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フード  |    2026.02.28

ほほえみが生まれるおいしさ|北浦和「穂々えみ」が届けるお米パンのある暮らし

昔ながらの佇まいを残す北浦和の商店街。

その一角にあるコミュニティースペース&シェアキッチン「北浦和イッカイ」にお米パンの店「穂々えみ」は出店します。

開店と同時に、人が途切れることなくやってくるほどの盛況ぶり。お米パンのおいしさにファンが繰り返し足を運びます。

2024年5月にオープンした「穂々えみ」。店主・岡崎永栄(おかざきひさえ)さんが同店を始めるまでの歩みと、お米パンづくりに込めた想いを伺いました。

「家族一緒においしさを分かちあいたい」その想いから始まったお米パンづくり

フルタイムの仕事から離れ、育児休暇中は子育てに奮闘する日々を送っていた岡崎さん。それは充実していたものだったけれど、子育てに関して「悩み」に直面することもあったのだそうです。

「娘が小麦アレルギーであることがわかって、市販のパンを買うことができなかったんです」

「当時、米粉パンを購入できる店は限られていて、米粉パンを買うことは送料もかかりました。そのため頻繁に買いづらくなり、子どもにとってパンを食べることが『特別なこと』になってしまって。それならば、自分で作ってみようと思い立ったのが、お米パンづくりのスタートでした」

岡崎さんが手作りしたパンを、お子さんがおいしそうに食べてくれる。家族みんなでおいしさを分かち合える。それが、何より嬉しかったといいます。

知れば知るほど広がっていった、お米パンの世界

米粉パンを食べて笑顔になる子どもの顔が嬉しくて嬉しくて、必要に迫られて始めたお米パンづくりだったけれど、少しずつその世界に魅了されていったという岡崎さん。

「他にはどんなパンが作れるのだろう?」
「どんな方法があるのだろう?」

と、次々と知りたいことばかりになったのだそうです。

「日を追うごとにパンづくりが面白くなっていって、無我夢中になって毎日のようにお米パンを作っていました。夜遅くまで仕込みをしたりして。とても忙しい日々でしたが、それがとても楽しかったんですよね」

お米パンの世界にみるみる惹かれていった岡崎さんは、その世界をさらに広げていきます。

子どもに「おかえり」を言える暮らしをしたい

お米パンづくりを極めたくて本格的に学びに行き、新たな扉を次々と開いていった岡崎さん。自らの経験から「お米パンを必要としている人がいるのではないだろうか…?」と考え始めます。仕事を辞めて、新しいことにチャレンジするのはとてもハードルの高いこと。それでも、「仕事として挑戦してみたい」と考えたのだそうです。

それに加えてもうひとつ思うことがありました。

「子どもに『おかえり』を言える暮らしがしたいなと。大袈裟かもしれませんけど、人生が終わるときに『もっと子育てをしたかったな』と後悔したくないと思って。子どもの成長を見守ることができる時間は本当にわずか。その時をできるだけ一緒に過ごしたいと思いました」

長男が小学1年生になるタイミングで15年勤めた仕事を辞めることにした岡崎さん。お米パンを仕事とする第一歩を踏み出そうと決意したのでした。

その時、出店しようと決めた場所は北浦和イッカイ。そこは、学生時代から「見沼たんぼ福祉農園」で共に活動する農園仲間の猪瀬早紀(いのせ さき)さんが創業したコミュニティースペース&シェアキッチンです。

「すべてのタイミングがご縁だと思えて。よし、やってみようと」

こうして、開業することを決意したのでした。

試作の日々で生まれた「ほほえみのお米パン」の数々

出店日に販売するパンは5種類、およそ150個ほど。店頭に並ぶおいしそうなお米パンの数々に思わず見惚れます。

試行錯誤を重ねながら、店頭で提供するパンの種類が決まってきたという岡崎さん。その中でもベーグルやシナモンロールは、オープン当時から作り続けてきたものでした。

生米あんぱん、生米カンパーニュ、米粉ベーグル、米粉シナモンロール、米粉のラベンダースコーンが並ぶ

「最初に自分で作ってみて、感動したのがベーグルです。映画の世界観に憧れて作り始めた米粉シナモンロールなど、自分が『おいしい!』『元気になれる!』と感じたものを、お客様に味わっていただきたいなと思っています」

「穂々えみ」には、米粉パンと生米パンの2種類が並びます。

お米パンは米粉から作られたパン、生米パンはお米そのものから作られたパンです。食感や風味はそれぞれ異なるといいます。

「生米パンは、 季節によってヨモギやお芋などを練り込んで。 その季節に味わえるものを取り入れやすいのが特徴です。生米パンは素材そのものを活かす魅力があると思っています」

