美容院は髪を整えるだけの場所ではありません。
何気ない会話を楽しみ、子どもの成長を一緒に喜び、時には人生の節目を見届ける場所でもあります。神戸市長田区にある「fssty’s HAIR(フェスティーズ ヘアー)」は、そんな温かな時間が流れる美容院です。
店主の石間文崇(いしま ふみたか)さんにお話を伺うと、お店の名前や空間づくりには、家族への愛情と地域への感謝が込められていました。

何気ないきっかけから始まった美容師への道
石間さんが美容師を目指すようになったきっかけは、学生時代の何気ない出来事でした。散髪代を少しでも節約しようと、友人同士でお互いの髪を切り合っていたそうです。
「髪を切ることが楽しくて、『これ、好きやな』と思ったんです。本当に何気ないことがきっかけでした」
その楽しさが、美容師という仕事を目指す第一歩になったと石間さんは話します。
高校卒業後は美容院へ就職し、働きながら通信課程で美容師資格の取得を目指しました。そうして、美容師としての道を歩み始めます。
美容師として歩み始めた石間さんが、やがて独立の場所として選んだのが、自身が育ったこの地域でした。
地元への恩返しをしたいという想いで開業

石間さんが「fssty’s HAIR」を開業したのは2017年。来年の2027年には10周年を迎えます。
独立を考え始めた頃、どこで開業するか悩んでいた石間さんの頭に浮かんだのは、自分が育ったこの地域でした。
現在お店がある場所には、かつて「金太郎」という地域で親しまれた理髪店がありました。
子どもの頃は「散髪といえば金太郎」というほど知られた存在で、来店した子どもは飴のつかみ取りを楽しみにしていたそうです。
地域の人に惜しまれながら閉店し、約10年間空き家となっていたその場所で、新たな一歩を踏み出しました。
開業当初は決して順風満帆ではありませんでしたが、友人や地域の方々の口コミが少しずつ広がり、今では家族連れを中心に多くのお客様が訪れる美容院になっています。
「この地域の人たちが本当に好きなんです」
そう笑顔で話す石間さんの言葉からは、地域への深い愛着が伝わってきました。
家族への想いが込められた店名「fssty’s HAIR」
そんな石間さんが大切にしているのが、家族です。その想いは、店名にも表れています。
「fssty」は、石間さんご本人と奥様、3人のお子さん、5人それぞれの名前の頭文字を組み合わせたもの。そして最後の「’s」には、家族だけでなく、これまで支えてくれた多くの人への感謝の気持ちが込められています。
家族の話になると、石間さんの表情は自然とほころびます。
「家族が好きなんです」
その一言には少し照れた様子もありましたが、奥様やお子さんの話をする穏やかな笑顔から、家族を何より大切にしていることが伝わってきました。

家族への想いの背景にあった、忘れられない時間
石間さんが家族との時間を大切にする背景には、忘れられない出来事があります。
美容師として働き始めてわずか2か月後、石間さんは交通事故に遭い、半年間の入院生活を送ることになりました。
その間、毎日のように病院へ足を運び、支えてくれたのが、お母様と高校時代から交際していた現在の奥様でした。
退院後、ようやく日常を取り戻そうとしていた石間さんのもとに、今度は思いがけない知らせが届きます。
その年の12月、お見舞いに通ってくれていたお母様に、がんが見つかりました。
医師から告げられた余命は、3か月でした。
「母に結婚した姿を見せたい」
その想いから、石間さんは親族だけで結婚式を挙げたそうです。
その後、お子さんを授かりますが、お母様は初孫の誕生を待たずに旅立たれました。
大切な人との別れと、新しい命の誕生。
そして迎えた四十九日。納骨の日に、奥様の出産が重なりました。
納骨へ向かうのか、それとも出産に立ち会うのか。どちらを選ぶべきなのか、石間さんは悩みました。
そんな石間さんの背中を押したのは、お父様の一言だったそうです。
「出産に立ち会ってこい」
その言葉を受け、石間さんは病院へ向かいました。そして、その日に第一子が誕生します。
「母が空から見守ってくれているのかもしれない」
そんな想いを込め、石間さんは3人のお子さん全員の名前に「空」という漢字を入れました。
その両方が重なった一日は、石間さんにとって忘れられない時間になったのだと思います。
石間さんにとって、「家族」という存在は店名の由来だけではありません。
これまでの人生で家族に支えられ、そして新しい家族を迎えてきた経験が、今のお客様との向き合い方にもつながっているのかもしれません。
「fssty’s HAIR」では、母親がカットをしている間、隣の席で子どもが宿題をしながら待つこともあります。
また、開業当初から通っている子どもたちの成長を見守れることも、美容師として大きな喜びだといいます。
最初は緊張して、なかなか話せなかった子。
そんな子が成長し、ある日、自分から学校であった出来事を話してくれるようになる。
「そういう変化が嬉しいんです」
そう話す石間さんからは、お客様を単に「髪を切る人」としてではなく、一人の人として大切に見つめていることが伝わってきました。

※後日、子どものカットで伺った際に撮影した写真
親子で安心して通える、緊張しない美容院を目指して
「美容院って緊張する人が多いと思うんです」
だからこそ、気軽に相談でき、肩の力を抜いて過ごせる雰囲気づくりを大切にしているそうです。
店内は黒を基調としながらも、天井には木目を取り入れることで圧迫感を抑え、温かみのある空間に仕上げています。

「明るく見えるでしょう?ここはこだわりなんです」
そう話す石間さんの笑顔からも、お客様にリラックスして過ごしてほしいという想いが感じられました。
地域とともに歩む美容院
「fssty’s HAIR」は、髪を整える場所であると同時に、人と人とのつながりが生まれる場所でもあります。
子どもの頃、自分自身が通っていた地域の理髪店。
その場所で今度は自分が美容院を開き、地域の子どもたちの成長を見守る側になりました。
家族への愛情、地域への感謝、そして一人ひとりのお客様を大切にする気持ち。
その積み重ねが、「fssty’s HAIR」が地域の人たちに長く愛され続ける理由なのかもしれません。
「美容院は緊張する場所」というイメージを少しでもなくしたい。
そんな石間さんの想いが詰まった「fssty’s HAIR」で、肩の力を抜いて過ごすひとときを体験してみてはいかがでしょうか。

fssty’s HAIR
住所:兵庫県神戸市長田区上池田3丁目16-16
営業時間:9:00~19:00(予約優先)
※カラー・パーマ受付は17:00まで
定休日:不定休(電話にて要確認)
電話番号:078-647-6366
※予約はお電話にて対応
駐車場:あり



