群馬県前橋市の小林工業株式会社は、145年続く老舗の建設会社。現在、6代目の社長を務める小林祐介さんは「まちをつくり、まちをまもる」をモットーに、建築・土木・リノベーションなど様々な分野で地域づくりに取り組んでいます。これまで住宅やビル、学校や病院など地域のシンボルとなる建物を数多く手がけ、前橋で暮らす人々の生活を支えてきました。2030年には創業150周年を迎える小林工業の歩みと、未来への挑戦をご紹介します。
街とともに生きる〜前橋市と小林工業の歩み〜
生糸で栄えた城下町、前橋市の歴史

群馬県の県庁所在地である前橋市は、古くから歴史と文化が息づく街です。1601年(慶長6年)、徳川家の重臣である酒井氏がこの地を治めて以来、約150年にわたり城下町として発展しました。当初は「厩橋(まやはし)」と呼ばれていましたが、江戸時代に「前橋」へと名を改め、街の姿を整えていきます。
江戸から明治にかけては、生糸の一大産地として全国に名を馳せました。高品質な前橋の生糸は海外へも輸出され、日本の近代化を支える原動力となったのです。まさに「絹の街」として繁栄を極めた時代でした。
しかし、昭和の戦争期には空襲により街の大半が焼失。人々は大きな痛みを抱えながらも復興への道を歩み始めました。
建設を通じて地域に貢献し続ける小林工業の歴史

小林工業は1880年(明治13年)、新潟県の鍛治職人の子である小林与作さんが創業しました。2代目は東京で修行を積んだ後、1920年(大正9年)に小林組を設立。
会社は、早くから建設業界で実績を積み、上毛倉庫や前橋測候所、中川小学校、県内初のコンクリート造建築である荒砥村立東小学校など、重要な建築物を手がけました。昭和に入ると、軍の施設建設にも携わることになり、太平洋戦争中の昭和19年には、企業整備令により前橋土建工業株式会社を設立し、武四郎が社長に就任します。
1945年(昭和20年)の前橋空襲で会社の施設を大きく焼失し、大打撃を受けましたが、前橋の戦災復興に積極的に取り組みました。その後、土木部の新設や道路舗装工事の開始など、事業を拡大させていきます。そして1966年(昭和41年)、現在の表町に本社を建て、社名を小林工業株式会社に改めました。
その後、小林工業は社是である「誠実」を大切にしながら、前橋とともに歩み発展してきました。
「トキ、メイク、マチ。」熱い思いが詰まった理念とビジョン
「トキ、メイク、マチ。」という未来を育むものづくり

145年の歴史を持つ小林工業は、大工の仕事から始まり、時代に合わせて姿を変えながらも「誠実なものづくり」を大切にしてきました。
築いてきたのは建築物のみならず、人々が集い、生活を営み、記憶を紡ぐ「場」と「時間」でもあります。それらは街に景観を生み出し、人々の心に刻まれる記憶となり、日常を支える基盤として存在してきました。
6代目の小林祐介社長は、この理念を受け継ぎ「人の暮らしや地域に誠実でありたい」と考えています。効率や規模を追うのではなく、人々の声を聞き、未来につながる価値を作る姿勢には、地域に根ざした会社ならではの責任感と誇りが表れています。その想いを表現する言葉こそが「トキ、メイク、マチ。」です。
企業寿命の5倍を生きる小林工業のノウハウ
小林工業が145年も続いているのは、地域や他の会社との強いつながりと、総合建設業ならではのワンストップ体制があるからです。企画からアフターケアまで一貫して手がけることで、高品質なものづくりを実現してきました。
また、消防団などの地域活動や雇用の創出を通じて街を支え、社員教育や他業種との交流で新しいアイデアを育んでいます。これからも人材育成や働きやすい職場作りを通じ、地域とともに次世代のものづくりに挑戦し続けます。
「まちづくり企業」が担うシゴトと地域貢献
地域や企業の価値を上げる小林工業のシゴト

2022年に完成した「しののめ信用金庫 前橋営業部」は、昭和38年に小林工業が施工した建物を50年以上の時を経てリノベーションしたもの。
当時の建物の構造を大胆に活かし、鉄骨鉄筋コンクリートの梁はそのままの形で現在も継承されています。現代的なモダンデザインと調和しながら、前橋の「今」と「昔」をつなぐ空間が生まれました。
既存の建物を活かすことで、歴史ある建築と現代の建物が共存します。これにより地域にとっての歴史的価値が生まれ、それを実現する企業としての存在価値も高まります。
50年以上の時を経て再生されたこの建物は、カフェやライブラリースペースを併設した金融機関として地域に開かれ、人々が集い、つながる場所へと生まれ変わりました。
古い建物を活かすことで、地域の歴史を継承しながら、新たな価値を育んでいます。こうした取り組みを通じて、まちづくり企業として地域社会に貢献し、総合建設業としての役割を地域に根づかせています。

