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教育  |    2026.01.03

学校以外の居場所が中高生の自己肯定感を育む?!尾道らしい形で実現したユースセンターズ オノミチの活動

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(おのみち10代まんなか会議)

中学生・高校生のみなさん、家と学校以外の居場所はありますか。

もう大人になったあなたは、あの頃の居場所を思い出せますか。

10代を中心とする「ユース(若者)」の居場所をつくる団体が、広島県尾道市にあります。

NPO法人「むかいしまseeds」が運営する、ユースセンターズ オノミチ(以下、YCO)です。

YCOの活動は、大きく分けて以下の3つ。

  • 居場所をつくる
  • テーブルをつくる
  • ステージをつくる

「自分の居場所に出会って、自分らしい生き方を考えるきっかけになれば」そう話すのは、むかいしまseedsの理事でYCOを担当する田中さん。

詳しい活動内容をお聞きしました。

ユースにとっての「居場所」とは

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(拠点)

ユースが気軽に行ける場所といえば、ショッピングモールやフードコート、プリクラが撮れるゲームセンターなどが一般的です。でも尾道のまちには、そういうものがありません」と、田中さんはいいます。

「塾や習いごとに行く子もいますが、それ以外は家と学校の往復だけなんですよね。もし学校が楽しくなかったら、すごく追い込まれてしまいます。

でも尾道には、気軽に来ていいよ、話そうよ、という大人がたくさんいるんです。そこをつなぎたいと思いました」

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(拠点)

尾道には以前から、地域の居場所をつくるカフェや古民家などがいくつもありました。この地に魅力を感じ、市外から移住してきた人を中心につくられるコミュニティです。

それらを運営する人たちに話を持ちかけると「ユースも気軽にどうぞ」と快諾してくれました。YCOはその場所を「拠点」と呼び、ユースに紹介しています。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ

拠点はどれも、小さくて個性的な店やスペースです」田中さんは笑顔で話します。

「でも、温かくてオープンな場所ばかりですよ。長居してもそっとしておいてくれたり、人との出会いや会話を商売以上に楽しむ店主だったり。

ユースは好きなときに都合のいい拠点へ行き、友だちをつくったり大人と話したりしています」

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(拠点)

自身も県外からの移住者である田中さん。尾道では、多くの「自分らしく生きる人」に出会ったといいます。

好きなことを極めて生きる人や、自由に伸び伸びと暮らす人。週1回尾道を訪れるのを楽しみに生きている、という人も。

「学校ではどうしても、テストをがんばって成績を上げ、受験して就職がゴール、という選択肢がメインになってしまいます。

でも、生きる道はそれだけではありません。ユースの個性をそのまま伸ばして生きる正解もあるんです。
拠点でいろいろなロールモデルに出会い、自分の道を見つけてほしい。そう願っています」

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(拠点)

「こんな生き方も楽しそう――そんな出会いがあれば、自分の大事にしたいことや、素直な気持ちを肯定できるかも。そんな自己肯定感を味わってほしいです」

自分自身を認めることができると、次はきっと他者を受け入れられるようになります。そして、これからの人生に不安より楽しみを抱けるのではないでしょうか。

そんなユースを増やしたいと、YCOは考えています。

話したいことを話せる場

YCOの2つめの活動は「テーブルをつくること」。

「おのみち10代まんなか会議」「すいようしょくどう」を定期的に開催し、対話・交流の場を用意します。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(おのみち10代まんなか会議)

「おのみち10代まんなか会議」は、2ヵ月に1度おこなわれています。

「会議」と付いていますが、決して堅苦しい場ではありません。

好きなアニメの情報、バイトに関する雑談、学校生活や進路の相談など、自由なテーマでおしゃべりします。話す気分でなければ、ゲームをするテーブルをつくってもいいそうです。

ここで話した「やりたいこと」の相談が、形になる場合も。「たき火をしてみたい」「お菓子とBGMのある自習室がほしい」そんな提案は、のちに実現しました。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(おのみち10代まんなか会議)

ユースの話を聞きたい」という大人も歓迎しています。大人と話したいユースも多いそうです。でも、一方的な大人目線のアドバイスや好奇心には注意していただくよう、お願いしています。

あくまでユースを「まんなか」に置いて、彼らが話したいことを受け止めてほしいと、田中さんは付け加えます。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(すいようしょくどう)

筆者は「すいようしょくどう」に参加してみました。

毎月1回、拠点のどこかでおこなわれる「すいようしょくどう」。水曜は、多くの学校が部活休養日に設定している曜日です。

大学生までの子どもは無料、大人は参加費500円。みんなで軽食を囲み交流します。

参加したユースたちは、用意された唐揚げや豚汁を見て「うまそー!」と次々に声を上げました。「給食くらいおいしい」と、笑い合う場面も。

はじめはスタッフが取り仕切り、順番に自己紹介や近況を話します。

今回はユース同士の顔見知りが多いこともあり、頻繁に話があちこちに広がりました。久しぶりに参加した大学生の近況報告にも、みんな興味津々です。

最近行った旅行、学校行事、プロ野球などの話題でひとしきり盛り上がり「卒業後にやりたいこと」「音楽フェスをしたい」そんな話も出ました。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(すいようしょくどう)

