宮城県名取市の高舘山に鎮座する熊野那智神社は、紀伊・熊野那智大社から分霊(神様の分身)をお迎えした歴史ある神社。
約1300年の歴史を持ち、縁結びのご利益で知られています。
神門は展望台を兼ねており、名取平野や太平洋を一望できる絶景も魅力。
さらに、境内では人懐っこい猫たちがのんびりと過ごし、訪れる人の心を和ませてくれます。
今回は、熊野那智神社の伝説や起源、貴重な文化財、なぜ猫が多いのかといった理由まで、詳しくご紹介します。
光に導かれた先にあった熊野那智神社の伝説と起源


約1300年前の養老元年(717年)、広ノ浦(現在の閖上)で漁をしていた治兵エ(治兵衛)が、海の底で光り輝く御神体を見つけ自宅にお祀りしたのが始まりだったと伝えられています。
やがて、この御神体から夜ごと山へと飛んでいく不思議な光が現れ、治兵エ(治兵衛)は「羽黒飛龍の神である」という神託を受けて、高舘山に社を建てることになりました。
「ゆりあげ」いう地名は、御神体が「揺り上げられた」ことが由来とされ、後に仙台藩4代藩主・伊達綱村がその名に「閖上」の字をあてたといわれています。
また、保安4年(1123年)には、名取老女と呼ばれる巫女が紀州の熊野三山から分霊(神様の分身)を迎え入れ、ここに熊野那智神社が創建されました。
このことから、同社は熊野本宮社・熊野新宮社と並び「名取三社」のひとつに数えられ、東北の熊野信仰を支える重要な存在として知られるようになったのです。
主祭神は、人や物事を結ぶ力を持つ「結びの神」熊野夫須美大神。
導きと勝利の象徴である御神使の八咫烏も、古くから多くの人々に親しまれています。

伊達家が守り抜いた信仰と国指定の貴重な文化財

中世から近世にかけて、熊野の神々は物事をより良い方向へ導く存在として広く信仰されていました。
そのため熊野那智神社は、仙台藩主・伊達家にとって平安や武運を祈る大切な場所として守られてきたのです。
こうした背景から、社殿の建て替えや修理が数十年ごとに行われ、神社は大切に守られてきました。
また、明治時代の神仏分離の際、名取市内にあった管理寺院・物響寺との関わりから、懸仏や銅鏡などの宝物が一時期埋められることになりました。
その後、明治31年(1898年)の拝殿移築のときに再び発見されています。
これらは鎌倉時代から室町時代につくられた貴重な宝物で、現在では国や県の文化財として大切に保管されています。
令和6年(2024年)には名取市教育委員会による初めての経塚発掘調査が行われ、経筒の埋納跡や、複数の経塚が確認されました。
今回の発見をきっかけに、名取を拠点とした東北地方における熊野信仰の広がりが、今後さらに明らかになっていくと期待されています。
伝承を感じる四本の御神木と太平洋を望む絶景




参道入口で訪れる参拝者を迎えるのは、樹齢800年以上の「山一ノ杉」。
境内には、乳房のようなこぶをもつ大イチョウ「乳の木」があり、母乳祈願や子授け、安産を願う人々に古くから大切にされてきました。
また、「高舘連理杉」は、途中で二つの幹が結ばれて一本に育った珍しい杉で、その姿から夫婦円満や縁結びの象徴として多くの方に親しまれています。
展望台近くには、「生きた化石」と呼ばれる希少な高野槙も。
東北では自生せず、名取老女が紀州から運んだと伝わり、熊野信仰との深いつながりを感じさせてくれます。
社殿の背後には、紀州・熊野那智大社のご神体(滝)を思わせる小さな滝が流れていて、「滝沢不動尊」というお不動さまが祀られています。
滝と豊かな自然に包まれた神聖な雰囲気から、この地は「東北の那智山」とも呼ばれてきました。
参拝ルートは、神門を兼ねた展望台を通る道と、階段を使わずに参拝できる道の二つがあります。