学校や病院、マンション、オフィスビルなどの建築工事から、最適なプランを提案する設計、効率的なシステム建築、道路やインフラを担う土木、そして価値を生まれ変わらせるリノベーションまで、長年の経験と確かな技術で、街と人の暮らしを支える幅広いものづくりを行っています。

最近特に需要が増えているのが倉庫や工場建設。お客様のニーズに合った倉庫を安く効率よく設計・設置できるので、企業からの問い合わせや設置件数が増えています。
こうしたニーズに応えるため、効率的かつコストを抑えた建築提案を行っています。設計から提案までの工程を最小限に抑えることで短工期を実現し、工程が少ない分、人件費などのコストも削減。その高いコストパフォーマンスで選ばれています。社内の設計担当者がお客様のご要望を丁寧にヒアリングし、期待に応える一棟を提案しています。企業のニーズに応じた倉庫・工場の設計・建設を通じて、地域と産業の発展にも貢献しています。
SDGs×未来×連携で生み出す地域貢献

大学や企業との連携を積極的に行っており、群馬大学、トキワコンクリート工業株式会社と一緒に開発した二酸化炭素固定化ブロック「減CO2ブロック」(げんこつブロック)は大阪・関西万博ドイツ館のテラスやアプローチに設置されました。
その環境への配慮や実用性が評価され、今後の展開が期待される注目の製品です。
商品開発だけでなく、未来の街づくりを支える様々な取り組みも行っています。


「SDGsパートナー×公園美化プロジェクト」として地域の自治体と連携し公園の掃除をしたり、3Dプリンターでベンチを作って実演会を開き、地域住民に最新の技術に触れてもらう機会を提供しています。


さらに、民間の視点からまちづくりを進める「太陽の会」への参加や「前橋デザインコミッション」との連携で、市街地の再開発や道路整備なども行い、地域の課題解決に積極的に参加しています。
参考:太陽の会、前橋デザインコミッション
「トキメイク2030」未来に向けたビジョンという名の未来地図
ビジョンと中期経営計画に込められた思い

2030年に創業150周年を迎える小林工業は社是の「誠実」を大切にしながら、未来に向けて全社員が一丸となって挑戦しています。2020年に発表した10年後の理想の姿を「トキメイク2030」と名づけ、「顧客提供価値・人づくり・ブランディング」を3つの柱としました。
お客様には建設を超えた価値を提供し、社員には活躍できる場を広げ、地域や業界から憧れられる会社を目指します。
トキメイク2030に向けての取り組み



小林工業が目指すのは、良い建物を作ることはもちろん、そこに集う人々の出会いや思い出、暮らしを大切にし、ライフサイクルを支えることです。
さらに、地域貢献として消防団への参加や、国土交通省・群馬県・前橋市との災害協定締結も積極的に行っています。
こうした活動を通じて、建設の先にある価値を育めるよう、小林工業は未来を見据えて様々な取り組みに挑み続けています。
おわりに
群馬県前橋市で145年の歴史を刻み、地域とともに歩んできた総合建設企業、小林工業株式会社をご紹介しました。
創業以来の理念である「誠実なものづくり」を基盤に、学校や公共施設から住宅まで幅広い事業を展開し、街と人々の暮らしを支えてきました。戦後復興や地域活動にも尽力し、前橋の発展に大きく貢献してきた企業です。
6代目の小林祐介社長は「145年の歴史を次の世代へ確実に継承していきたい」という強い使命感のもと、社是である「誠実」を守り抜いてきました。様々な困難を社員や役員と一丸となって乗り越え、企業寿命30年説の5倍にあたる長寿を実現しています。
「トキ(時)を大切にし、未来をメイク(創造)し、マチ(街)を育む企業」として、単に建物を造るだけではなく、人々の出会いや思い出、暮らしの舞台を築いています。今後もその歩みに注目が集まります。
会社概要
商号:小林工業株式会社
所在地:群馬県前橋市表町二丁目11番8号
TEL:027-224-1751
代表者:代表取締役社長 小林祐介 代表取締役会長 小林要一
従業員数:103名(2025年4月1日現在)
許可番号:
・建設業許可 国土交通大臣許可:(特-2)第5610号
・一級建築士事務所 群馬県知事登録:868号
・宅地建物取引業者免許 群馬県知事許可:(16)292
・産業廃棄物収集運搬業許可 群馬県知事許可:01000011404
・前橋SDGs パートナー 登録番号:28
事業内容:企画設計、建築、土木、住宅、リフォーム、メンテナンス、不動産・保険
小林工業株式会社