筆者はユースたちに「YCOに参加する理由」を聞いてみました。

きっかけはさまざまですが「試しに参加してみたら居心地が良かった」と感じるユースが多いようです。

「学校では話しにくいことも、ここでは話せる」「知らない人と話すのが楽しいと気付いた」そんな気持ちが、継続参加につながっています。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(すいようしょくどう)

あるユースの話が印象的でした。

彼は高校入学後、思い描いていたのと違う学校生活に、やる気を無くしていました。

そんな中、YCOのイベントで自分を変えてくれる大人に出会ったのです。その人と話すと、やりたいことをかなえる未来が見えました。

彼の中の幸せの定義が変わり、今は「お金よりも価値を創造する仕事」の実現を目指して奮闘しています。

それをYCOや学校の仲間、大人たちが応援しているそうです。

思いを形にする

さらにYCOは、ユースの「やりたいこと」を形にするサポートをします。

3つめの活動「ステージをつくる」です。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(2025年開催「まちの駅 るりとまつり」)

たとえば「カフェをしたい」「ドーナツを売りたい」「つくった作品を売ってみたい」など。


「やりたいことはあるけど、その方法やはじめの一歩がわからない」そんなユースはたくさんいると、田中さんはいいます。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(2024年尾道青年会議所主催イベント)

自主企画のイベントを開催したり、他団体が主催するイベントにブース出店したりして、ユースのやってみたいことを形にしてきました。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(2024年夏休み小学生宿題教室)

学校だけじゃない、勉強だけじゃない、思いが形になると「今」が楽しくなり、自分を好きになれる。

大人も共感できることではないでしょうか。

不登校でも、そうでなくても大切な交流の場

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(スタッフ)

YCOは2022年5月から3年間、ユースセンター起業塾から助成金を受けました。運営団体であるむかいしまseedsのホームページに、活動報告書が載っています。

この助成金で活動する団体は全国に20カ所以上あり、10代のための居場所「ユースセンター」をそれぞれの地域で運営しています。

田中さんによると「複数の拠点を持つスタイルは、尾道だけではないか」とのこと。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(10代まんなか会議)

「ユースセンター」はどこも、ユースが集まりやすい立地にある広めのスペースに設置されています。その場所で、交流したりイベントを開催したりするのです。

しかし尾道は交通の便が良くなく、広さの点でも適した場所がありません。そこを逆手に取り「ユースセンター」ではなく、複数の拠点を有する「ユースセンターズ」として活動したのです。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(2024年尾道青年会議所主催イベント)

ユースセンターの運営ではなく、拠点やイベントにユースをつなぐのが主な業務。YCOは人や場、機会をつないでユースを応援しています。

その珍しい取り組みを見るために、全国から多くの団体が視察に訪れるそうです。

「尾道のこの形は独特でまれなスタイルではないかな」と、田中さんはいいます。

「むかいしまseeds」の理事でありYCO担当の田中さん

「尾道は港まち・商人のまちならではの、オープンで人懐っこい地域性があります。景色や自然の美しさにもひかれ、移住してくる人が後を絶ちません。

それとともに空き家が次々とカフェやゲストハウスなどに変わり、オリジナリティのある暮らしを後押ししてきました」

そうして、新旧入り混じった交流や助け合いの文化を持つまちができあがったのです。

「尾道は恵まれていると感じます」と、田中さんはうれしそうに目を細めました。

しかし、多くのユースはそれを知らないまま「尾道って何も無いよね」と、進学のタイミングで次々と去って行きます。

それがとても寂しいと、田中さんは顔を曇らせました。

画像提供:ユースセンターズ オノミチ(2024年尾道青年会議所主催イベント)

「自分の居場所があった」「素敵な大人たちに会えた」「友だちと思い出をつくれた」ユースがそんな経験をしてくれたら「いち尾道ファン」としてうれしいと、田中さんはいいます。

「スタッフの子どもが不登校になったことが、YCOの活動を始めたきっかけでした。

学校に行かなくても話す機会や出会う場所があり、若い人がありのままでいられる。そんなまちを目指しています」

ユースとまちをつなぐYCOの活動の先に、若者が生き生きと輝く未来が見えました。

そんな進化を遂げた尾道はきっと、さらに人々をひき付けるのでしょう。

ユースセンターズ オノミチ

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この記事を書いた人

まついみゆき

広島県の尾道在住。2児の母。薬剤師。取材記事と医療記事を書いています。尾道育ちで、関東に10年在住経験あり。尾道外の人からの視点も大事にしながら、地域情報を書いていきます。好きなもの:英会話、ピアノ、東洋医学、ミステリー小説、どうぶつ占い、数秘、日本神話、骨格診断

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