自然に包まれながら、心も体もリラックスしたい。都内にも、その願いをかなえられる場所があります。
『秋川渓谷 瀬音の湯(以下、「瀬音の湯」)』は、東京都あきる野市から檜原村にまたがる全長約20kmの秋川渓谷の中にある、温泉・食事・宿泊ができる複合施設です。

東京都心からは約90分で行くことができます。JR五日市線の終点・武蔵五日市駅で下車し、路線バスで約15分です。車の場合は、圏央道あきる野ICから約30分で到着します。思い立ったときにすぐ行ける距離で、豊かな自然に囲まれた時間を楽しめます。
自然から、そっと借りた場所
バス停を降りると、すぐに空気が変わります。今回は、瀬音の湯に停車するバスではなく、檜原村方面に向かうバスを利用して訪問しました。最寄りの十里木バス停で下車し、そこから10分弱、散歩を楽しみながら瀬音の湯へ向かいます。

主張しすぎない、7.7ヘクタールの贅沢
歩いていくと、山の麓に佇む瀬音の湯が見えてきます。真っ先に感じるのは「広さ」ではなく、その「静けさ」です。
瀬音の湯の敷地面積は、全体で約77,000㎡。数字にすれば東京ドーム約1.6個分という、一つの里山を丸ごと包み込むほどの広さです。
しかし、不思議と威圧感はありません。周囲の地形と調和し、景色を遮らないよう、建物の広さや高さに配慮して設計されています。温泉棟やコテージなどの建物が、まるで以前からそこにあった樹木のように地形に沿ってそっと佇んでいます。

人間が自然を切り拓いて作った施設というより、「自然から少しだけ土地を貸してもらい、人の宿り木を作らせてもらった」かのような、奥ゆかしい一体感があります。
美肌の湯と地元の食が、たまった疲れをほぐす
施設は、多摩産材をふんだんに使った平屋建てです。ぬくもりを感じる施設内で、温泉や食事、買い物などを1日中楽しめます。

トップクラスの「うる肌」を体感 地下1,500mから湧き出る格別のトロトロ感
瀬音の湯の最大の自慢は、地下1,500mから湧き出るpH10.01のアルカリ性単純温泉です。浸かった瞬間、肌にまとわりつくトロトロとした感触。強アルカリ性ならではの特徴で、古い角質をやさしく落とし、肌をなめらかに整えてくれます。熱すぎず、ゆっくり浸かれるのも魅力です。

その実力は本物で、温泉総選挙の「うる肌部門」で3度日本一に輝いた実績があります。古い角質を落とし、肌をなめらかに整える「美肌の湯」として、多くのファンから支持されています。

多摩をまるごと味わえる、地元の食も充実
瀬音の湯は、あきる野市や多摩地域の豊かな食材がそろう場所でもあります。
館内の「物産販売所 朝露」には、地元の農家さんが丹精込めた朝採れ野菜や特産品がずらりと並びます。生産者の顔が見える新鮮な食材がそろい、訪れるたびに異なるラインナップを楽しめます。

地元の恵みをその場で堪能するなら「レストラン 石舟(いしぶね)Dining」です。窓の外に広がる秋川渓谷の絶景を眺めながら、旬の素材を活かした料理に舌鼓を打つ時間は格別です。お風呂上がりの体に染み渡る滋味深い味わいで、里山の豊かさを丸ごといただくことができます。

瀬音の湯は、日本一の「うる肌の湯」で癒やされ、地元の豊かな実りも楽しめる場所です。あきる野という土地の魅力を五感で味わえる、里山への入口のような存在と言えます。しかし、開業当初から手放しで歓迎されていたわけではありません。今の盛況ぶりの裏には、温泉の泉質とは別の、積み重ねてきた歴史があります。
2007年の開業から築いてきた、地域との「共生」の歴史
『秋川渓谷 瀬音の湯』は、2007年に開業し、2027年で20周年を迎えます。これまでの歩みを、運営会社である新四季創造株式会社の企画宣伝課課長、伊藤秀一さんに伺いました。

