大阪市東成区・新深江駅のほど近くに鎮座する深江稲荷神社は、「笠縫」文化と深く結びついた珍しい神社と言われています。「笠縫邑跡」、「深江菅笠ゆかりの地」という大阪市指定史跡を境内に持ち、地域の産業が国家的儀礼と結びついていたことを示す歴史的な証としても貴重な存在です。今回は実際に行ってきたので深江稲荷神社の様子をご紹介します。
深江はかつて菅の一大名所

大阪東成区の新深江はかつて良質の菅が広く生い茂った場所だったため、笠を縫うことを職業とした笠縫氏の一族がこの地に集団移住し、菅笠の名所として栄えたと言われています。江戸時代中頃から、一般の人たちの間でも伊勢参りが盛んとなり、道中用の菅笠の需要が増します。そこで、深江の存在が一気に人々に知れ渡ることになります。
伊勢音頭の一節に「大阪はなれてはや玉造、笠を買うなら深江が名所」と歌われるようになるほど、人々の間に浸透しました。本居宣長の「玉勝間」の中にも「笠縫島は今摂津国東生郡(現在の東成区)の深江村といえる所なるべし」と書かれていたように、当時この辺りは、全戸が菅笠作りに従事し、「笠縫島」と呼ばれていました。

笠縫氏はもともと古代から神事用の笠や祭具を作る「笠縫邑」に属した職能集団であり、伊勢神宮とも深い関係を持っていたと言われています。その関係もあって、深江の菅笠は歴代天皇の御即位式や、伊勢神宮の式年遷宮に儀式用として用いられるなど、地域の産業である笠縫が国家儀礼と結びつくようになったそうです。実際、当時は笠を作る人は神事を支える人でもあり、そこから、笠縫が暮らした土地は神聖な土地と考えられるようになりました。
そのため、ここに深江稲荷神社が整えられ、地元の人たちに信仰されるようになったというわけなんですね。その史実を残す貴重な場所となっています。そして、その史実を残す貴重な稲荷神社として、深江稲荷神社は存在しています。
あちこちに残る「すげ」の文字

新深江神社は大阪メトロ千日前線の新深江駅を降りてすぐのところにあります。駅を降りたらすぐ看板がありました。そこには「菅笠の里 深江歴史街道MAP」の文字が……。

神社前の駐車場にも「菅笠の里」の看板がありました。「お伊勢参りへ旅立ちのまち」とあり、お伊勢参りに旅する時には必需品として菅笠が使われていたことを窺わせます。ここからが参道で、鳥居は正面ではなく横なのですが、見える位置にあります。

その間にも「すげの道」という文字が……。繁栄していた痕跡が感じられます。

鳥居に行くまでの間に、人間国宝の角谷一圭氏の生家があります。角谷一圭氏は茶の湯釜などの鋳金で有名な方ですが、さすが菅笠の里だけあって、こちらの入り口に菅笠が飾られているのが粋ですね。

こちらの看板の子も菅笠をかぶっていますね。徹底しています。
境内には大阪市指定史跡の「笠縫邑跡」が……

こちらが拝殿です。落ち着いた雰囲気で、悠久の歴史を感じさせます。
境内は「笠縫邑跡」「深江菅笠ゆかりの地」として大阪府・大阪市の史跡に指定されています。

こちらがその跡を表す石柱です。いまはもうこの文字しか歴史を表すものがありませんが、こうやって証を残したことで後世にも笠づくり文化がこの地で栄えたということが伝わっていくのでしょうね。
深江稲荷神社はいかがでしたか?稲荷神社といえば、商売繁盛の神様という印象が強いのですが、こちらの深江稲荷神社はそれだけではないようです。ものづくりへのリスペクトがあり、職人、地域産業と信仰が共存する神社といえるでしょう。そんなかつての歴史を息吹を感じに、是非お詣りに行ってみてくださいね。
深江稲荷神社の詳細情報
住所:〒537-0002 大阪府大阪市東成区深江南3丁目16-17
電話番号:06-6971-4223
アクセス:近鉄奈良線・大阪線「布施駅」北出口より北へ約800m
大阪metro(地下鉄)千日前線「新深江駅」3番出口より東へ約700m
大阪シティバス(市バス)86号「高井田」停留所から北西へ約100m




