
日本の農業が直面する「生産者の高齢化」と「不安定な収益構造」。この課題に対し、独自のソリューションで挑む企業があります。栃木県内で「農産直売所あぜみち」を運営する株式会社グリーンデイズ(以下グリーンデイズ)です。
彼らの武器は、創業当初から続く「集荷」の取り組みです。現在では「営業集荷チーム」として体制化され、自社で集荷・陳列・販売管理を一手に引き受ける流通モデルとして発展しました。
これにより、生産者の負担を劇的に減らすだけでなく、物流の最適化によって廃棄ロスの極小化を実現しています。
本記事では、農家・消費者・グリーンデイズそれぞれのメリットを深掘りするとともに、実際に現場を支えるスタッフの1日を通して、その実効性を紐解きます。
栃木から全国展開を見据え、農業を「稼げるインフラ」へアップデートしようとするグリーンデイズの及川さんと、菊地さんに話を伺います。
従来の直売所とは何が違う?グリーンデイズ独自の「営業集荷チーム」とは

栃木県内で「農産直売所あぜみち」を5店舗運営する株式会社グリーンデイズ。グリーンデイズの特徴は、農家が直売所に野菜を持ち込むだけでなく、自社で「集荷」に赴く「営業集荷チーム」の存在です。
営業集荷チームは、創業時に社長が自らトラックを運転して農家を巡っていたところから始まりました。現在は15名体制で業務を行っています。
関わるすべての人を笑顔に!営業集荷が生み出す「三方良し」のメリット

営業集荷チームは、単に野菜を集荷するだけのチームではありません。「生産者」「消費者」「グリーンデイズ」それぞれにメリットをもたらしています。具体的に見ていきましょう。
生産者側のメリット:栽培に集中でき、収益も安定する万全のサポート体制
集荷、配送、店舗への陳列といった業務はすべてグリーンデイズが代行するため、生産者は本来の業務である「栽培」に時間と労力を集中できるのがメリットです。例えば、インストア店舗(スーパー内店舗)では営業集荷チームが陳列を行い、あぜみちの店舗(直営店舗)では店舗スタッフが陳列を担当します。
さらに、人口の多い都市部では、郊外よりも高い価格設定で野菜を販売できるという点も魅力です。
加えて、担当者が「次に栽培する野菜」の相談にのったり、収穫時期の調整を提案したりすることで、供給過多を防ぎ、安定した収益が確保できるようにサポートしてくれます。
多くの直売所では「売れ残りは農家が引き取る」ルールですが、グリーンデイズでは可能な限り売り切る取り組みに力を入れているため、農家が引き取りに来る手間もありません。
消費者側のメリット:朝採れの鮮度とスーパーの利便性を両立した「日常使いできる直売所」
集荷から半日〜1日という短期間で野菜が店頭に並ぶため、圧倒的な鮮度を実感できます。
生産者の持ち込みだけに頼ると、品揃えがどうしても偏りがちになりますが「農産直売所あぜみち」では、営業集荷チームが栃木県内全域を網羅し、調整しながら集荷しているため「日常使いに困らない野菜の種類」を維持できているそうです。
また、店舗側からの要望を、営業集荷チームが生産者につなぐことで消費者のニーズに即した供給が可能になっています。
グリーンデイズのメリット:廃棄率3%への挑戦と信頼から生まれる「新規開拓」の連鎖
グリーンデイズでは、運営店舗全体の商品廃棄率3%という目標を掲げています。スタッフによる鮮度チェックやリパック(再包装)を徹底し「野菜を捨てない仕組み」を構築しました。この取り組みは、コスト削減だけでなく環境負荷の低減にも貢献しています。
また、集荷の移動中に新しい畑を見つけて営業を行うなど、現場は常に「新規開拓」のチャンスに溢れています。こうした日々の積み重ねが、生産者との強固な信頼関係を築く土台となっているのです。
銀行員から転身!営業集荷チーム・菊地さんの1日