展望台からは、さえぎるもののない眺望が広がり、名取平野や太平洋を一望できます。
参拝後に展望台や参道のベンチで絶景を眺めながらゆっくり休めるのも魅力。
日常の喧騒を忘れ、清々しい気分へと導かれる開放的な時間を過ごせるでしょう。

また、春には境内に約330本の桜が咲き誇り、柔らかなピンク色に包まれた景色が訪れる人々の心を和ませてくれます。
車で約5分の距離には、以前記事にさせていただいた「海の見える丘公園」があります。
あわせて、こちらの記事もぜひご覧ください。
※上記の記事は、2024年に取材した時のものです。
猫とともに歩んできた熊野那智神社

かつてこの地は養蚕が盛んで、猫はネズミや小動物を防ぐため大切にされていました。
東日本大震災の年に亡くなった前任の宮司も猫好きで、警備のために飼っていたことが境内の猫の増加につながったともいわれています。
前宮司逝去後、境内が薄暗く人も少なかった時期には、捨て猫が増え、警戒心の強い猫も多かったようです。
しかし現在では、猫に餌をあげたり世話をしたり、「かわいい」と声をかける参拝者も増え、猫たちにとって過ごしやすい環境になってきました。
また、季節ごとに開催される「那智てづくりマルシェ」では、工芸品や音楽ライブを通じて地域の温かな雰囲気が感じられます。
熊野那智神社は、御朱印やお守りの種類も豊富。
通常の御朱印に加え、毎月のイメージに合わせて色が変わる、水引を使った人気の置き型お守り「朔御魂」(五体限定)や、猫みくじ、八咫烏みくじなども用意されています。



お守りや御朱印の詳細については、神社へ直接お問い合わせください。
さいごに

熊野那智神社は、宮城県名取市・高舘山に鎮座する、1300年の歴史を持つ神社。
紀伊・熊野那智大社から分霊(神様の分身)をお迎えし、縁結びのご利益や、神門を兼ねた展望台から望む名取平野と太平洋の絶景でも知られています。
境内では人懐っこい猫たちとのふれあいや、マルシェ、地域に伝わる伝説や文化財との出会いなど、心温まるひとときを過ごすことができます。
豊かな自然と歴史、そして地域のやさしさに触れられる熊野那智神社へ、ぜひ一度参拝に訪れてみてください。
熊野那智神社
住所:〒981-1242 宮城県名取市高舘吉田字舘山8
電話番号:022-765-8217
駐車場:無料
境内に3か所の駐車スペースあり
明確な駐車区画の整備はされていないため、約20〜50台の駐車が可能
アクセス
車の場合
仙台南ICを降りて仙台方向へ→熊野堂交差点を岩沼方面へ→那智が丘入り口を右折→道なり→熊野那智神社入口の看板を左折→熊野那智公民館を左折→一つ目の角を右折(仙台南ICから約12~15分)
公共交通機関の場合
① 「なとりん号」を利用する場合
JR名取駅(東北本線)下車
→ 市内乗合バス 「なとりん号」 乗車
→ 「那智が丘2丁目」または「那智が丘小学校前」下車
→徒歩約15~25分
※ 「なとりん号」は名取市内を中心に運行するコミュニティバスです。
路線によってはJR南仙台駅西口に停車する便もありますが、熊野那智神社へ向かう場合はJR名取駅からの利用が分かりやすく便利です。
② 「宮城交通」を利用する場合
JR南仙台駅下車
→ 宮城交通バス「尚絅学院大学方面行き 乗車
→ 「那智が丘4丁目(那智が丘公民館前)」 下車
→ 徒歩約15分
問い合わせ先
公式サイト:http://kumanonati.com/
社務所の営業時間や神社行事の予定、宮司の在席状況などの最新情報は、公式サイトまたは公式SNSをご確認ください。
公式Instagramはコチラ。




