豊田市小原和紙のふるさと 和紙工芸体験館公式Instagramより引用
豊田市小原地区にある「豊田市小原和紙のふるさと」は、室町時代から続く小原和紙の文化を今に伝える総合施設。施設内にある和紙工芸体験館では、実際に紙漉き体験をしながら和紙づくりの工程を学べます。
敷地内には遊歩道や見本園もあり、名古屋から約1時間とちょっとしたお出かけにも最適。この記事では和紙のふるさと運営協議会会長さんのお話とともに、施設の見どころと紙漉き体験の様子を紹介します。
小原和紙について
豊田市小原和紙のふるさと 和紙工芸体験館公式Instagramより引用
日本にある和紙の中でも、工芸品として評価が高いのが小原和紙の特徴。かつてこの地を訪れた工芸家・藤井達吉がその質の高さに魅せられ、実用品としての紙から美術品の工芸和紙に発展させました。
原料として使われるのは楮(コウゾ)、雁皮(ガンピ)、三椏(ミツマタ)とトロロアオイ。使う植物によって、手触りや風合いが異なるのも、和紙の魅力のひとつです。
小原和紙の作り方
1.蒸す:冬に刈り取ったコウゾを蒸し器に入れ、3~4時間蒸します。
2.皮剥ぎ:蒸し終えたコウゾから皮を剥ぎ取り、表面にある黒皮を専用のナイフでそぎ落とします。残った白い皮が和紙の原料になります。
3.煮る:白皮を鍋に入れ、アルカリ液(ソーダ灰)で柔らかくなるまで煮ます。長時間煮ることで、皮の汚れが外に出やすくなります。
4.ちり取り:ソーダ灰で煮出したアクを水にさらして流します。皮のキズなどを取り除き、きれいな状態にするのも欠かせない作業です。
5.叩く:汚れや傷を取り除いた皮を木の棒で叩き、繊維状にします。これで、紙漉きの原料の出来上がりです。
6.トロしぼり:1~5の工程と同時に行われるのが、トロロアオイから粘液を取り出す「トロしぼり」です。粘り気があるトロを入れることで、小原和紙の特色「流し漉き」ができるようになります。
7.舟(ふな)作り:舟と呼ばれる水槽に5でできた繊維を入れ、少しずつトロをくわえながらかき混ぜます。繊維が沈まず、舟全体に広がったら小原和紙のもととなる舟水(ふなみず)の完成。スコテと呼ばれる専用の木枠を沈め、舟水を汲みます。
8.紙漉き:スコテを前後左右に動かしながら、厚みを均等にしていきます。「流し漉き」と呼ばれるこの手法は、土佐手漉和紙や美濃和紙でも使われているもの。液量の調整や繊維をそろえる揺すり方など、職人の技術が求められます。
9.乾燥:漉き終えた紙を紙床(しと:湿紙を積み重ねる台)に移し、一晩かけてゆっくり水を切ります。その後、1枚ずつ剥がして板に張り付けます。完全に乾いたら和紙の完成です。
歴史も学べる美術館
ミツマタが咲くなだらかな坂を上ると見えてくるのが美術館。施設入口には小原和紙工芸会が製作した「小原和紙の空間」が飾られています。

「自然の叡智」をテーマにしたこの作品は、ドーム本体も内部も和紙で製作されたもの。中はひんやりとした空気で、一面に張り巡らされた扇形の和紙が宇宙のような空間を作り出していました。実際に触れてみるとごつごつとした質感。触る場所によって手触りが違うのも印象的でした。
1階にある展示室には、存在感抜群のランプや色彩豊かな和紙絵画が飾られています。


和紙を通した光は、温かさと優しさが感じられるもの。やわらかく広がる光が、心を落ち着かせてくれます。

和紙で描かれた木の作品は本当に枝が揺れているようで、油絵やパステルでは再現できない、繊維ならではの表現力を感じました。植物を原料とする和紙だからこそ、自然そのものの姿が再現できるのかもしれません。


2階に展示されていた屏風は、繊細な色遣いのものからダイナミックな迫力のまでさまざまな表情。見ごたえのある作品が、和紙の奥深さと表現力を感じさせてくれます。
大人から子どもまで楽しめる体験館
体験館では「絵漉き」や「字漉き」「葉漉き」など、1,000円程度で楽しめる体験が用意されています(当日予約可能)。子どもでも安心して楽しめるのも魅力のひとつ。取材日には家族連れの姿も多く見られました。
係の人に案内され、いざ体験室へ。
大きなシンクがある室内は図工室そのものの雰囲気。原料となる液体や色とりどりの染色和紙も並べられています。