営業集荷チームのひとり、菊地さんの一日を例に具体的な業務内容を見ていきましょう。
菊地さんの朝は早く、午前6時から仕事が始まります。午前中の業務は、アピタ宇都宮店、メガセンタートライアル宇都宮店、カワチ薬品栃木インター店といった「インショップ(スーパー内店舗)」向けの集荷です。農家さんから集荷した野菜を各店舗へ運び、陳列作業までを行うのが日課です。
午前中にルートを2往復すると集荷が一段落し、午後は「社内便」を担当しています。「社内便」とは、生産者が店舗へ直接持ち込んだ品や集荷した野菜を、各店の状況に応じて振り分ける、調整の役割です。
また、ラベル(値札)の作成や、配送中に営業できそうな農家さんを探すのも菊地さんの重要な仕事です。
元銀行員という異色のバックグラウンドを持つ菊地さん。現在はサッカースクールを運営しており、両立しやすい仕事として「営業集荷」を選びました。
この仕事のやりがいを聞くと「作っている野菜をおすそ分けしてもらうなど、農家さんに非常によくしてもらっているところ」とのこと。ビジネスライクな関係を超えた人と人とのコミュニケーションに仕事の価値を見出しているようです。
栃木から全国へ!営業集荷チームが目指すもの

グリーンデイズは今年、栃木県内に1店舗、初の県外出店として茨城県水戸市に1店舗を新規オープンさせる予定とのことです。
「新たな環境において、私たちの営業・集荷モデルがどれだけ通用するかを検証するための『テストマーケティング』の機会。ここで勝ち切ることが、営業集荷システムの完成度を証明する鍵になる」と及川さんは言います。
さらに、栃木県内だけでなく茨城県(水戸エリア)で「農産直売所あぜみち」の出店を予定しています。現地の生産者を開拓し、現地の店舗へ納入する仕組みを水戸チームが構築中です。
全国的な課題である「農家の高齢化」に対し、営業集荷チームは「売るための動線」を整備したいと考えています。「若手の新規就農者が安心して農作業に専念できるよう、チームが販売戦略を一手に引き受け、安定した収益を還元できる体制を作りたい」と菊地さんは語ってくれました。
また「将来的には、営業集荷モデルの全国展開を視野に入れています」と言う菊地さん。
及川さんは「今は新しいエリアや異なる店舗形態でも利益を出せるように再現性のあるシステム作りを目指しています」と笑顔を見せた。
農家と食卓をつなぐ!グリーンデイズが誇る「営業集荷チーム」

グリーンデイズの「営業集荷チーム」は、農家と食卓を効率的につなぐ独自の役割を果たしています。
生産者が栽培に専念できる環境を整え、市街地にある店舗では鮮度と豊富な品揃えを維持する。一連のサイクルを支えているのは、現場を走り続けるメンバー各自の確かな仕事です。
栃木で磨かれた営業集荷システムは、今後、新店舗や茨城(水戸)エリアへと広がっていく予定です。
高齢化が進む地域農業の課題に対し、持続可能な「流通インフラ」としてどのような役割を果たしていくのか、その歩みは着実に進んでいます。
取材を終えて
一消費者として、農産直売所の「営業集荷」というシステムに非常に魅力を感じました。
驚くべきことに、グリーンデイズ独自のこのシステムは、一般の消費者にはほとんど知られていないそうです。「農産直売所あぜみち」の利用者は、この独自の取り組みを知ることで、野菜をより一層新鮮で美味しく感じられるようになるのではないでしょうか。
同時に直売所の魅力である鮮度や味の良さは、各農家さんの手間や時間に支えられていると気づきました。直売所は郊外に多く、気軽に立ち寄れないのが残念なところです。グリーンデイズの「営業集荷システム」が全国に広がる日を筆者も楽しみにしています。





