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バックストーリー  |    2026.08.21

【埼玉県さいたま市】再開発が進む街で人と人をつなぐ。Be ACTO武蔵浦和マチノバが目指すコミュニティの形

JR武蔵浦和駅西口を出ると、高層マンションが立ち並ぶ景色が広がる。

都心へのアクセスが良く、駅前には商業施設や公共施設が集まる「武蔵浦和」
近年は再開発が進み、子育て世代を中心に多くの人が新たな暮らしを始めている街だ。

一方で、街に住む人が増えたからといって、人と人とのつながりまで自然に生まれるわけではない。
「隣に住んでいる人の顔を知らない」「地域と関わりたいけれど、きっかけがない」暮らしやすさの陰で、そんな声も少しずつ聞かれるようになったという。

その課題に向き合い、人と人、人と地域が出会うきっかけをつくる場所として、2024年6月に誕生したのが、Be ACTO武蔵浦和コミュニティスペース「マチノバ」だ。

今回話を伺ったのは、日々利用者と向き合いながら施設の運営に携わる柳川周さん。

マチノバは、どのような思いから生まれ、武蔵浦和でどんな役割を担おうとしているのか。
施設で生まれた出会いや変化を通して、人と街がつながる意味について話を聞いた。

「どんな場所になるのか」誰にも答えはなかった

マチノバ施設内の様子(画像提供:Be ACTO武蔵浦和マチノバ)

2024年6月のオープンに向けて準備が進むなか、運営側では、「夢中になれる街」というビジョンのもと、この場所が地域でどのような役割を果たしていくのか、何度も話し合いが重ねられていた。

目指す方向は決まっていたものの、「夢中になれる街」とはどんな街なのか、その実現に向けてマチノバはどのような役割を担えばよいのかについては、手探りだったという。

「夢中になれる街ってどんな街だろうと考えながら、一つひとつ形にしていきました。オープンしてから気づいたことや、驚いたことは本当にたくさんあります」

訪れた人の声を聞き、「ここで何ができるだろう」と一緒に考える。利用者の活動や出会いが重なるたびに、場所の役割も少しずつ広がっていく。

マチノバは、最初から完成されたコミュニティではなく、地域の人たちとともに形づくられてきた場所だった。

再開発が進む街で、見えてきた新たな地域課題

武蔵浦和駅周辺の街の様子(画像提供:Be ACTO武蔵浦和マチノバ)

武蔵浦和は、駅前に高層マンションが立ち並び、多くの子育て世帯が新たに暮らし始めている。一方で、駅から少し足を延ばせば、昔ながらの住宅街や畑の面影も今なお残っている。

「駅前を中心に、この10年から20年で急速に宅地化が進みました。建物だけではなく、住んでいる人も大きく変わっています」再開発によって街は姿を変え、暮らしの利便性は高まった。

その一方で、新しく移り住んだ人と、昔からこの街で暮らしてきた人が、自然に顔を合わせる機会は決して多くないという。「自治会も、新しい住民と昔からの住民が一緒になっているところばかりではありません」

また、同じマンションの中でも、住民同士のつながりが生まれにくいことがある。「理事会では顔を合わせても、お隣に住んでいる人を知らないという方もいらっしゃいます」

多くの人が行き交い、たくさんの人が暮らしている。それでも、地域との接点を持たないまま日々を過ごすことはできる。街に人が増えることと街の中につながりが育つことは、必ずしも同じではない。

だからこそ武蔵浦和には、人が出会い、地域に関わるための「最初のきっかけ」が必要なのだと、柳川さんは話す。

人と地域をゆるやかにつなぐ場所

武蔵浦和には、日々の生活に必要なものがそろっている。交通の便が良く、買い物や子育てもしやすい。新しく暮らし始める人にとって、大きな魅力を持つ街だ。

一方で、利便性だけでは、地域への愛着が自然に育つとは限らない。「昔から暮らしている方々には、それぞれ地域のコミュニティがあります。でも、新しくできたマンションには、地域とのつなぎ役がまだ多くありません」

新しく移り住んだ人と、昔から暮らす人を、無理に一つのコミュニティへ結びつける必要はない。
大切なのは、それぞれの暮らしや心地よい距離感を尊重しながら、必要なときに地域とつながれる選択肢があることだ。

誰かと少し話してみる。
気になるイベントをのぞいてみる。
自分の好きなことを、誰かと共有してみる。


そんな小さな行動を受け止める場所として生まれたのが、マチノバだった。
目指しているのは、その人なりのペースで街に関わり、ここで暮らすことに、小さな楽しみや愛着を見つけられる場所だ。

地域との関わりが、新たな視点につながる 

マチノバ施設内で交流する利用者の様子(画像提供:Be ACTO武蔵浦和マチノバ)

「マチノバでイベントを始める方の多くは、活動を始めたばかりなんです」

最初から地域活動の経験がある人ばかりではない。自分の好きなことや得意なことを生かしてみたい。誰かと一緒に、何かを始めてみたい。そんな思いを抱えながらも、どこから始めればよいのかわからず、マチノバを訪れる人も多いという。

イベントを企画し、スタッフや利用者と話し、試行錯誤を重ねる。その過程で、企画する人の視点にも少しずつ変化が生まれていく。

「武蔵浦和という街でやる意味は何だろう」
「この街だからこそ、喜んでもらえることは何だろう」

最初は自分のやりたいことから始まった企画が、活動を重ねるうちに、地域で暮らす人たちの姿を思い浮かべたものへと変わっていく。「自分はこの街と、どのように関わっていきたいのか」そう考えるようになる人も少なくないという。

