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人  |    2026.03.15

店舗を持たない花屋 木胡音(もこね)の花々から伝わる「やさしさ」の理由【後編】

店舗を持たない花屋 木胡音(もこね)を主宰する容子さんが作り出す、ブーケやアレンジメントそしてワークショップの雰囲気。それは、包み込まれるような「やさしさ」に溢れています。そのやさしさの理由をさらに知りたくて、引き続き容子さんへインタビューを行いました。

前編はこちら

店舗を持たない花屋 木胡音(もこね)の花々から伝わる「やさしさ」の理由【前編】

私が届けたい「花と体験」

経験を通して見つけたワークショップの在り方

「フラワースクールへ通いながら、多くのワークショップにも参加しました。それぞれ特徴もやり方も本当に違っていて、どれが自分に合うのかなって考えながら、あちこち行きましたね。素敵な作家さんを見つけると、実際に行ってみたりオンラインで受けたりもして。本当に、ひもの縛り方ひとつとっても全然違うんです。『こんなに違うんだ!』っていうのがすごく勉強になりました」

「その中で、『自分はこのやり方が好きだな』っていうのはもちろんあるんですけど、それだけじゃなくて、『やる人にとって楽なのはどっちだろう?』って考えるようになりました。一緒に作る人がやりやすい方法とか、どうすれば簡潔に終われるかとか、限られた時間の中でどう段取りすればいいか、そういうことも考えながら学んでいました」

現在、ミモザ、紫陽花、スモークツリーなど季節感を存分に味わうことができるワークショップを開催する容子さん。ワークショップの参加者はまず、その花材の多さに驚きます。

作るからには安心して参加してほしいんですよね。『花材がなくなったらどうしよう』『失敗したらどうしよう』って思わずにできる方がいいなって…。人によって作るスピードも違う。だからワークショップの設計はトライアンドエラーを繰り返しながら、改善していく。そんな感じです。きっと、『これで大丈夫』なんて思うことはないと思います…笑」

参加者がそれぞれ作り上げた作品を見て、その度に嬉しい気持ちが溢れるという容子さん。人に寄り添い、心ゆくまで作ることを楽しんでもらいたい。そんな容子さんの思いがワークショップに参加する人たちを笑顔にさせるのでしょう。

アレンジメントから伝わる「やさしさ」の源

容子さんが作り出すアレンジメントにも、その「思い」が表れています。

仕事上でお付き合いのある容子さんの知人は、容子さんの作り出す花から感じることがあるのだと話します。

木胡音さんのアレンジメントに心から惹かれます。ひとりで作っているのに、何人かで手がけているように、タイプの異なる飾り方をされていて…。私もアレンジをお願いしたことがあるんですが、頼む人の想いや「こうしたい」という思いに寄り添い、花材を全部変えているところに感銘を受けます。 時々、アレンジの依頼主が分かることがあります。そのアレンジは、依頼した人のイメージにぴったり合っているのが実に印象的なんです。緑のイメージの人には緑を中心に入れていたり、紫のイメージの方には紫を多く使っていたりして…。表現の幅の広さを感じます。 生け方も、整った雰囲気もあれば、投げ入れみたいに自然な雰囲気もあって、本当にいろんな表現の仕方ができる方なんだなと。 プロとして仕事をしている今でも、ワークショップで先生から学び続けているところも本当に研究熱心なのだなと感心してしまいます。

多くのアレンジメントは作り手によって個性やスタイルが異なることがあります。フローリストの持つ「個性」は魅力的なことです。しかし、容子さんのアレンジメントの根底にあるのは「花を贈る人の思いや願い」

どなたへの贈り物なのか
どんな思いで、その花を贈るのか
その人は、どんな花が好きなのか
何色が好きなのか

「できる限り、その人に寄り添えるようなお花が作れればと。依頼する方から『全てお任せします』と言われたら、すごく想像して、想像して、想像して、アレンジメントを作ることにしています」 

依頼する人の思いに、できる限り寄り添い作り上げるからこそ、アレンジメントごとに表情が変わる。その人の思いの数だけ、アレンジメントがあるのだと容子さんの作品から伝わってきます。

「人を想う」気持ちが、作り出した花々から「やさしさ」となって広がっていくのです。

花を職業にした私だからこそ叶えたい「夢」

花を仕事にする私の「原点」を忘れない

容子さんには「花」にまつわる、わすれられない思い出があります。

「子どもが小さい頃、あれは2年生ぐらいだったかな。近所のお花屋さんに行ったんですね。母の日に花を贈ろうと500円だけ握りしめて。 帰ってきた子どもが、『これ、母の日の』と言って私へ渡してくれて。見てみると、そこにはいっぱいのお花が!絶対に500円では買えないようなもので。慌ててお花屋さんに駆け込んで、訊いてみたら、『500円持ってきたから、できるだけのことはやったよ』と…。もう思い出すだけでも泣きそう。それが本当に嬉しくて。 だから、私はそういうお花屋さんでありたいなって思うようになったんです」

母を思う小さな子にとことん寄り添うお花屋さんの真心に触れた経験は、容子さんの花屋としての原点に。

将来、花屋とカフェを併設した「誰でも気軽に立ち寄れるスペース」を作りたいのだとご自身の夢を語る容子さん。

「店を覗いたら誰かしらいて、手を振ってくれるとか、学校帰りの子がちょっと店を覗いてみるとか、私の花屋がそういう場所だったらいいなって思ったりして。 そういう場所に最終的には辿り着いたら嬉しいなと。
私自身も、ずっと長く花屋をするためには今のようにあちこち動き回るのではなく、ひとつの場所で腰を据えてできたらと思っていて。そう、花屋を長くやりたいんですよね」

子育てを終え、「もう一度私のやりたいことを」と、一念発起して始めた店舗を持たない花屋「木胡音」。容子さんの思いは、やさしさとなり人の心に沁み渡っています。

店舗情報

木胡音(もこね)
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この記事を書いた人

はる

さいたま市在住の取材ライター。地元民だからこそ知り得る、個人店やマルシェ等のイベントをこれまでに200ヶ所以上訪れる。地元民でも意外と知らない「ヒト・モノ・スポット」をお届けします。趣味は「ひとり呑み」「カフェ巡り」お酒とコーヒーが私をこよなく幸せにしてくれます。

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