幼い頃から、Rinaはその問いを抱えていた。
勉強をして、大学へ進学し、就職をする。多くの人にとって「あたりまえ」とされる生き方に、どこか馴染めなかった。
このまま生きて、その先に何があるのだろう。
何のために生きているのだろう。
答えのない問いを抱えたまま、自分の居場所を探し続けた。
そんな彼女が出会ったのが、「食」と「写真」だった。
国内初個展『食の鼓動 – The Pulse of Food -』に込められたのは、ひとりの人間が「生きることとは何か」を探し続けた軌跡だった。


国内初個展『食の鼓動 – The Pulse of Food -』。
そこにあるのは、生まれ、変化し、朽ち、また新たな命へとつながっていく、生命の営みそのものだ。
「食=生きることそのもの」をテーマに制作された作品たちは、食材の美しさだけを切り取ったものではない。
今回の展示は、作品の発表であると同時に、Rina自身が長年向き合ってきた問いの現在地でもある。
問いは、ずっと胸の奥にあった

子どもの頃、夢中になれるものがなかった。
勉強をして、進学して、働く。
多くの人が自然に受け入れている「あたりまえ」に、なぜか違和感があった。
社会の型にはまり、そのレールの上を歩いていくこと。
その先に待つものが何なのか、分からなかった。
「このまま生きて、その先に何があるんだろう。」
「何のために生きているんだろう。」
生きるとは一体何か。
どのような意味を持つのか。
その問いは、幼い頃からずっとRinaの中にあった。
「もっと知りたい」と思えた、はじめての時間

学校を離れ、自分探しをしていた頃。
自炊をするなかで、パン作りやお菓子作りに興味を持った。
生地の感触。
焼き上がる香り。
少しの温度や時間の違いで変化する表情。
「初めて、時間を忘れて没頭できたんです。」
製菓の専門学校へ進み、パン作りを学ぶ。
人生に初めて、「もっと知りたい」と思えるものが現れた瞬間だった。
誰かの正解ではなく、自分の「好き」を選ぶ

作ったパンやお菓子を撮るうちに、写真そのものにも惹かれていった。
パン作りと写真。
二つの表現を行き来しながら、やがて「食の魅力をもっと伝えたい」という思いが、写真へと向かわせた。
そして気づく。
人生は、誰かに用意されたものではないということに。
楽しさは、誰かが与えてくれるものではない。
自分で探し、自分で選び、自分で育てていくものなのだと。
社会や誰かのせいにしていた自分に気づいたとき、人生の責任は自分自身にあるのだと知った。
その事実は、怖さと同時に、大きな自由でもあった。
生きることは、思っていたよりも面白いのかもしれない。
そう思えた。
食べることは、生かされることだった

フードフォトグラファーとして活動を始めたRinaは、スーパーのチラシだけでなく、メーカーのキービジュアルやパッケージなど、幅広い仕事を手がけてきた。
だからこそ、生まれた違和感もあった。
「こう撮ってください。」
「こう伝えてください。」
誰かが決めた正解に、自分の表現を合わせていくこと。
それはクライアントワークとして大切な役割だ。
けれど、ふと考えるようになった。
もし誰が撮っても同じなのだとしたら、そこに自分が撮る意味はあるのだろうか。
もっと違う伝え方があるのではないか。
もっと、その奥にあるものを届けられるのではないか。
その問いは、再びRinaを動かし始めた。
問いは、作品になる

食材の向こうには、人がいた。
土を耕す人。
魚を獲る人。
火を扱う人。
誰かが命と向き合い、手をかけ、時間を注いでいる。
食べるということは、誰かの営みを受け取ることでもある。
そして、命をいただくことでもある。
食は、単なる栄養補給ではない。
生きること、そのものだった。
終わりは、別のはじまりへと続いていく

アーティストとして作品を制作するとき、Rinaはまずテーマを決める。
「何を撮るか」ではなく、「何を問いたいか」。
食材は、その問いを表現するための存在だ。
一貫して向き合い続けてきたテーマは変わらない。
「生きるとは一体何か」
その問いに、何度も立ち返りながら制作を続けている。
感じたことは、誰にも奪われない

食は朽ちていく。
腐敗し、形を変えていく。
けれど、その終わりは終わりではない。
菌が生まれ、新たな命を育み、別の営みへとつながっていく。
死と生。
終わりと始まり。
相反するように見えるものは、実はひと続きの循環のなかにある。
『食の鼓動』は、その気配にそっと触れようとする展示なのかもしれない。
それでも、問い続けていく

Rinaは、作品の感じ方に正解はないと話す。
美しいと思ってもいい。
戸惑ってもいい。
違和感を覚えてもいい。
何も分からなくてもいい。
作品と向き合った時間のなかで、自分が何を感じたのか。
その感覚こそが大切なのだという。
誰かの答えではなく、自分自身の感覚で受け取ってほしい。
それは、作品との向き合い方であると同時に、自分の人生との向き合い方にもどこか似ている。
そして、これから

生きるとは一体何か。
どのような意味を持つのか。
その問いに、まだ答えは出ていないのかもしれない。
けれど、問い続けることをやめなかったからこそ、食と出会い、写真と出会い、表現と出会った。
そして今、「私じゃないとできない仕事をしていきたい」と語る。
アーティストとして、自分自身の問いを表現すること。
写真家として、誰かの伝えたい想いに寄り添うこと。
その二つを行き来しながら、Rinaはこれからも、生きることの輪郭を探し続けていくのだろう。
『食の鼓動』は、答えを与えてくれる展示ではない。
ただ静かに、私たちにも問いを差し出してくれる。
あなたにとって、生きるとは一体何か。
どのような意味を持つのだろうか。
イベント情報
展覧会名:食の鼓動 -The Pulse of Food-
会期:2026年6月18日‐6月29日(開催済み)
会場:Gallerry Sasaki
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目6-4 佐々木ビル3F
開館時間:11:00-19:00(最終入場18:30)
入場料:無料
イベントHP:https://www.rina-foodphoto.com/thepulseoffood
オフィシャルHP:https://www.rina-foodphoto.com/
Instagram:https://www.instagram.com/foodphotographerrina/
衣装協力:https://filodc.com/