職人さんの指導のもと、紙漉き体験の開始。
まずは原液をスコテに流し込み、上下左右に動かします。均一の厚さにするのが、きれいな和紙を作るポイント。焦らずゆっくりと動かしましょう。

余分な水がろ過されたら好きな染色和紙で色付け。点や線、グラデーションなど思い思いに色を乗せましょう。にじみや重なりも味わいのひとつ。和紙や草花のパーツから、飾りつけをすることもできます。

色付けが終わったら、金箔入りの仕上げ液をかけて乾燥へ。20分ほどでオリジナル和紙の完成です。

作業開始から出来上がりまでは1時間弱。うちわやタペストリーなども制作できるので、旅の記念にもおすすめです。また、団体予約も受け付けているそうです(同種の体験20名以上で団体料金)。
和紙のふるさと運営協議会会長さんにお話を伺いました
地元出身で現在も小原に住む、和紙のふるさと運営協議会会長の山内さん。小原和紙の魅力や施設の見どころについてお話を伺いました。
「小原和紙がほかの和紙と違うのは、美術工芸品であることです。ただ漉く紙ではなく、木の繊維を着色して、それを絵具の代わりにして作品を作っていく。
繊維そのものを染めることで、ほかの画材で出せないような風合いや模様が生まれます。和紙ならではの表現力は、ほかでは表現できないものです」
豊田市小中学校と特別支援学校の卒業証書のほとんどは、この和紙のふるさとで漉いているそう。実際に和紙作りを体験した子どもたちも、喜んで帰っていくと言います。
「濡れている時はぼやけた感じなんですが、乾かした時に自分の乗せた色がはっきりと浮かび上がってくる。あのきれいさに子どもたちは感動するようです。
子どもたちには、紙は手作りできるということや自然のものから生まれるという原点のような部分を、感じてほしいですね。
体験したり学んだりする中で、『面白いな』『昔の人はこうやって紙を身近なものにしてきたんだな』と気づいてもらえたらうれしいです」
そう言って目を細める会長さん。施設に訪れる人には、こんなメッセージを送っています。
「紙というのはもともと自然の一部であり、その中で人が工夫を重ねて生み出してきたものです。障子紙や番傘など、昔は生活に欠かせないものをすべて手作りしていました。自然のものを生活に生かしてきた、その一端を感じてもらえたらうれしいです。
また、小原和紙は自然の素材に色を加えたり工夫を重ねたりすることで、美術品としての価値を高めてきました。美術工芸品として発展してきた小原和紙の価値や魅力も、知ってもらえればと思っています。
和紙には手作りならではのよさや温かさがあります。そして、昔の人からずっと受け継がれてきた伝統文化でもあります。ここは、そうしたものを実際に感じてもらえる場所です」
「まず知ってもらうこと」が小原和紙を残していくために必要だと語る会長さん。将来に残していくべきものとして、たくさんの人にこの場所を訪れてほしいと、柔らかく微笑んでいました。
見て、触れて感じる小原和紙の魅力
シンプルでありながら奥深い和紙の世界。見て、触れて、感じて、その魅力をこの場所で体感してみてください。手作りならではの温かさや、古くから受け継がれてきた文化の一端に触れることができるはずです。
【施設情報】豊田市小原和紙のふるさと
| 所在地 | 愛知県豊田市永太郎町洞216-1 |
| 電話 | 0565-65-2953 |
| 開館時間 | 午前9時~午後4時30分 |
| 休館日 | 月曜日及び12月28日~1月4日 (月曜日が休日の場合は開館) |
| 駐車場 | 120台(無料) |
| 公式HP | 豊田市小原和紙のふるさと |
| 公式Instagram | 豊田市小原和紙のふるさと 和紙工芸体験館 |
【名古屋方面から】
猿投グリーンロード(有料)中山インター経由、国道419号線を瑞浪市方面へ直進約15km
【岡崎市・豊田市方面から】
国道248号線を北進、豊田市駅前通りから国道419号線を瑞浪市方面へ約23km




