「長浜をもっと元気にしたいと思い、活動しています」
そう語るのは、長浜プロレス代表のエル・ヒキヤマさん。取材に伺った先は、長浜市内のショッピングセンター『アル・プラザ長浜』です。1階の特設リングでは『1.5平和堂アルプラザ大会』が開催され、熱い戦いが繰り広げられていました。
強靭な肉体の選手たちがマットに打ち付けられる音が、場内に激しく響き渡ります。それはまるで、雷が落ちたときのような激しさ。『1.5平和堂アルプラザ大会』では午前に3試合、午後に3試合が予定されていました。
長浜プロレスは、2019年に旗揚げされた滋賀県長浜市のご当地プロレス団体です。
団体の立ち上げから5年が経過し、活動も増えたことで認知度も向上しているように思えます。しかし、実際は順風満帆というわけではなかったようです。
今回は長浜プロレス代表のエル・ヒキヤマさんと川瀬さんに、団体立ち上げ時の様子や団体としてのこだわり、今後の展望などについて詳しく伺いました。
スタッフ含め、たった6人で立ち上げ
長浜プロレスを立ち上げるきっかけとなったのは、長浜曳山祭(ながはまひきやままつり)でした。同じ山組のエル・ヒキヤマさんと川瀬さんが地域活性化のためにプロレスをやろうと意気投合したといいます。
「曳山祭の参加者が少なくなってきたこともあり、なんとかして地域を盛り上げていきたいという話になりました。私が若い頃にプロレス団体に所属していたこともあり、それならプロレスで町おこしをしようと……」
2016年にユネスコ無形文化遺産に登録された長浜曳山祭は、長浜市が世界に誇る祭りのひとつです。羽柴(豊臣)秀吉が男子出生を祝い、町民に砂金を振る舞ったことから始まったとされています。
「立ち上げ時はスタッフ含めて6人しかいませんでした。今は若いメンバーも増え、撮影スタッフなども含めると24名です。ありがたいことに、応援してくださる方も増えてきました」
メンバーのなかで本格的にプロレスを経験しているのはエル・ヒキヤマさんただ一人。ほかのメンバーは柔道、レスリング、総合格闘技などの経験者です。なかには、プレ旗揚げ戦で観客として参加していた人が、メンバーとして活躍しているケースも。
コロナ禍にはすべてのイベントがキャンセルに
団体の旗揚げ直後にはすべてのイベントがキャンセルになり、練習を積んでも披露する場がなかったといいます。
「どこのスポーツ団体もそうだと思いますが、うちは旗揚げ直後にコロナがやってきたので、かなり落ち込みました。人の集まるイベントはできないと言われ、予定していたリーグ戦もすべてキャンセルです」
アル・プラザ長浜でのイベントが再開できたのは2023年のこと。今回が再開してから2回目の開催です。
滋賀県で唯一のプロレス団体としてのこだわり
ご当地プロレス団体は全国にいくつもありますが、滋賀県内にあるのは長浜プロレスのみです。しかも、ほとんどのメンバーが長浜市内に住んでいるため、地元愛の深さを感じます。
メンバーの名前を見ても、「ヒキヤマ」や「鯖ソーメン」「ブラックバス」など長浜や滋賀県の名産にまつわるものばかり。ネーミングやマスクを見ているだけでも楽しめます。
登場時のパフォーマンスやそれぞれの技についてもご当地感が強く、客席からの笑いが絶えません。激しくぶつかり合う瞬間とゆるく楽しませるときのギャップが大きいのも、長浜プロレスの魅力の一つです。
滋賀県内での活動を続けたい
長浜プロレスは、滋賀県のローカルテレビ「びわ湖放送」でも取り上げられたことがあります。少しずつ認知され、今では他府県からも依頼を受けるようになりました。
「最近は他府県からもイベント開催の依頼はあるのですが、基本的に滋賀県でやっていきたいと思っています。5月に岐阜でのイベントは決まっているのですが、そのほかは滋賀県内のみです」
まずは滋賀県内で多くの人に知ってもらいたいとのこと。エル・ヒキヤマさんをはじめとする長浜プロレスのメンバーたちは、地元愛にあふれた勇敢な戦士でした。
生で見て雰囲気を味わってほしい
「長浜プロレスはYouTubeもやっておりますので、ぜひご覧ください。登録者数1,000人を目指しています」
前説の際に川瀬さんは、観客に向けて説明します。一方で、YouTubeチャンネルの存在を知っている人は少数でした。情報発信により、多くの人に認知されることを心から願います。
しかし、YouTubeの発信では、どうしても生の雰囲気を伝えきれません。
YouTubeと実際に生で見るのとではまるで別物です。実際のスピード感や迫力のあるマットの音を体験すると、YouTube動画の雰囲気には物足りなさすら感じてしまいます。
「プロレスを見ると元気が出ますよね。やっぱり生で見て感じて、この雰囲気を味わってほしいです」
エル・ヒキヤマさんが熱く語るとおり、多くの観客が元気をもらっていました。とくに子どもたちにとって、大きなレスラーは本物のヒーローです。
長浜プロレスは全員ノーギャラ
「副業というより、完全に趣味ですね」
エル・ヒキヤマさんと川瀬さんは、声を揃えて言います。長浜プロレスのメンバーは、全員がノーギャラでの活動です。
「今回の『1.5平和堂アルプラザ大会』では、『アル・プラザ長浜』側からの補助はありますが、すべて団体の活動資金に充てています」
また、Tシャツやタオルなどのグッズ販売による利益や寄付金なども、長浜プロレスの貴重な活動資金です。現在使用しているリングは、エル・ヒキヤマさんが持ち出しで山形県の業者から購入したこともあり、その費用を少しずつ返してもらっているとのこと。
今後は若手の育成と新人発掘に力を入れていきたい
イベントのない週末には、基礎練習や実戦練習に時間を充てているといいます。怪我予防のためにも、基礎練習が重要です。エル・ヒキヤマさんも取材当日は故障中だったため、ロープから飛ぶのをためらったと語ってくれました。
「じつは、正規軍として出場していた私を含む3人は全員が50代です。どうしても故障も増えるので、今後は若手の育成と新人発掘に力を入れていきたいと考えています」
若手の育成に関しては、エル・ヒキヤマさんの考えたストーリーもあるようです。その辺りについては詳しく聞けませんでしたが、今後の展開に期待が膨らみます。
「立ち上げ当初は取材依頼も多く、一気にメンバーが増えたのですが、最近は落ち着いてしまいました。ですので、新人発掘が長浜プロレスの大きな課題です」と川瀬さんは言います。
長浜プロレスの詳細情報
長浜プロレスのイベント情報の確認やご依頼は以下のSNSをご確認ください。
◆ X(旧Twitter):長浜プロレス【公式】
◆ Instagram:nagahama.pw
◆ YouTube:長浜プロレス
なお、InstagramのDMは使用していないとのことです。連絡の際にはXまたはInstagramのプロフィールに記載されているメールアドレスに送信してください。