらされるのではなく、自らやりたいと思ってもらえる会社であってほしい」その言葉からは、次世代への深い愛情が感じられました。
時代が変わっても根本にあるものは変わらない

最後に、長年商売を続けてきた専務から、次世代へ向けてのメッセージを聞きました。
「真面目にやるしかないですよ。時代が変わろうとも、根本は変わらないと思う」

華屋衣裳店が53年間続いてきた理由には、特別なものがないのかもしれません。
お客様を大切にする。
スタッフさんを大切にする。
家族を大切にする。

そして、目の前の仕事に真面目に向き合う。
その積み重ねが、地域からの信用になり、次の世代へとつながっていく。
産着から喪服まで、「ゆりかごから墓場まで」。
人生の節目に寄り添う華屋衣裳店がこれからも大切にするのは、衣装そのものだけではありません。

人と人との信頼を、次の時代へつないでいくこと。
それこそが、1973年の創業から53年間、華屋衣裳店が守り続けてきたものなのではないでしょうか。
基本情報
華屋衣裳店
住所:〒790-0916 愛媛県松山市束本2丁目12-11
電話:089-946-2188【完全予約制】
営業時間:10:00〜18:30
定休日:毎週水曜日(祝日の場合は翌日休み)・年末年始
公式サイト:華屋衣裳店
SNS:Instagram




