
副業や起業、転職など、働き方の選択肢が広がる現代。一方で、新しい挑戦を前に立ち止まってしまう人も少なくありません。
株式会社NISTATES代表取締役の浦野元克さんは、そうした人たちの内面にある「マインドブロック」に向き合い、オンラインコーチングを通じて挑戦を支援しています。また、自分の思考の癖や課題を可視化する診断アプリの開発・リリースも行いました。
現在は多くの人の背中を押している浦野さんですが、その原点には、自身が大きな挫折を経験した過去がありました。
東京の真ん中で「ゼロ」になった一人の若者は、なぜ人の可能性を引き出すコーチになったのでしょうか。
今回は、浦野さんの歩みと、人生を前に進めるためのヒントについてお話を伺いました。
「なぜ動けないのか」を問い続けた日々

愛知県出身の浦野さんは、名古屋芸術大学を卒業後に上京し、デザイン専門学校の夜間課程で学んでいました。デザインの道を志していたものの、将来への不安を抱えるなかで2011年3月11日を迎えます。
東日本大震災が発生した当時、就職先はまだ決まっていませんでした。
「あの頃は、電気もガスも水道も止まっていて、口座残高も9,000円くらいしかなかったんです」
家賃も払えず、将来の見通しも立たない。そんな状況のなかで、浦野さんは思うように動くことができなかったといいます。
「デザインで生きていきたい気持ちはあったんです。でも、なぜか動けなかった。やりたいことのはずなのに楽しめないし、行動にも移せない。今振り返ると、あの頃の自分は完全に止まっていました」
当時は震災の影響もあり、社会全体が先の見えない状況にありました。しかし浦野さんは次第に、環境だけが原因ではないのではないかと感じるようになります。
「もちろん環境の影響はあったと思います。でも、もし環境が違っていたとしても、自分は同じように動けなかったんじゃないかと思ったんです」
その気づきが、自分自身の内面と向き合うきっかけとなりました。
マインドブロックとは?人生を止める「思い込み」の正体
自分はなぜ動けないのか。
その答えを探すなかで出会ったのが、「マインドブロック」という考え方でした。
「僕にとっては衝撃でした。誰かに止められているわけではなく、自分で自分を止めていたんだと気づいたんです」
浦野さんによると、マインドブロックとは「どうせ○○だから」という思考の癖のことです。
例えば、
「競合が多いから無理」
「今から始めても遅い」
「自分には才能がない」
「コミュニケーション能力がない」
このような考えが先に立つことで、本当にやりたいことを諦めてしまう状態を指します。
「誰も禁止していないんです。でも、自分で第一希望を却下してしまう。実は多くの人が無意識のうちにやっていることなんですよ」
実際にコーチングの現場でも、「やりたいことがわからない」と相談に訪れる人の多くが、本当はやりたいことを心の中に持っているといいます。
ただ、その選択肢を無意識のうちに「自分には無理だ」と判断し、自ら除外してしまっているのです。
浦野さんは、そうした状態こそがマインドブロックの正体だと考えています。
SEOコンサルティングからコーチングへの転機
マインドブロックと向き合った後、浦野さんは会社員として働く傍ら、副業でSEOコンサルティングに取り組むようになります。
実際に成果も上がり、1件150万円の契約を獲得するなど、ビジネスとしては順調でした。
しかし、そのなかである違和感を抱くようになったといいます。

「売上は上がっていましたし、契約も取れていました。でも、お金だけでは思ったほど喜びにつながらなかったんです」
クライアント企業を支援するなかで気づいたのは、同じようにノウハウや戦略を提供しても、成果を出す人と出せない人がいるということでした。
「やり方は同じなのに、動ける人と動けない人がいるんです。最初は不思議だったんですが、だんだんその違いはスキルではなく、その人自身のあり方にあるんじゃないかと思うようになりました」
なぜ行動できる人とできない人がいるのか。
なぜ知識があっても前に進めない人がいるのか。
その問いを深掘りしていくなかで、浦野さんの関心はマーケティングやコンサルティングといった外側の施策から、人の思考や価値観へと向かっていきました。
そこで浦野さんは、人の行動や可能性を制限している心のブレーキに向き合うため、コーチングの領域へ本格的にコミットすることを決意します。
行動できる人とできない人を分けるもの
これまで数多くの相談者と向き合ってきた浦野さんは、行動できる人にはある共通点があると話します。
それは、自分自身に許可を出していることです。
「高望みしてもいい。失敗してもいい。人に頼ってもいい。そういう許可を自分に出せている人は行動が軽いんです」
一方で、行動できない人ほど自分を厳しく縛っているケースが少なくありません。
「ちゃんと準備してからじゃないとダメとか、失敗しちゃいけないとか。そうやって自分に制限をかけてしまうんです」
能力や知識の問題ではなく、自分自身が作り出した心のブレーキが行動を止めていることもあるといいます。
自分らしい働き方を見つけるヒント