変わっていくのは、イベントの主催者だけではない。当初は仕事をするために施設を利用していた人が、利用者同士やスタッフとの何気ない会話をきっかけに、少しずつ地域へ目を向けるようになることもある。

「最初は仕事をするだけだった方が、『今度、イベントに行ってみます』と声を掛けてくださることもあります」

地域とのつながりは、特別な出来事から生まれるものではない。何気ない会話や、「また来ます」という一言。その小さな積み重ねが、人と街との距離を少しずつ縮めていく。

マチノバでは今日も、一人ひとりのペースで、地域との新しい接点が生まれている。

一人の「やってみたい」が、新たなつながりを生む 

「遊びのひろば」の様子(画像提供:Be ACTO武蔵浦和マチノバ)

マチノバには、「遊びのひろば」という場所がある。

普段は子どもたちが遊んだり、親子や地域の人たちがそれぞれの時間を過ごしたりする、誰もが気軽に立ち寄れる空間だ。さらに、この場所では日々の交流だけでなく、地域を巻き込んださまざまなイベントも開かれている。

ハロウィンイベントでは、広場いっぱいに仮装した子どもたちや家族が集まり、それぞれがイベントを楽しんでいた。ふと見上げると、マンションのベランダからショーを眺め、音楽に合わせて体を揺らす子どもたちの姿もあったという。その光景は、地域全体がゆるやかにつながっていることを感じさせた。

また、「むさしフェス」には2日間で延べ1万5,000人以上が来場。子どもたちが元気に走り回り、保護者同士が立ち話を交わす。地域で活動する人たちと来場者が自然に会話を始めるなど、普段は交わることのなかった人たちが同じ時間を共有していた。

しかし、こうしたイベントは最初から完成されたものではなかった。

参加者の多くは当日が初対面。最初から役割が決まっていたわけではなく、「どうすれば訪れた人に楽しんでもらえるだろう」と互いにアイデアを出し合いながら、一つのイベントを形にしていった。

それぞれが持つ経験や得意なことを持ち寄ることで、一人では思いつかなかった企画が生まれる。イベント後もLINEグループで交流が続き、新しい企画が立ち上がるたびに利用者同士が自然と声を掛け合うようになったという。

「一人の『やってみたい』が、誰かの『一緒にやりたい』につながっていく」

大切なのは、その場で誰かと出会い、「また来たい」「今度は自分も何かやってみたい」と思えるきっかけが生まれること。

マチノバが育んでいるのはイベントそのものではなく、人と人がゆるやかにつながり、その輪が地域へと広がっていく関係なのだ。

街にある魅力を見つけ、つないでいく

利用者同士がつながりを育む様子(画像提供:Be ACTO武蔵浦和マチノバ)

街には、すでに多くの人や文化、活動が存在している。面白いことに挑戦している人。自分の得意なことを誰かに伝えたい人。地域のために何かできないかと考えている人。

しかし、互いの存在を知らなかったり、出会うきっかけがなかったりすることで、一つひとつの活動が、それぞれ別の場所にとどまってしまうこともある。

柳川さんは、「マチノバでの仕事について考えるなかで、街に点在する人や活動を見つけ、つないでいくことの大切さを感じている」という。

新しいものを一から生み出すだけではなく、すでに街の中にある魅力に光を当てる。異なる活動をしてきた人同士が出会い、それぞれの経験やアイデアを持ち寄ることで、今までになかった動きが生まれる。

「遊びのひろば」で利用者同士の輪が広がっていったように、一つの出会いが、次の活動や新しい関係につながることもある。

人口減少や少子高齢化など、地域を取り巻く環境が変化するなかで、自分の暮らす街とどのように関わり、次の世代へつないでいくのかを考える機会は、これからさらに増えていくだろう。

けれど、その答えを一人で見つける必要はない。

誰かと話し、それぞれの思いや得意なことを重ねながら、自分たちにできることを少しずつ形にしていく。マチノバは、そんな動きが生まれるための余白を、街の中につくろうとしている。

最初の一歩が街との出会いになる

柳川周さん

取材の最後、「地域と関わりたいと思いながらも、一歩を踏み出せない人へ伝えたいことはありますか」と尋ねた。

柳川さんは迷うことなく、笑顔でこう答えた。「まずは、マチノバに来てみてください!」

地域と関わると聞くと、何か特別な活動を始めたり、大きな責任を担ったりすることを想像する人もいるかもしれない。けれど、最初から明確な目標や特別な準備は必要ないという。

「ここにいるメンバーと気軽に話しながら、『こんなことをやってみたい』という思いを、一緒に形にしていけたらと思っています」

イベントに参加してみる。施設を利用してみる。スタッフや近くにいる人と話してみる。その何気ない一歩が、街との新しい関わりの始まりになる。

誰かの「やってみたい」を、別の誰かが受け止める。そこへ新しい人が加わり、また次の挑戦や出会いが生まれていく。

マチノバが目指しているのは、誰かがつくり上げる場所ではない。

訪れた一人ひとりの「やってみたい」が重なり合い、人と人、人と地域をゆるやかにつなぎながら、街とともに育ち続ける場所だった。

施設概要

所在地:埼玉県さいたま市南区沼影1-8-1 プラウドシティ武蔵浦和ステーションアリーナ3階
ホームページ:https://be-acto-musashiurawa.net/

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この記事を書いた人

金子 真怜

栃木県出身、関東圏在住。 服飾大学卒業後、アパレル業界を経て、ファッション誌やWEBメディアで企画・執筆・編集に携わる。地域に根ざした人にフォーカスし、その土地にしかない魅力やバックストーリーを現場の空気感ごとリアルにお届けします。

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