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もの・こと  |    2025.03.10

ベーゴマ専門メーカー「日三鋳造所」と郷土資料館の伝統産業を未来へつなぐ取り組み

日三鋳造所、ベーゴマ
ベーゴマに刻まれているアルファベットは6大学の頭文字

鋳物の町として知られる埼玉県川口市には、日本で唯一のベーゴマ専門メーカー「日三鋳造所」があります。

「日三鋳造所」が自社に展示していたベーゴマを川口市に寄贈し、そのベーゴマが郷土資料館に展示されたことによって、伝統的なベーゴマ遊びが再び注目を集めるようになりました。

「日三鋳造所」代表取締役の辻󠄀井俊一郎さんと、川口市文化財センター「郷土資料館」でベーゴマ普及に取り組む川口市教育委員会の井出祐史さんにお話を伺いました。

ベーゴマと郷土資料館の運命的な出会い

「日三鋳造所」代表取締役の辻󠄀井俊一郎さん(左)と、「郷土資料館」の井出祐史さん(右)

ーどのような経緯で郷土資料館とベーゴマがつながることになったのでしょうか?

辻󠄀井さん:
会社の移転に伴い、大量のベーゴマコレクションを処分しようか、どこか倉庫を借りて保管しようかと考えていた時に、商工会議所から「市に寄贈してはどうか?」と提案されたんです。

井出さん:
私は、たまたまSNSで日三鋳造所が移転する話を聞いて初めて日三鋳造所を訪ねました。そこで貴重なベーゴマコレクションが無くなってしまうかもしれない、と伺って「これはなんとかしなければ!」と思い「郷土資料館にご寄贈いただけませんか?」とお願いしたんです。辻󠄀井さんの言う「市への寄贈の話」があったとは、知りませんでした。

辻󠄀井さん:
最初は市長からの話がきっかけかと思ってたんですが、実は井出さんが単独で動いていたと知って驚きましたよ。

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
日三鋳造所から郷土資料館に寄贈されたベーゴマの一部

井出さん:
鋳物産業の町「川口市」に、ベーゴマコレクションを絶対に残したいという気持ちでした。文化財課や関係各課に提案して最終的に「郷土資料館に置こう」という話になって、あれよあれよという間に話が進みました。

後からわかったことなのですが、偶然にも「日三鋳造所」の移転先が郷土資料館のほぼ向かい側という驚きの事実が明らかになりました。この偶然に背中を押され、川口市の産業文化を残そうという積極的な活動が始まりました。まさに運命的なめぐり合わせだと感じています。

世代を超えて広がるベーゴマの魅力

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
郷土資料館内のベーゴマ道場で実際に遊べます

ー郷土資料館と連携したことで、ベーゴマ遊びをする子供たちが増えたそうですが、何か施策を行ったのですか?

辻󠄀井さん:
小学校の社会科見学の一環で、記念品としてうちの会社のベーゴマを鋳物組合から子供たちにプレゼントしています。せっかくプレゼントしたベーゴマも回せないとつまらないよねってことで、川口市職員の井出さんが学校と連携して、希望する学校で「ベーゴマ教室」を開催するようになりました。

井出さん:
郷土資料館にも、展示だけでなく実際に触れて遊べる場を作ったことが大きな反響を呼んでいます。学校が終わってから子供たちが来たり、週末は親子で遊びに来たり、ベーゴマスペースを作ってから来館者が増えています。週末に不定期で開催するミニ大会は、一日に100人ほど集まることもあるんですよ。

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
トコ(ベーゴマを回す台)の上でベーゴマ同士が弾き合う様子は豪快!

辻󠄀井さん:
「ベーゴマを回したことがない」っていう子どもがほとんどですからね。でも、一度やるとハマるんですよ。教えると誰でも回せるようになります。ゲーム世代の子供たちにとって、伝統的なベーゴマ遊びは新鮮なのかもしれませんね。

井出さん:
世代を超えて楽しめるっていう魅力もありますね! おじいちゃん・おばあちゃんが孫と郷土資料館に遊びにくる姿も見られるんですよ。ベーゴマをきっかけに、違う学校の友達や親子の交流の場にもなっています。

辻󠄀井さん:
ベーゴマって、勝負が技術だけで決まるわけじゃなくて運にも左右されるんです。だから初心者でも勝てることがある。それがみんなを夢中にさせる理由かもしれませんね。

ベーゴマがもたらす伝統産業の新たな可能性

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
昔ながらのベーゴマ。日三鋳造所で1個から購入できますよ

ー郷土資料館でベーゴマ人気が再び高まったことで、「日三鋳造所」のベーゴマ製造にも変化が訪れたそうですね。

辻󠄀井さん:
弊社は日本で唯一のベーゴマ専門メーカーですが、郷土資料館のベーゴマ人気をきっかけに需要が増え、新しい販路へも広がりつつあります。

井出さん:
郷土資料館に来た人たちから「どこで買えますか?」という問い合わせが多くて、目と鼻の先にある「日三鋳造所」を紹介できるのは双方にとって恵まれた環境です。最近では、ショッピングセンター内のテナントや市内のハイウェイオアシスでも取り扱っていただけるようになり、より多くの人が手にできる機会が増えたんですよ。

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
ベーゴマをまわすひもや、回す台「トコ」も揃っています

辻󠄀井さん:
県外の観光施設などとも提携して、特別デザインのベーゴマも作っています。これまで「昔の遊び」として認識されていたベーゴマが、コラボレーションやデコレーションなど新しい発想を通じてコレクションとしても消費者に喜ばれる形へと進化しているのを感じます。

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
ベーゴマのデコレーションも現代ならでは

ーそんなお話をしている間にも、男性がベーゴマを買い求めに訪れました。大人はたくさん買えるからついコレクションしてしまうとのこと。井出さんのアドバイスを熱心に聞きながら、自分用のベーゴマを数種類購入していきました。

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
実際に触りながらお気に入りのベーゴマを選べます

井出さん:
親御さんが「自分が子どもの頃は買えなかったから」といって、親子で数種類買っていくパターンも増えていますね。

子供たちの遊びが伝統産業を未来へつなぐ

日三鋳造所、川口市立郷土資料館、ベーゴマ
大きさや柄もいろいろで、見ているだけでも楽しめます

ー今日のお話を伺って、ベーゴマがただの昔の遊びではなく、世代をつなぎ地域を活性化させる存在だと感じました。

井出さん:
ありがとうございます。ベーゴマで遊ぶ子どもたちが増えれば、その文化や産業も未来へとつながっていく。多くの人にベーゴマの魅力や鋳物の技術を知ってもらうことが、伝統産業を守ることにつながると考えています。私たちは、伝統の遊びと川口の産業文化がこれからも続いていくことを願って活動を続けていきます。

辻󠄀井さん:
本当にそうですね。「将来職人になってベーゴマを作りたい!」とか言う子が出てきたら嬉しいですね。これからも、ベーゴマ文化を守り広めるためにがんばります!

株式会社 日三鋳造所

住所:埼玉県川口市鳩ヶ谷本町1-3-12

電話番号:048-299-8760

営業時間:9:00~17:00

定休日:土・日・祝祭日

公式サイト:http://www.beigoma.com/

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この記事を書いた人

まな

関東在住。フリーランスでWebマーケティングサポート全般を行っています。20年以上におよぶ会社員生活で得た、さまざまな地域や人との出会いが人生の財産になっています。Mediallでは、地元や旅行先などで出会う「オンリーワン・ナンバーワン」をお伝えしていきます。

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