近年は副業や起業への関心が高まり、「自分らしい働き方」を模索する人も増えています。
しかし浦野さんは、最初から「お金になるかどうか」を基準に考えないことが大切だと話します。
「お金になるかどうかから考えると、だいたいやりたくないことにたどり着くんですよ」
そこで浦野さんが勧めているのが、「絶対に嫌なこと」を書き出す方法です。
「まずは嫌なことを明確にしてみるんです」
理想を一気に見つけようとするのではなく、自分の価値観を少しずつ拾い集めていく。その積み重ねが、自分らしい働き方につながっていくといいます。
「弓矢で一発で的を射抜こうとしなくていいんです。小さなかけらを集めていく感覚です」
自分にとって心地よいこと、反対にどうしても受け入れられないこと。その両方を知ることで、自分らしい選択肢が少しずつ見えてくるのかもしれません。
住む場所に左右されないキャリア形成
浦野さんのもとには、北海道をはじめ地方在住の相談者も多く訪れます。
インターネットやSNSの普及によって、今では場所にとらわれずに仕事や情報発信ができるようになりました。

「実際に地方からオンライン交流会を主催したり、事業として収益化したりしている方もいます」
一方で、「地方だから無理」「周りにやっている人がいないから難しい」と考えてしまう人も少なくありません。
「もちろん地域による制約はあります。でも、本当にそれが原因なのか、一度立ち止まって考えてみる価値はあると思うんです」
場所や環境だけでなく、自分自身の思い込みが可能性を狭めていることもある。だからこそ、まずは自分の内面を知ることが大切だといいます。
マインドを可視化する「ビジネス0→1ポテンシャル診断」を開発

多くの人が、自分でも気づかないマインドブロックによって可能性を狭めてしまっている。そんな現状を変えたいという思いから、浦野さんは診断アプリ『ビジネス0→1のポテンシャル診断』を開発しました。

「悩んでいる人のなかには、自分が何に悩んでいるのかわからない人も多いんです」
行動できない理由がわからない。何を改善すればいいのか見えない。その状態では、解決策を探すことも難しくなります。
そこで浦野さんは、自分の思考の癖やマインドの傾向を可視化できるツールを作ろうと考えました。

「良いことだけを言われても、人って意外と納得しないんですよね」
あえて課題や弱点にも目を向けることで、自分自身と向き合うきっかけをつくる。それが診断アプリの狙いです。
プレリリースでは満足度95%を記録するなど、利用者からも高い評価を得たそうです。
人の可能性が動き出す瞬間を支えたい

取材を通して印象的だったのは、浦野さんが何度も「人が変わる瞬間」について語っていたことでした。
その話にはどこかアーティストのような感性がありながらも、実体験と理論に裏打ちされた説得力がありました。
今後はマンツーマンコーチングだけでなく、自分自身でマインドと向き合えるセルフコーチング講座の構想もあるそうです。
自分で自分の世話ができるようになれば、人生を変えるスピードも速くなる。
だからこそ、より多くの人が自走できる仕組みをつくりたいと考えています。
そんな話をするなかで、浦野さんはこう語りました。
「コーチングをしている時が楽しいんですよね」
その言葉からは、人が自分の可能性に気づき、一歩を踏み出す瞬間に立ち会えることへの喜びが伝わってきました。
かつて将来への希望を見失い、自分自身の人生が止まってしまった経験は、浦野さんにとって大きな転機となりました。しかし、その経験があったからこそ自分自身と向き合い、今では多くの人の挑戦を支える存在となっています。
新しい一歩を踏み出せずにいる人にとって、浦野さんの歩みと言葉は、自分を縛っている思い込みに気づくきっかけになるかもしれません。




