浮世絵のなかに自分が入っていくような不思議な感覚を体験
パリには「アトリエ・デ・リュミエール(Atelier des Lumières)」というプロジェクションマッピングを駆使した人気のアトラクションがあります。製鉄所の跡地、約3,000平方メートルの大空間の中で、モネやゴッホの作品たちが流れるように動き、目の前の風景が次々と変わってゆく、1時間のスペクタクルです。2018年にスタートし、オープン当初はチケットがとれないほど大盛況でした。
初めてその空間に入ったときの異空間に驚愕しました。絵画のなかに自分が入っていくような没入感を体感したのです。
それを浮世絵で体験できるとは!
北斎の波には期待大でした。どれだけ迫力ある海が生まれるのか。それだけでも貴重な機会と思い、天王洲アイル駅から徒歩4分の会場、寺田倉庫に向かいました。
葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川国貞など日本人なら誰もが一度は目にしたことがある浮世絵、約300点がデジタルアートとなって大画面の中で動くのです。
3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングなどで再現され、最先端のデジタル技術を駆使した浮世絵の新しい楽しみ方の提案です。
9つの映像空間で繰り広げられる圧巻の3D浮世絵
会場は、9つの映像空間で表現されます。まずは、「藍」と名付けられた部屋から始まります。
「ジャパンブルー」と呼ばれ、世界で絶賛される美しい藍色が空間いっぱいに広がります。浮世絵師たちが描いた海や波が映像技術で、目の前で暴れているように見えるのです。
ダイナミックな波の動きは、2次元の浮世絵からも十分伝わりますが、3次元で表現されると、波のうねりに自分が飲み込まれるように感じるほどリアルです。これこそ、今、流行りのイマーシブな感覚なのでしょう。歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」に描かれた平面的な鯨が立体的な3DCGで描かれ、迫力満点に動き回ります。
次の展示に進むと歌川広重と巡る「冨嶽三十六景」が広がります。葛飾北斎の描いた江戸の風景がポップに再現され、浮世絵師とともに旅をしているような高揚感に包まれます。
日本の美しい季節の移ろい、花鳥風月に魅了されていると、続いて現れるの圧巻の美人画。思わず、わーっと声を出してしまうくらいの艶やかさ。動く美人たちをさまざまな花々が彩ります。
なかごろの部屋に設けられるのは、遊び絵と戯画。実際に組み立てられた遊びの道具が並び、江戸の縁日を彷彿とさせる、触って楽しめる浮世絵の世界です。浮世絵の登場人物や猫や魚がゲームになっています。
そして、なんといってもハイライトは、パワフルな武者絵。はんなり美女から豪快武者への転換です。歌川国芳の「水滸伝シリーズ」など、エネルギーに満ちた勇者たちが動き回る大パノラマが展開されます。
日本人なら誰もが感動する立体の富士山の変貌
なかでも魅力的だったのが、日本人なら誰もが愛する富士山が立体になった優美な姿。四季の色を纏った富士が次々と色を変えていきます。北斎の赤富士をはじめ、富士山の放つ神々しさにあらためて心打たれる思いです。
こうして作品たちは、流れるように動き変化し、目の前の風景が次々と変わっていきます。
予想をはるかに超えたデジタルアートの世界に圧倒されるばかり。しかもオリジナルの和紙の質感なども細かく再現され、浮世絵の個性そのままに大画面が動いているビジュアルにはただただ驚愕するのみ。
動画を載せられないのが残念ですが、ぜひ、実際の空間に身を委ねて比類なき没入感を味わってみてください。
展覧会とのコラボイベントにも参加してみよう!
また、浮世絵に関するワークショップや食、宿泊とのコラボも企画されています。画材ラボ「PIGMENT TOKYO」では、浮世絵で用いられた「ベロ藍」を作り、彩色するイベントが100名限定で開催されます。
また、アートギャラリー「WHAT CAFE」では、浮世絵をモチーフにしたメニューも登場します。
オリジナルフォトスポットも設置されますので、浮世絵のなかに没入して写真を撮るのもお忘れなく。
動き出す浮世絵展
会場:寺田倉庫 G1ビル (天王洲アイル駅徒歩5分)
開催期間:2024年12月21日(土)〜 2025年3月31日(月)
<休館日>2024年12月31日(火)・2025年1月1日(水)のみ、その他期間中休館日なし
9:30 ~ 20:00(最終入場19:30)
料金 大人2,700円
子ども(4歳以上中学生以下)1,200円
学生(高・大・専門)1,900円
シニア(65歳以上)2,500円
*着物を着用して来場すると(着物・振袖・袴・浴衣など)当日チケット料金より100円引き
https://www.ukiyoeimmersiveart.com