
取材当日、雪が積もり冷え込んだ。
私が角打ちフェスの会場に着いたのは13時頃。
雪はやんでいましたが、空気は冷たく、じっとしていると体の芯まで冷えてくるような寒さでした。
それでも、会場には人の流れがありました。
青いシートの上を歩き、テントをのぞき込み、酒を選び、立ち止まって話す人たち。
足早に通り過ぎる人は少なく、誰もが自分のペースで杯を傾けています。
「今日は寒いですね」
そんな一言から、自然に会話が始まっていきます。
寒さの中であらためて感じたのは、酒を手にすると、会話が自然と生まれていくことでした。
第12回を迎えた「角打ちフェス」

酒屋で酒を買い、その場で飲む「角打ち」。
その文化を軸にした角打ちフェスは、今回で第12回を迎えたそうです。
会場には、日本酒を中心に、ワインやビールなど、さまざまなお酒が並びます。
そこに食と音楽が加わり、ただ飲むだけではない時間がつくられていました。
お酒をすすめるのは、酒屋の人たちです。
グラスを手渡しながら、味や香り、造り手の話を短く添える。
売り込みというより、会話を楽しんでいるような距離感が印象的でした。
会場には、初めて訪れたような人の姿もあれば、どこか慣れた様子でブースを巡る人もいます。
第12回という数字は、単なる回数ではなく、この場で繰り返されてきた時間の重なりのように感じられました。
こんなお酒があるんだ!プロが厳選した選りすぐりの酒

会場を歩いてまず感じたのは、並んでいる酒の幅広さでした。
日本酒だけでなく、焼酎やワイン、クラフト感のある銘柄まで、実にさまざまです。
どのブースでも、酒屋の人が好みを聞きながら、会話を交えて酒をすすめていました。
「これはこんな味です」
「この蔵は、こんなところにあります」
こんなやりとりが添えられます。
その中で、酒の名前と一緒に、産地や地域の言葉が、自然と耳に入ってきました。

メッセージを前面に押し出すような演出はありません。
ただ、酒が注がれ、来場者が説明に耳を傾ける。
そのやりとりで、「どこの酒なのか、どんな味わいなのか、どんな料理に合うのか」が楽しく伝わってきます。
酒を味わいながら、背景にある土地や文化を知る時間が、確かにそこにありました。
これぞ角打ち、気づけば知らない人と会話が始まっていた

会場で、偶然隣に立った女性と、少し言葉を交わしました。
「どれが美味しかったですか」
「今日は冷えますね」
特別な話ではありません。
けれど、同じ酒を飲み、同じ空気を共有することで、距離は自然に縮まっていきます。
角打ちフェスでは、有料でテーブル席も用意されていますが、基本は立ち飲みスタイルです。
だからこそ、人は立ち止まり、見知らぬ隣の人と言葉を交わします。
一人で来ていても、居心地の悪さを感じにくい空気がありました。
むしろ、一人で来ている人ほど、この場に自然となじんでいるようにも見えました。
ボトル飲みの強者もちらほら見受けられました。
酒と一緒に楽しむ、冬のごちそう

フードブースからは湯気が立ちのぼり、会場に温かい香りが広がっていました。
牡蠣をはじめとした海鮮料理や、冬にうれしいあたたかいメニューが並びます。
冷えた体に、料理と酒がゆっくりと染み込んでいきます。
どの料理も、お酒と一緒に楽しむことを前提に用意されているように感じられました。
食べることで会話が続き、
飲むことで時間がゆるやかに流れていきます。
この日ばかりは、寒ささえも、場の雰囲気を引き立てる要素になっていました。
ちなみに、この広島の「焼き牡蠣」、プリップリでめちゃくちゃ美味しかったです。
そして、根つき仙台セリの薫り高い「セリ鍋」も最高でした。

角打ちカフェ フタバのブースで感じたこと

会場には、以前取材させて頂いた、カクウチカフェフタバのブースも出店していました。
紹介していたのは、山梨県のワインメーカー岩崎醸造の「アジロン」という商品です。
勝沼の幻の黒ブドウを使用し、豊かな果実味・心地よい酸と渋み・優しい甘みを持つ、ジューシーで親しみやすい味わいが特徴のワインで、酒アワードの表彰で金賞を受賞したそうです。
日本ワイン専門商社【TresoR】のソムリエもいて、ワインの味や口当たりなどを分かりやすく説明してくれました。
ここでも、売ることより先に会話があります。
「どんな味が好きですか?」 「こちらを飲んでみますか?」
その一言が、自然に次の一杯につながっていました。
「楽しかったな」で帰ってもらえたら

この日は、角打ち酒アワードの表彰式から行われたそうです。
日本酒部門+ビール部門+果実酒部門+ウィスキー部門+焼酎・リキュール部門の合計95本の中から選ばれた3本です。

実行委員会の方は、次のように話してくれました。
「お酒の魅力や奥深さを、まずは知っていただきたいと思っています。
第1回から第12回まで続けてきた中で、その点はお客様にもご理解いただけていると感じています。
だからこそ、お酒、食、音楽がそろうこの場で、さらにお酒の楽しさを知ってもらいたい。
『楽しかったな』と思って帰ってもらえたら、それが一番です」
この言葉は、この日の会場の風景と重なって見えました。
次回の角打ちフェスも楽しみに

今回の角打ちフェスは雪が降り、寒さの厳しい一日でした。
それでも人は集まり、話し、飲み、笑っていました。
心に残ったのは、特定の銘柄ではなく、話しながら飲む時間そのものです。
角打ちフェスは、何かを強く主張するイベントではありません。
ただ、酒と人が出会う場を用意しています。
その積み重ねが、第12回という数字につながっているのでしょう。
角打ちフェスは、年に2回開催されており、次回の開催は11月だそうです。
今回訪れることができなかった方も、次の機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
酒を飲むだけでなく、話し、知り、味わう。
そんな時間が、あなたを待っています。
第12回酒屋角打ちフェス公式サイト
x酒屋角打ちフェス【公式】 https://x.com/kakufes_
Instagram酒屋角打ちフェス【公式】通称カクフェス! https://www.instagram.com/kakufes/