米粉パンも生米パンも、それぞれのおいしさがあるのだそう。2種類の味を食べ比べてみてほしいと岡崎さんは話します。

家族みんなで支える「穂々えみ」出店日

1月下旬、「穂々えみ」開店前に北浦和イッカイを訪れると、岡崎一家が開店準備を始めたところでした。

岡崎さんが前日から仕込み、店内で焼き上げたパンの数々がずらりと店内に並びます。

オープン当時から一家総出で店に立つ岡崎さんご家族。岡崎さんの旦那様は「自然と家族で手伝う形になりました」と話します。

ふたりのお子さんも看板出しや開店準備など、それぞれの役割を家族全員で担います。

「穂々えみ」出店日には、お子さんの保育園や幼稚園の先生が訪れることもあるそうです。
「子どもたちが友達や先生に『ママ、パン屋さんなんだよ』と、うれしそうに話している姿を見ると、やっぱりうれしいですね」

家族でお店を続けていくことも、「穂々えみ」にとって大切なことの一部になっています。

「穂々えみ」のイメージさながら|エプロンはたんぽぽの色

家族が着用しているそれぞれ色合いが異なるエプロン。
こちらは、さいたま市の草木染め工房「優舎(やさしや)」によるものです。

岡崎さんが着用しているエプロンはやさしい色合いの黄色。

「私のエプロンはたんぽぽで染めています。エプロンを作ろうと思い立った時、農園つながりでご縁のある優舎さんにお願いしたいと考えました。この色は、農園で摘んだたんぽぽを使用して染められたものです。家族のエプロンも同じく草木染めです。日々色が変化していく様も気に入っています」

たんぽぽ色のエプロンは「穂々えみ」のイメージさながら。温かでやさしい雰囲気が感じられます。

出店もレッスンも、どちらも大切なもの

岡崎さんは出店に加え、北浦和イッカイなどでお米パンのレッスンを行っています。

「お米パンのことを、もっと知りたい!作ってみたい!という方達のためにレッスンを続けていきたいなと考えています。店頭での販売もレッスンも、それぞれの楽しさとやりがいがありますし、出会う人もそれぞれ違っていて。どちらも欠かすことはできません」

店頭販売もレッスンも、これまでに出会えなかった方たちとご縁がつながったこと。店頭販売やレッスンを通して「喜んでくれる人」がいること。

「小麦が食べられない方、アレルギー持ちのお子さんがいる方、小麦をひかえている方…。お米パンを必要とされている方に喜んでいただき『ほほえみ』につながることが嬉しいです。それが嬉しくてここまで続けられています」

お米パン「穂々えみ」の屋号に込められた岡崎さんの想い。
「穂々えみ」の「穂」は娘さんの名前の一部である「穂」と稲穂の「穂」から。稲穂の恵みで焼くパンで「ほほえみ」が生まれますようにとの想い。その想いは周りの人たちへ広がっているようです。

米粉パン・生米パンを通して「ストーリー」を伝えたい

店頭に並ぶお米パンの中には、ハーブが使用される商品があります。

「米粉のラベンダースコーンは、地元のハーブ農家さんに出会わなければ生まれなかった商品です。季節の生米パンも地元の製餡会社さんや地元農家さんのおかげで生まれています。そのような『お米パンが持つストーリー』を丸ごとお客様へ伝えていきたいと思っています」

また、生米パンを新しい日本の食文化のひとつとして、子どもたちにも伝えていきたいと話す岡崎さん。

「夏休みなどのタイミングで、お子さん向けのレッスンもできたらいいなと思っています。パンづくりの楽しさとお米の新しい魅力を、次の世代にもつないでいけたらと」

「次の世代の子どもたちが成長し、いつか世界へ羽ばたいたとき、『日本にはこんなパンがある』と紹介できるようなものになったらうれしいです」

さらに、生米パンは海外でも可能性が広がるのではないかと感じているそうです。

「現地の食材と掛け合わせながら、新しい形でお米パンが広がっていく可能性もあると思っています。『お米でここまでできる』ということを、いつか世界にも伝えていけたら。まだ遠い未来の話かもしれませんがそんな夢を持っています」

お米パンについて話す岡崎さんは実に明るく楽しげ。その思いは販売されるお米パンにも表れています。
お子さんのアレルギーがきっかけで飛び込んだお米パンづくり。その世界はこれまで以上に広がっていきそうです。

お店の情報

お米パン 穂々えみ
公式サイト
Instagram


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この記事を書いた人

はる

さいたま市在住の取材ライター。地元民だからこそ知り得る、個人店やマルシェ等のイベントをこれまでに200ヶ所以上訪れる。地元民でも意外と知らない「ヒト・モノ・スポット」をお届けします。趣味は「ひとり呑み」「カフェ巡り」お酒とコーヒーが私をこよなく幸せにしてくれます。

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