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スポット  |    2026.05.02

神奈川県川崎市のJR武蔵溝ノ口駅 自由通路にある時計は、なぜエメラルド色?

川崎市高津区にある溝口という街が好きで、週に1度は出かける。東急田園都市線・大井町線の溝の口駅に降りると、改札から出てくる人の流れのままに、なんとなく駅前の商業施設「ノクティプラザ1」に足が向かってしまう。

途中、右手にあるJR武蔵溝ノ口駅の前を通ると、改札前の南北自由通路の奥にエメラルド色の時計がある。いつの頃からかこの時計のことが、とても気になりはじめた。

時計が設置されているエレベーター付近を見ても、時計の由来に関するプレートなどは見つからない。

久地円筒分水とエメラルド色の時計

改札前の南北自由通路は川崎市の管轄なので、担当部署に時計についてたずねると、以下のことを知ることができた。

時計の設置:1998年6月(試験検査日)
メーカー:セイコータイムシステム株式会社(当時)
設計者及び施工担当:セイコータイムプレシジョン株式会社(当時)

設置されたのは1998(平成10年)。30年近くも前のことで、時計のデザインに関することまではわからなかった。

しかしながら、時計は、1998年(平成10年)南北自由通路が完成したときに、国の登録有形文化財である川崎市高津区の「久地円筒分水(くじえんとうぶんすい)」をイメージしてデザインされているらしい、という話を聞いた。

改札を出てすぐの、リング状の案内表示とドーム型の天窓も、「久地円筒分水」がモチーフで、同じ1998(平成10)年に設置されている。

「久地円筒分水」とは、「川崎市シティプロモーション」のX(旧Twitter)の投稿にあるように、長年に渡る農業用水をめぐる争いを防ぐために、用水を各地域へ公平に分けるために造られたコンクリート製の仕切り設備のことだ。1941(昭和16)年に完成した。

久地の円筒分水はいち早く正確な分水を実現できたため、同様の方式のものが全国各地に造られるようになった。

「久地円筒分水」は、1998(平成10)年に国の登録有形文化財に登録され、川崎市が、「久地円筒分水」を、一つのモチーフとして溝口の駅周辺を整備している。

川崎市 : 久地円筒分水

川崎市 : 二ヶ領用水 水文化都市川崎の創造

1998年8月29日の「多摩川新聞」には、JR武蔵溝ノ口駅 南北自由通路の完成についての記事が一面にあり、時計についても書かれているので一部をご紹介する。

溝口駅 南北自由通路が完成
3世代夫婦で渡り初め

川崎市高津区のJR南武線溝ノ口駅の橋上駅舎と南北を結ぶ自由通路が完成、今月九日、完成式典が行われた。<中略>
式典に先がけ、同駅北口のペデストリアンデッキ上で山本勇&デキシーランド・フェローズによる記念のジャスコンサートが開かれ、通行人が立ち止まって黒山のひとだかりとなった。曲目は、「錨をあげて」「聖者の行進」「セントジェームス」などおなじみの曲ばかり。華麗なサウンドに盛んな拍手が送られた。
<中略>
同通路は幅員約十五メートル、延長五十五メートルで、西側をガラス張りにして解放感を持たせ、天井には国登録の有形文化財である円筒分水をモチーフにした明かり取りが。屋内には水をイメージした大時計が設置されている。<後略>

平成10年(1998)8月29日(土曜日)多摩川新聞  太字表記は筆者による

なるほど、「久地円筒分水」をイメージしているらしい、とわかると、時計を見るたびに、円筒分水が思い浮かぶようになってしまった。単純にモノとして、「久地円筒分水」も時計もずっと見つめていたくなるような魅力を感じてしまう。断言できないまでも、時計の由来についての見当がついたことで、ますますこの「エメラルド色の時計」が好きになった。


駅前の「円筒広場」もその名のとおり「久地円筒分水」をイメージした屋根がついている。

エメラルド色の時計のある南北自由通路が完成した26年後の2024年には、木製のベンチが設置された。脱炭素モデル地区として、国産木材を使った一連の改修工事のひとつだ。

川崎市 : 公共施設木質化リノベーション事業

溝口の駅前風景の移り変わり

1997(平成9)年、溝口の駅前に、商業ビルの「ノクティプラザ1」と「ノクティプラザ2」が開業した。

「ノクティプラザ1」には、ジーユーや無印良品などの各店舗の他に、レストラン街、書店の「文教堂」、旅行代理店、行政サービスコーナー、郵便局、などが入る。

「ノクティプラザ2」は、「マルイファミリー」が核テナントで、ユニクロやニトリなどの各店舗の他に、食品街、フードコート、家電量販店のノジマ、ドラッグストアなどや、11階と12階部分に川崎市高津市民館が入る。

1999(平成11)年には、JR武蔵溝ノ口駅と東急溝の口駅を結ぶペデストリアンデッキ(愛称 キラリデッキ)が完成した。

ペデストリアンデッキとは、車道から立体的に分離された高架にある歩行者専用通路と広場のことだ。ちなみに、「ノクティ」とは、溝口(みぞのくち)の愛称「ノクチ」と「シティ」を合わせて、「ノクティ」と名付けられた。

1998(平成10)年8月には、上述のように、JR武蔵溝ノ口駅の橋上駅舎(きょうじょうえきしゃ)と、南北自由通路が完成した。橋上駅舎とは、駅舎機能をプラットホームの上階部分に集約した駅の建物のことで、改札を出てすぐの南北自由通路は、北口と南口を結んでいる。

一連の東急溝の口駅・JR武蔵溝ノ口駅の北口地区再開発事業で、溝口の駅前風景は一変した。

参考:

川崎市 : 川崎市市制100周年PR広報紙~7区の歴史を振り返る~

溝の口駅・武蔵溝ノ口駅②未来編――赤提灯からサイエンスパークまで…何でもありの“田園都市線のオアシス”(川崎市高津区/東急田園都市線・JR南武線)|マンション図書館


取材協力:

川崎市 建設緑政局 道路河川整備部 施設維持課 
川崎市立高津図書館
川崎市立中原図書館 レファレンス担当


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この記事を書いた人

萩山元子(旧まやぎはとこ)

萩山元子・はぎやまもとこ(旧まやぎはとこ) 広島出身、東京23区在住。 食べること着ることが好きな一方、どケチで優柔不断、そのせいで常に頭が混乱、書くことで正気を保とうとする日々、興味の対象は人間、食べ物や服の好み、趣味、仕事……目の前にいる人になるまでの人生を聞くことが好き。日本を含めた世界中の人々がどんな食べ物をどういうスタイルで食べるのか、何をどう着ているのか、気になります。

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