三重県いなべ市の金井神社は、800年以上鎮座し、地域を見守り続ける歴史ある神社です。
コロナ禍に始まった「花手水(はなちょうず)」は当初、反対の声もありました。
それでも想いがあって続けた結果、北陸・関西・関東からも参拝者が訪れる名所へ。
その誕生秘話をお届けします。
「厳しいご意見もいただきました」
そうお話しされるのは神職であるお二人。
種村睦吉さんと種村毬衣さん。
三重県いなべ市に鎮座する、叶の宮・金井神社(かないのみや・かないじんじゃ)の話です。
今では色とりどりの花手水の写真がSNSに溢れ、北陸からも、関西からも、関東からも参拝者が訪れるこの神社が、かつてそんな反対もあったとは、想像できないかもしれません。
しかし、その言葉があったからこそ、今の金井神社があります。
今回は、いなべ市観光を語るうえで外せない「叶の宮・金井神社」の、魅力をお伝えします。

取材当日の朝、空は気持ちよく晴れ渡っていました。
「今日はいい写真が撮れる!」
そんな期待を胸に出発したのですが、現地へ向かう途中で空は一変。
雷が鳴り響く大雨になってしまいました。
結局、写真撮影は後日かと少しがっかりしながらも、まずは参拝を済ませ、神職の方にお話を伺いました。
ところが取材が終わる頃には、青空が見え始めたのです。
偶然と片付けるには、できすぎたタイミングでした。
「もしかして、これが叶の宮のご利益⁉︎」
「叶う」という名は、参拝者がつけた

① 1221年の創祀と「叶の宮」の由来
金井神社の創祀は、1221年(承久3年)2月11日。
鎌倉時代、地域の人びとが五穀豊穣と郷中の安全を祈り、伊勢神宮より御分霊をいただいて社を創建したのが始まりです。
相次ぐ洪水や飢饉から地域を守ってほしいという、切実な祈りがこの神社を生みました。
もともとは「金井さん」と呼ばれていたこの神社が、「叶の宮(かないのみや)」と呼ばれるようになったのは、参拝者の声がきっかけでした。
「願いが叶いました」
訪れた人びとが、「金井=叶い」と、自然にそう呼ぶようになっていきました。
「叶う」という言葉は、地域と参拝者が長い年月をかけて育ててきた名前でもあります。
② 鎮座800年、地域の氏神として

北金井・西方・大泉・東一色。
その地域の氏神として、金井神社は800年以上、ずっとそこにありました。
地域の人が生まれ、育ち、結婚し、子を授かり、老いていく。
その一つひとつの節目に、金井神社はそっと寄り添ってきたのです。
いなべ市で育った方なら、幼い頃に境内を駆け回ったり、初詣に訪れたりした記憶があるかもしれません。
気づかないうちに、暮らしの一部になっていた神社。
それが金井神社です。
2021年には鎮座800年という大きな節目を迎えました。
本来であればすぐに祝いたかったところですが、コロナ禍の影響で奉祝祭典は翌2022年10月まで延期に。
それでも、800年という歳月を経てなお、地域の人びとに大切にされ続けているという事実は、何よりもこの神社の底力を物語っています。
800年、変わらずここにある。
それだけで、訪れる価値があります。
コロナ禍が生んだ「花手水」誕生秘話

① 草が茂っていた境内が変わるまで
今の金井神社の様子からは想像つきませんが、花手水が始まる前は境内に草が茂り、参拝者も少ない状態でした。
転機は、2020年6月。
世界中がコロナを警戒し、人が触れるものにはアルコール消毒。感染を防ぐための対策に人々が追われていた時です。
手水舎での柄杓を使った清めが、感染対策として難しくなりました。
そのため、柄杓の使用をやむを得ず禁止したところも多かったのではないでしょうか。
「どうすれば参拝者に清めの時間を届けられるか」。
そう考えたとき、生まれたのが「花を見て心が洗われる」という発想でした。
手は洗えなくても、花を愛でることで心が清められる。
その想いから、花手水がスタートしました。
② 花手水に「反対の声」
新しい試みには、批判もありました。
「勝手にするな」という声が上がったこともあったそうです。
長年の伝統を大切にしてきた地域だからこそ、新しいことへの抵抗感があったのでしょう。
反対の意見からも神社を大切に思う気持ちが伝わります。
批判を受け止めながらも、神職の方の心を支えたのは、それでも足を運んでくれる参拝者の姿でした。感染予防のため、外出もままならないあの時期に、それでも神社へ足を運ぶ人がいました。
ひと息つける場所を求めて。
花を見て、心が洗われ気持ちが軽くなりますように。
「来てくれる人がいる」。
それだけで、続ける理由には十分でした。
地域と連携し、四季折々の花を選定・奉納する体制が整えられていきました。
今では参拝者が花を持ち込んで奉納(献花)することも受け入れています。
花手水は”毎日変わる”生きたアート
① 季節ごとの表情
金井神社の花手水が特別なのは、その表情の豊かさ。
季節の花で彩られ、かわいいブリキの金魚が泳ぎ、キラキラとビー玉に光が当たり反射しています。
風で水面が揺れ、少しずつ違う形を見せる様子は、水上アートのようです。
② 撮りたくなる・また来たくなる仕掛け

同じ形や同じ輝きの花手水は、もう見ることはできない唯一無二。
そのため、またここを訪れたくなります。
花手水がSNSで広がり、いなべ市の神社として金井神社の名前が全国に知られるようになりました。
北陸から、関西から、関東から。
毎月欠かさず訪れる参拝者も多いです。
「三重 御朱印」を調べて訪れた人が、花手水の美しさに心を奪われ、また来てしまう。
そんな流れが生まれています。
いなべ市観光の目的地として、金井神社の存在感はこうして育っていきました。
まとめ

反対の声があっても、続けた。
来てくれる人がいたから。
その選択が、神社を、そして地域を変えていきました。
花手水は、今日もまた、誰かの心を洗っています。
いなべ市を訪れる機会があれば、ぜひ一度、叶の宮・金井神社へ。
きっと、また来たくなる場所になるはずです。
叶の宮 金井神社:基本情報
住所:三重県いなべ市員弁町北金井911
御朱印(直書き)受付:9:00〜15:00 ※毎週火・水曜日は書き置きのみ(1日・祝日を除く)
御朱印(書き置き):9:00〜16:00 ※祭礼日は、直書対応日でも書き置きのみとなる場合があります。
授与品受付:9:00〜16:00
アクセス:東海環状自動車道「大安IC」より約5分三岐鉄道北勢線「楚原駅」より徒歩約20分(1.4km)
駐車場:境内約10台・向かいの公民館約30台(計40台)
公式Instagram:https://www.instagram.com/kanaijinjya/
金井神社 公式ホームページ:https://www.kanaijinjya.com




