南海高野線「紀伊清水駅」を降りて徒歩5分。うだるような炎天下のなかまっすぐ歩いていると、鮮やかなのれんのかかった食事処を見つけました。


食事居酒屋「柿善」。和歌山県橋本市のご当地グルメ「はしもとオムレツ」認定店のひとつです。今回、店内のお品書きには載っていない「裏メニュー」のオムレツがあると知り、事前にお電話をして伺いました。
鮮やかな橙色の暖簾をくぐり、キンと冷えた烏龍茶をオーダー。しばらくすると、ほかほかの餡に浸かったオムレツ「海老の梅肉あんかけオムレツ(¥600)」が運ばれてきました。

はしもとオムレツには、プロジェクトが始まった2016年から参加している柿善。2016年に加入した店舗のなかでは最後のほうのエントリーでした。
店主の中井太善さんは、出先で食べた美味しい献立を、自分流にアレンジするのが大好き。「当店ならではを考え抜きたくて、たまごメニューをだいぶ食べ比べましたよ」と笑います。

中学卒業後に進学した料理学校を出て以来、和食歴50年以上の中井さん。「もともと和食からキャリアが始まっていますから、オムレツづくりの塩梅は苦労しましたよ」と振り返る当時には、どのような軌跡があったのでしょうか。
他では見ないあんかけオムレツ。じんわり、さっぱり頂ける一皿には、和食ならではの発想がヒントに
柿善で提供するオムレツは、うどんだしをベースとした餡に、オムレツが浸っているという独自のスタイル。餡をひとくちいただくと、だしの効いたやさしい味にほっと心がゆるみます。

オムレツの味付けは、醤油をほんの少し垂らすのみとシンプル。ミルクなどは使っておらず、たまごの素朴な味わいをまっすぐ感じられます。
オムレツは、あらかじめ半熟状態で作ったあとに餡をかけて完成。後からじっくりたまごに熱が通っていくため、餡に浸っているもののゆるくなく、オムレツのかたちがしっかりと保たれています。
「作ったときから固めのオムレツにしてしまうと、餡をかけたあとにパサパサになってしまうんです」と、熟考の跡が伺えます。

柿善のオムレツは、たまごのうえから餡をかけるという他では見ないスタイル。市内の特産品を用いたり、ソースで工夫したり……あれやこれやと案を考えるも、その多くはすでに他の認定店で取り入れられていました。
「他ではやっていない、うち(柿善)ならではのオムレツを提供したい」ヒントになったのは、和食からキャリアを歩みだした中井さんならではの発想「あんかけ」でした。
揚げ出し豆腐やうどんなど、多くのメニューに用いられている餡。これを「オムレツに応用したらええんとちゃうか」と中井さんはひらめきます。そこに、紀州の梅と水菜、海老を添え、色鮮やかな一品が完成しました。

オムレツにソースをかけるお店はあれど、餡と掛け合わせる例はなかなか見かけません。和食とともに歩んできた中井さんだからこそ生み出した、オリジナルのオムレツです。
店名のリニューアルとともにはしもとオムレツへ。橋本のまちと、これからも『無難に』歩んでいきたい
はしもとオムレツに柿善が参加した当時は、前身の「柿右衛門」から店名を変えて数年が経った頃。「『柿善』の名前を覚えてもらいたい」と、認定店への一歩を踏み出しました。

柿善は、中井さんと、奥様と、息子様との家族経営。少数精鋭で営む食事処のため、オムレツは事前予約制としています。
前身の柿右衛門にて19年、柿善に変わって13年。食事処として30年以上橋本のまちと歩んできました。
「橋本市内には、特定メニューに絞った専門店があまりないんです。もちろん、大阪市内などの都会においては客層から刺さるかもしれないですけれど…突飛なものより、『無難なこと』でこれからも進んでいきたいですね」とお話されます。
「……とはいえ、無難であることが一番難しいかもしやんけどね」と、にっと口角を上げる中井さんが印象に残りました。
店内のお品書きには載っていない「裏メニュー」のご当地グルメ。橋本を訪れたときの密かな楽しみとして、これからもじっくり味わっていきたいです。

店舗情報
店名:食事居酒屋 柿善
住所:〒648-0041 和歌山県橋本市清水513-2
営業時間:11:00~14:00/16:00~22:00
※オムレツを注文される方は事前に店舗までお問い合わせください。
定休日:火曜日・水曜日
電話番号:0736-33-5455
アクセス
南海高野線「紀伊清水駅」より徒歩5分
南海高野線・JR和歌山線「橋本駅」より車で5分
橋本ICより車で5分



