人吉市を代表するお祭りのひとつ”繊月祭り”。
毎年続けられてきた焼酎蔵主催のお祭りで、市の内外を問わず人気のイベントですが、それがどんなきっかけで始まったのか、どんな想いで続けられてきたのかを知る人は地元人吉市民でも多くありません。
そこで今回は、繊月祭りを運営している”繊月酒造”の社長である堤純子さんに繊月祭りについてのお話を伺ってきました。

繊月酒造とは?どんな酒蔵?
繊月祭りについて紹介する前に、繊月祭りを開催・運営している繊月酒造について簡単に説明させていただきます。
繊月酒造とは人吉市内にある焼酎蔵のひとつです。もともとは峰の露酒造という名前の焼酎蔵でしたが、創業100周年を機に、代表銘柄である”繊月”と同じ繊月酒造と社名を改めました。

会社の名前になるほど人気の代表銘柄である繊月は、人吉市内の居酒屋で銘柄を指定せず米焼酎を頼めば、ほとんどのお店で出てくるほど地元で愛されている焼酎のひとつ。
近年では人吉市内のみならず、県外やアジア、アメリカなど海外にまで市場を広げており、その知名度は人吉以外の場にも広がりつつあります。
球磨焼酎蔵ツーリズム協議会の会長もつとめる堤社長によると、「繊月の認知度アップによって球磨焼酎の伝統文化の継続と、人吉市の認知度アップにつながってくれれば」とのこと。焼酎を通して観光客を増やしたいという想いもあるとのことです。
このように年々活躍の幅を広げている繊月酒造が、今も毎年変わらず開催しているのが繊月祭りです。
繊月祭りとは?
繊月祭りとは、繊月酒造が毎年開催している地域貢献のお祭り。焼酎のふるまいやステージイベント、食品の出店に子どもの遊びコーナーまで、さまざまな企画を運営されていらっしゃいます。



なかには50年ものの古酒などを飲める貴重な試飲コーナーや、変わったところではサイドカーの試乗体験コーナーなどもあります。


人吉市にはいくつもの酒蔵がありますが、こうした酒蔵主体のお祭りを開催されているのは繊月酒造だけ。毎年5,000人前後の方が参加される地域の大事なお祭りのひとつです。
参加者は毎年増え続けており、今年の第36回の繊月祭りは過去最高売上の190万円を突破したそう。参加者の層も年々広がりを見せているそうで、鹿児島や熊本、福岡といった九州各地からの参加者だけでなく、繊月祭りのために毎年埼玉から参加される方などもいらっしゃいます。
そして驚きなのは、このお祭りで出た売上は全て人吉球磨地方の福祉団体や学校などに寄付されていること。利益ではなく売上なので、このお祭りは繊月酒造にとっては完全に赤字のお祭りです。
もちろん運営スタッフの方もボランティアで、繊月酒造の社員のご家族や地元スポーツチームなど、総勢約200名の方で運営されています。なんと事業者として雇われている運営側の方は音響スタッフの方だけとか。
それでも繊月祭りを続けていらっしゃるのは「地域貢献のため」。
こうした想いは売上の全額寄付やボランティアでの運営といった運営形態だけでなく、お祭りの内容にも表れています。
堤社長曰く「繊月祭りは焼酎蔵のお祭りだからといって未成年お断りではありません。むしろ親子三代で子どもでも楽しめるように企画をしています」とのこと。ステージでのくまモンの出演やバルーンアート、子どもの遊べるコーナーなどが用意されているのもこうした理念がベースにあります。

繊月祭りの始まりと地域への貢献
そんな繊月祭りが始まったのは昭和62年。今から38年前に当時の社員の方の発案によってスタートしました。
当時開催されていた繊月祭りの内容は今とほとんど変わらず、ステージイベントや振る舞い焼酎、焼酎にあわせた食事などが提供されていたようです。
初回の繊月祭りを終えた時点では今のように毎年祭りを開催する予定はなかったそうですが、参加者の方から「次はいつやるの?」という多数のお問い合わせの声をいただき、翌年の第2回の開催まで行ったそうです。それからはコロナ禍で開催できなかった数年を除いて、毎年繊月祭りを続けられています。
売上を全額寄付するうえ、社員の方も準備・設営などを行うという繊月酒造にとって大きな負担のかかるイベントですが、社長の堤さんも一度も辞めようと思ったことはなく、社員の方からもそういった声は一度も出ていないとか。
むしろ、堤社長はどこかのイベントでいい出演者がいたら「繊月祭りに出演してくれないかな」とついお祭りのことを考えてしまうと言います。
このように、繊月祭りは繊月酒造に所属する方々にとっても大事なイベントになっていると言えるでしょう。
繊月祭りの売上はどんなところに寄付されるの?
また、繊月祭りは売上の寄付という形を通して、そこに参加している参加者や出展者以外の地域の方々にも長年貢献してきました。
たとえば小学校の図書やプロジェクターの購入費、中学校の楽器の購入費といった教育面に関するものもあれば、国宝青井阿蘇神社の整備費やくま川鉄道所有のおかどめ幸福駅の観光整備費など、観光面での支援もされています。

東日本復興支援金や熊本地震の復興支援金、肥薩線の復旧資金といった災害の復興費用へ寄付されたこともあります。
このように、地域の方への感謝から始まった繊月祭りは昔から今に至るまで、その意志や主義を変えず地域への貢献を続けられているのです。
この記事を読んだ方も、繊月祭りを訪ねて振る舞い焼酎や食事、イベントをぜひ楽しまれてください。そのひとつひとつの楽しんでいただいた体験が結果的に地域への貢献に繋がることでしょう。
【繊月酒造株式会社】
〒868-0052 熊本県人吉市新町1
0966-22-3207
年中無休
9:00~17:00
公式ウェブサイト:http://www.sengetsu.co.jp/index.html
※繊月祭りは毎年5月中旬ごろに開催。詳しくは公式ウェブサイトをご覧ください。