山梨県甲府市に拠点を置くカフェ・ド・サボンは、手作り石けんやその材料、ハーブ・精油を扱う専門店。2026年2月に待望の実店舗を再オープンし、同年4月25日にはオープン19周年を迎えた。前編では、そのお店の素顔に迫る。

甲府駅から徒歩6分。舞鶴城の石垣がそびえる静かな裏通りの雑居ビル4階に、そのお店はある。入り口には可愛らしいドライフラワーと観葉植物。呼び鈴を鳴らすと、店員さんが笑顔で「はーい」と迎えてくれる。まるで友人宅を訪ねたような、温かな気持ちになる場所だ。
楽天評価は★4.89、レビュー数229件(取材時点)。これは運営会社の変更でリセットされた後の数字で、変更前はなんと17,810件ものレビューを積み上げた通販人気店——それがカフェ・ド・サボンだ。
「石けんのカフェ」が生まれるまで
店名「カフェ・ド・サボン」の由来
「石けんを作る人たちがワイワイ集まって、お茶でも飲みながら石けんの話ができる場になるといいね、というイメージから『カフェ』という言葉が生まれました」——統括マネージャーの深澤花織さんはそう話す。サボンはフランス語で石けんの意。カフェ・ド・サボンという名前には、単なるネットショップを超えた、人と人がつながる場への願いが込められていた。
お店が生まれたきっかけ
お店が産声を上げた2000年代初頭、手作り石けんブームが盛り上がっていた。ところが材料を揃えようとすると、ネット注文しても届くまでに数週間、値段も高い。そんな不便さに困っている人が多かった時代だ。「その不便を解消したい」——その思いが、このお店の出発点だった。
成長と転換
カフェ・ド・サボンは自社サイトのみでスタートし、翌年楽天に出店。石けん材料にとどまらずハーブ・精油・道具類へと商材を広げ、着実に成長を重ねた。最盛期には1日数百件の注文をさばき、海外発送にも対応。スタッフは17人規模まで拡大し、楽天市場店ではショップへの感想17,810件、商品レビューも含めると合計71,000件を超えた。
しかし、規模を追い続けることが必ずしもお店の本質と一致するわけではなかった。2024年の運営会社変更を機に、カフェ・ド・サボンは大きな方針転換を図る。「より多くの方へ届けることよりも、目の前のお客様お一人おひとりを今まで以上に大切にしていきたい。」——その言葉が、今のお店のかたちをつくっている。
お店の空間と商品
温かみあふれる店内

入り口の木戸を開くと、ふわりとスパイシーなハーブの香りが漂う。左手の店舗スペースにはグラム売りのハーブティー、精油やオイルがずらりと並び、右手の販売・応接スペースではアクリルモールドなどの商品を手に取りながら、スタッフとゆっくり相談して買い物ができる。


さらに奥のバックヤードでは、温かみのある木の棚に注文を待つ商品が整然と並んでいた。キッチン設備をそのまま活かした製造室は、奥へ進むほどハーブの香りが濃くなる。白衣のスタッフが新商品の試作に黙々と取り組む姿も見えた。コンパクトなオフィスでは通販スタッフがPCに向かっている。頭上には満月のような丸い照明——温かさと実務性が自然に同居した、不思議な魅力の空間だ。


看板商品はアクリルモールド

主力商品は、オープン当初から変わらないアクリルモールドだ。手作り石けんに欠かせない型で、固まった石けんをするりと取り出せ、鏡のような美しい仕上がりになる。石けん教室を主宰する講師たちにも愛用者が多く、インスタグラムでも定番品として広く知られる。
売れ筋のもう一つは「オイルミックス」。石けん作りに必要な複数のオイルが適切な比率でブレンドされており、初心者でも扱いやすい人気商品だ。ハーブティーでは「スイートスリープ」がイチ押し。リラックスタイムに寄り添うブレンドで、甲府市のふるさと納税でも取り扱われており、多くのリピーターに愛用されている。製造はほぼ自社で行っている。


ていねいに、「まごころ」をこめて
「気持ちを込めたものって、ちゃんと伝わると思うんです」と深澤さんは言う。商品を作るときはもちろん、発送作業でも、お客さんの名前を心の中で呼びながら荷物を詰める。開封しやすいようガムテープの端を折り返し、中身が折れないよう丁寧に緩衝材を入れる。大手モールには真似のできない、小さくて確かな気遣いだ。
その思いは、必ずお客さんのもとへ届く。店舗では「また来ました」という笑顔となって。通販では、レビューやメッセージという形となって。「ありがとうございます」「ずっと使い続けています」——そんな言葉を読むたびに、深澤さんは「またがんばろう」と思うのだという。商品を丁寧に作り、心を込めて届ける。それが巡り巡って自分のもとへ返ってくる——そのシンプルな循環が、このお店の芯の強さの源だ。
一度閉じ、また開いた扉
2024年3月、カフェ・ド・サボンは運営会社の変更に伴い一時閉店。「辞めないで」「どこで買えばいいの」というメールが殺到し、手作り石けん界隈に動揺が広がったという。3ヶ月後にネットショップを再開すると、今度は「実店舗はいつ再開しますか」という問い合わせが毎日のように届くようになった。
新宿から、長野から——かつてはブラジルからはるばる来店したお客さんもいたというこのお店を、遠くから心待ちにしている人たちがいた。その声に応えるように、2026年2月、実店舗が事務所の一角に静かに再オープンした。火・水・木・金の週4日、13〜17時の営業ながら、再開を知ったお客さんが遠方から足を運んでくれている。
「もっと実店舗を広げたい。一人ひとりと向き合える石けん教室も充実させていきたい」と深澤さんの夢は広がる。人と人がつながれる場をつくりたい——オープン当初からの願いは、19年を経た今もぶれていない。

まとめ
手作り石けんブームとともに成長し、全国のお客さんとの縁をつないできたカフェ・ド・サボン 。規模ではなく、ひとつひとつの注文への誠実さを選び続けた19年だ。甲府を訪れる機会があれば、ぜひその扉を叩いてみてほしい。
カフェ・ド・サボン 店舗情報
| 住所 | 〒400-0032 山梨県甲府市中央2丁目5-29 マイヅルビル4F |
| 電話 | 050-5482-3535 |
| 営業時間 | 火・水・木・金 13:00〜17:00 |
| 定休日 | 月・土・日・祝日 |
| ※営業日・営業時間は変更になる場合があります。最新の情報は公式Instagramをご確認ください。 | |
| アクセス | JR甲府駅から徒歩6分(専用駐車場なし・近隣にコインパーキングあり) |




