人生の節目に寄り添う衣装を扱う、松山市の「華屋衣裳店」。
1973年の創業以来、婚礼をはじめ、成人式、卒業式、七五三など、さまざまな場面で地域の人々の大切な一日を支えてきました。
現在、三代目として会社を率いるのが久保田耕史さん(以下、久保田さん)です。
長年、家業に携わる中で見えてきたのは、時代とともに変わり続ける貸衣装業界の姿。そして、会社を次の世代へつなぐために必要なのは「自分が引っ張ること」だけではないという気づきでした。
今回は、華屋衣裳店の現在、そして「100年続く会社」を目指す久保田さんの思いを紹介します。
仕事の原動力

久保田さんが華屋衣裳店に本格的に入ったのは、24歳頃のこと。学校を卒業した後、オーストラリアで1年間過ごし、その後は徳島へ。松山に戻ってから家業に携わるようになりました。
社長になる前は部長として、資金管理など会社のさまざまな仕事を経験。少しずつ経営に必要な仕事を引き継いでいったといいます。
2018年5月に社長に就任した久保田さんですが、仕事内容が突然大きく変わったわけではありません。現在も資金繰りや補助金、事務作業、仕入れ業者とのやり取り、新商品の確認など、会社に関わるさまざまな仕事を担っています。

それでも、社長として感じるやりがいを尋ねると、答えはシンプルでした。
「お客様が喜んでくれたら」
衣装を選び、人生の大切な一日を迎えるお客様の笑顔。その瞬間が、仕事を続ける原動力になっています。
「我を通さない」が三代目社長の経営哲学

久保田さんが仕事をするうえで大切にしているのが、「相手のことを考えて動く」ことです。
自分中心にならず、相手の目線に立つ。そして、周囲との協調性を大切にする。
一見すると当たり前のようですが、これは久保田さん自身が経験を重ねる中で身につけてきた考え方でもあります。
若い頃は負けず嫌いで、我の強いタイプだったという久保田さん。

しかし、自分の意見を押し通して何かを成し遂げたとしても、周りが協力してくれなければ、会社として大きな成果にはつながりません。
「みんなが『やろか』となった時に、やった方がいい」
もちろん経営者としてトップダウンで決める場面もあります。しかし、商品を選ぶ際などには、実際にお客様と接しているスタッフさんの意見を取り入れることも大切にしています。

「やらされる仕事ではなく、自分たちで納得して仕事に取り組んでほしい」というのが、久保田さんが大切にしている組織づくりです。
積み重ねてきた圧倒的な品揃え

華屋衣裳店の大きな特徴の一つが、豊富な衣装の品揃えです。
振袖や留袖、婚礼衣装、ドレス、七五三、卒業式など、さまざまな人生の節目に対応できる衣装を揃えています。もちろん、ただ数が多ければいいわけではありません。
衣装にも流行があり、時代によって人気の商品は変わっていきます。

「シーズンごとにいいものをコツコツ買っていかんとね」と久保田さんは話します。その積み重ねが現在の品揃えに。
久保田さん自身も、「愛媛県で品揃えナンバーワン」と考えているそう。華屋衣裳店の強さは、長い年月をかけて積み重ねてきた商品力にもあります。
安さだけではなく「いい衣装」を選んでほしい

一方で、貸衣装を取り巻く環境は大きく変化しています。
インターネットで衣装を探し、価格を比較し、そのままレンタルすることもできる時代です。
価格だけを見れば、ネットの方が安いケースもあります。
しかし、久保田さんが大切にしているのは「実際に着た時の品質」です。

写真ではきれいに見えても、実際に届いた衣装を着てみると、生地が薄かったり、長くレンタルされることで状態が変わっていたりする可能性もあります。
だからこそ華屋衣裳店では、実際に衣装を見て、触れて、スタッフさんに相談しながら選んでもらうことを大切にしています。
「松山の方に、高品質で最新の衣装を提供していきたい」

久保田さんは、人口減少に伴って、これから愛媛県や松山市の市場は縮小していくと考えています。
だからこそ、久保田さんが目を向けているのは、遠くへ商圏を広げることではありません。
松山に暮らす方たちが、わざわざ県外へ行かなくても、都会に負けない衣装を選べる環境をつくることです。
競争するよりそれぞれの地域で頑張る

以前は県外への進出も考えたことがあるという久保田さん。
しかし現在は、必ずしも広い地域へ進出する必要はないと考えています。

愛媛県内各地には、地域に根ざし、質の良い衣装を提供している店があるそうです。
「うちが進出する必要はあまりないかなと思っています。競争してお客様を奪うのではなく、自分たちの地域で必要とされる店をつくりたい」
そこには、長く地域で商売を続けてきたからこその視点があります。
「コツコツ飽きずに」が次の100年につながる

三代目として会社を引き継いだ久保田さんに、先代から受け継いだ教えを聞きました。
「コツコツ飽きずにやること。本当にコツコツやること」
急激に伸びることだけが、会社の成長ではありません。
衣装の仕入れも、社員との関係も、お客様との信頼も、一朝一夕にはつくれない。

毎年少しずつ良い衣装を仕入れ、目の前のお客様に向き合い、社員と一緒に会社をつくる。
その積み重ねが、50年以上続く現在の華屋衣裳店をつくってきました。
「俺の代で潰したくはない」と話す久保田さんには、さらに先の目標となる「100年構想」があります。

変えるべきところは変えながら、守るべきものは守る。
そうして次の世代へバトンを渡していくことが、三代目社長としての役割だそうです。
「見るだけでもいい」から一度訪れてほしい

最後に、これから華屋衣裳店を利用する方へメッセージをお願いしました。
「衣装に困っている方は、一度気軽に相談に来てもらいたい」
創業から50年以上。
時代が変わり、結婚式や成人式のスタイルが変化しても、人が人生の節目を迎えることは変わりません。

華屋衣裳店がこれからも目指すのは、松山で「ここに来れば大丈夫」と思ってもらえる店。
我を通すのではなく、周りの力を借りながら、一歩ずつ前へ進む。
久保田さんの姿勢が、華屋衣裳店を次の50年、そして100年へとつないでいきます。
基本情報
華屋衣裳店
住所:〒790-0916 愛媛県松山市束本2丁目12-11
電話:089-946-2188【完全予約制】
営業時間:10:00〜18:30
定休日:毎週水曜日(祝日の場合は翌日休み)・年末年始
公式サイト:華屋衣裳店
SNS:Instagram