反対の声を「信頼」に変えた、地道な対話と共生の歩み
今では地域のシンボルとなっている瀬音の湯ですが、2007年の開業当初は、手放しで歓迎されていたわけではありませんでした。自然豊かなこの場所に新たな施設ができることへの戸惑いや葛藤は、ごく自然なことだったかもしれません。
そうした空気を変えたのは、データによる論理的な説明でも、効率的なマーケティングでもなく、驚くほど地道な「対話」でした。
「私たちが何より大切にしているのは、地域との合意形成なんです。定期的な会議はもちろん、地域の自治会や地元のお祭りなどにも積極的に参加して、地域の方々と同じ時間を過ごし、地道に関係を築いていくことを、開業からずっと積み重ねてきました。お互いが膝を突き合わせて、良いことも悪いことも話すことを大切にしています」

その関係は物産販売所でも垣間見ることができます。販売所には、地場野菜をはじめとする豊富な特産品が並んでいます。さらに、伊藤さんの「本当に地域の方々のご理解とご協力のおかげです」という言葉からも、地域と瀬音の湯が一体となって盛り上げていこうとしている様子が伝わってきました。
「大切な人を連れていきたい」という、市民の誇りの場へ
瀬音の湯が何よりも大切にしているのは、あきる野市民の方々が「ここは自分たちの誇り」と感じてくれることです。
「私たちが目指しているのは、単に施設を維持することではありません。地域の方々にとって、ここが誇れる場所であることです。例えば、親戚や知人があきる野に遊びに来たときに、『瀬音の湯に連れていきたいよね』と自然に思ってもらえるような、そんな施設になりたいです。
地域の方に『自分の地元の施設だ』と愛着を持っていただく。そのために何ができるかを、対話を通じて常に考え続けています」

その想いは、館内の活気やスタッフの温かな接客の端々にも宿っています。単なる入浴施設を超え、地域住民の「心の拠り所」になること。それこそが、瀬音の湯がこの土地に存在する一番の理由なのです。
瀬音の湯が創る「新しい文化」
瀬音の湯のイベントや、今後の挑戦についても伊藤さんに伺いました。
伝統の共有やエンターテインメントの入り口として、瀬音の湯の新しい一面を増やす試み
温泉のフロントには、明星大学情報学部の学生が制作したモダンな照明が展示されています。これは、「学生と新しい価値を作りたい」という伊藤さんの思いから生まれた作品です。あきる野市の伝統的な手漉き和紙で、東京都無形文化財にも指定されている「軍道紙(ぐんどうがみ)」と、3Dプリンターで作られた骨組みを組み合わせた現代的なデザインとなっています。
幾何学的な造形が生み出す現代的な印象でありながら、和紙ならではの柔らかさも感じられ、館内を温かく演出していました。

また、あきる野市の一夜限りの祭り「ヨルイチ」では、地元の小学校3年生が作った行灯(あんどん)が会場を彩ります。「1日だけではもったいない」と感じた伊藤さんの発案で、ヨルイチ開催後、館内に展示するようになりました。子どもたちが自分の作品を家族に見せる、そんな微笑ましい光景も生まれています。
さらに、伊藤さんは「温泉と演歌」という昔ながらの楽しみを現代の形でよみがえらせたいと考え、自らアーティストを探して音楽ライブを開催するようになりました。この試みにより、温泉を楽しみに来る人だけでなく、アーティストのファンも瀬音の湯を訪れるようになったそうです。

これからの挑戦
伊藤さんは、「静かに過ごせる瀬音の湯の良さを守りながら、もっとお客さまに楽しんでいただけるようにしたい」と話します。その情熱が、瀬音の湯の新しい文化を作り出しています。
「自慢の泉質だけに頼らず、地域にお住まいの方とのつながりを大切にしながら、これまであきる野を知らなかった方にも瀬音の湯をきっかけに訪れていただき、何度でも通いたくなるような場所にしていきたいと思います」
今後、瀬音の湯の魅力を生かした体験型アクティビティやお祭りなど、計画中のイベントもあるそうです。最新情報はホームページやSNSでチェックしてみてはいかがでしょうか。

滞在するほどに呼吸が深くなり、心と体が穏やかになっていく。そんな時間を東京にいながら過ごせるのが、瀬音の湯です。温泉だけにとどまらず、地域の文化や食、新しい体験を発信し続けるその姿は、あきる野市の魅力をまるごと感じられる場所でした。次回はコテージに泊まり、もっとゆっくりこの空気の中にいたいと思います。
今度の休日は、東京都の里山「秋川渓谷 瀬音の湯」に足を運んでみませんか?
秋川渓谷 瀬音の湯
住 所 東京都あきる野市乙津557
電話番号 042-595-2614
公式 HP http://www.seotonoyu.jp/
Instagram https://www.instagram.com/a_seotonoyu




