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アート  |    2026.04.21

有名建築家が手がけた、山中に現れる美術館|滋賀・MIHO MUSEUMを訪ねて【前編】

自然や山々と同居する、ルーヴル美術館も手がけた建築家による設計

バスに揺られて約50分。いくつかの川を越え、山中に続く静かな林道を抜け切ると、そこに美術館が現れる。

滋賀県甲賀市の山中にあるMIHO MUSEUM(ミホ・ミュージアム)を訪れた。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

パリ・ルーヴル美術館のガラスピラミッドの設計も手がけ、1983年のプリツカー賞の受賞建築家でもあるI.M.ペイによる建築だ。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

1997年の開館当初から世界を視野に入れていたというMIHO MUSEUMは、2017年にはルイ・ヴィトンによるランウェイ会場ともなり、話題になった。

当時のアーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールを始め、世界各国からルイ・ヴィトンと縁のあるセレブリティがここMIHO MUSEUMに集まった。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

私が美術館を訪れた日、バスの車内には英語をはじめ、さまざまな言語が飛び交っていた。

MIHO MUSEUMの広報担当によると、来場者の約3割が海外からの観光客だそうで、欧米やアジアだけでなく、南米チリなど世界中から人が集まる。この美術館を目的に滞在日程を組む人も少なくないそうだ。

 

なぜ、人々は遠く離れたこの山中まで、わざわざ足を運ぶのか。

「便利だから訪れる」とはまた別の、この美術館が持つ魅力を探ってみたい。

自然の風景を切り取り、溶け込む設計。自然と調和する美術とは

都市型美術館とMIHO MUSEUMの最大の違いは、その「前提」にある。

 

都市型美術館では、頻繁に入れ替わるコレクションや来館者に対応するため、「便利さ」が重視されがちだ。

しかし、MIHO MUSEUMはその対極にある。

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

駅から遠く離れた山中というロケーション、そしてアプローチから美術館までを歩く道のりや空間の余白までが、美術鑑賞体験の一部として設計されている。

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

本館に足を踏み入れると、大きく開けたパノラマの窓。これは、日本の屏風を自然の風景で描くイメージで作られたという。そう言われると、斜めに植えられた松の配置も納得がいく。

 

自然公園法の制約を受ける立地柄、この美術館は恵まれた自然環境をできるだけ保護するように設計されている。その結果、約17,000㎡の総面積のうち約2,000㎡しか建物を地表に出せなかった。つまり、美術館の約85%は地下にある。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築
美術館本館とアプローチのスケッチ。建物が山中に埋もれ、自然と一体化する設計(MIHO MUSEUMカタログより)

 

実際に館内を歩いても、地下部分がこれほど多いとは気づかない。建物にはガラス窓が多用され、自然光が巧みに取り込まれている。日本文化における陰影の美を、光によって置き換える——そんな発想で設計されているという。

I.M.ペイは、日本的な要素と、景観に溶け込む現代建築のデザインを融合させながら、この空間をかたちづくっている。

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築
館内のカフェ Pine View

滋賀とパリをつなぐライムストーン。細部に見るI.M.ペイの建築哲学

バスを降りて、MIHO MUSEUM本館に向かう際、長いトンネルを抜け、全長120メートルの吊り橋を渡る。緩やかにカーブしたトンネルからは、美術館の入り口はなかなか見えず、最後の瞬間にようやく姿を見せる。

目的地をなかなか見せないカーブした小道は、日本の寺院でもよく使われる手法で、このトンネルはそうした日本の思想も巧みに取り入れている。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

MIHO MUSEUMの構想当初は、東洋美術コレクションを中心とした、小規模な美術館となるはずだった。しかし、I.M.ペイの「これからの美術館は国際的であるべき」という提案をうけて、東洋だけでなく世界各地の美術品も加わり、収蔵コレクションは3,000件を超える非常に大きなものとなった。

 

そして「国際的であるべき」という考えを体現するように、館内にはI.M.ペイが好んで用いたフランス産のライムストーンが随所に使われている。

ルーヴル美術館のガラスピラミッド周辺にも採用されたこの素材が、滋賀とパリという遠く離れた場所を、静かにつなぐようだ。

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築

建築的な視点においても、I.M.ペイの一貫した姿勢がうかがえる。そしてその延長線上にあるのが、古代エジプトから西アジア、ギリシア・ローマ、南アジア、そして中国やペルシアへと続くMIHOコレクション展(常設展)だ。建築と展示がゆるやかに連動しながら、世界の文化がつながっていく流れを体感できる構成になっている。

 

続く後編では、世界水準ともいえる充実したコレクションを誇るMIHO MUSEUMの収蔵品に焦点を当て、その魅力に迫る。

後編はこちら

古代エジプトから世界を横断|滋賀・MIHO MUSEUMを訪ねて(後編)

 

MIHO MUSEUM 詳細情報

住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300

開館時間:午前10時~午後5時(最終入館 午後4時)

入館料:大人 1300円、高校・大学生 1000円、小学・中学生 無料

交通

  • JR石山駅より帝産バス「ミホミュージアム」行乗車(約50分)
  • で、新名神高速「信楽IC」より約15分、同「草津田上IC」より約20分、名神高速「栗東IC」より約30分、京滋バイパス「瀬田東IC」より約30分、名阪国道「壬生野IC」より約35分

駐車場:大型バス20台 普通車300台(駐車無料)

*館内にレストラン、カフェ、売店あり

URL: https://www.miho.jp/

2026年4月時点の情報です。最新情報は美術館Webサイトをご確認ください。

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この記事を書いた人

夏子

伝統と現代、文化と商業、都市と地域、日本と海外など、異なる視点を行き来しながら地域や人が持つストーリーを読み解くのが好き。これまでに海外3カ国で暮らし、10年以上かけて国内39都道府県を訪ねました。「旅 × 地方創生」をテーマに、地域の文化や暮らしを読み解き、広く伝わる価値として綴ります。

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