地域創生メディア  Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地域創生メディア

アート  |    2026.04.21

古代エジプトから世界を横断|滋賀・MIHO MUSEUMを訪ねて【後編】

前編では、山中に現れる印象的なロケーションと、建築家I.M.ペイによる建築を中心に、MIHO MUSEUM(ミホ・ミュージアム)という美術館の魅力を紹介しました。

前編はこちら

有名建築家が手がけた、山中に現れる美術館|滋賀・MIHO MUSEUMを訪ねて【前編】

続く後編では、世界水準ともいえる充実したコレクションを誇るMIHO MUSEUMの収蔵品に焦点を当て、その魅力に迫ります。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー古代エジプト展

音声ガイドを借りて、鑑賞される方も多いんです。最近は特に、利用される方が増えている印象です」とMIHO MUSEUMの広報担当に教えていただきました。

私も実際に借りてみましたが、単なる作品解説にとどまらず、各地域の文化背景を掘り下げる解説や、I.M.ペイの建築のこだわりを解説したりと、かなり充実した内容構成。興味の深さに応じて自由にチャンネルを選択できるのもよかったです。

 

今回は特別に撮影許可をいただき、MIHO MUSEUMコレクション展(常設展)のハイライトを紹介します。(通常は展示室内の撮影は禁止されています)

古代エジプトからギリシア・ローマ、アジア、そして中国やペルシアへ。世界トップクラスの収蔵品が並ぶ

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー古代エジプト展

古代エジプトから西アジア、ギリシア・ローマ、南アジア、そして中国やペルシアへ――。本展では、まるでシルクロードを旅するかのように、世界各地の文化と美術のルーツや変遷をたどることができます。


館内には、世界トップクラスの美術館・博物館にも匹敵する貴重な収蔵品が数多く並びます。数メートルにおよぶ大型彫刻など、コレクションのスケールと連動するように、建築家I.M.ペイがこだわりをもって設計した展示空間も見どころです。


展示を追うごとに、世界の文明同士がゆるやかに影響し、つながっていく、ダイナミックな流れが見えてきます。

古代エジプトから始まる展示:ナイルと神々の壮大な世界観

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー古代エジプト展
最初の展示室では、紀元前3世紀につくられた女神像が目に留まる

 

古代エジプトの展示室では、一年周期で起きるナイル川の大規模な氾濫によって生まれた、独自の価値観や世界観にふれることができます。氾濫の兆しを知らせる星座があり、豊かな実りと新年の訪れは、シリウスの出現によって知らされました。

オリオンはオシリス神、シリウスはイシス神とされ、星々と神話は深く結びついています。洪水が治まると新たな耕作が行われ、新年を迎えます。さらに王は、太陽神ラーの乗る船の櫂をとり、天を巡る存在と考えられていました。

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー古代エジプト展
ハヤブサの頭部を持つ神の像。古代エジプトでは、特定の動物が持つ能力(空を高く飛ぶ、鋭い視力など)を神の象徴として捉えていた

 

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー古代エジプト展
古代から続く貴重なコレクションを間近で見ることができる

 

古代エジブトにおいて、最も神聖とされたのは、氾濫後に現れる新たな大地を象徴する「原初の時」に立ち返ること。自然に対抗するのではなく、その秩序と一体となる王の姿がそこにあります。

自然の摂理から生まれた、古代の神々と壮大な世界観を展示で感じられます。

1日の変化がわかる、自然光を取り込む展示室

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー常設展

また、館内の展示室は「1日の光の変化がわかることが重要」というI.M.ペイの考えのもと設計されています。各展示室には自然光を取り込む工夫があり、時間帯によって空間の表情に変化がうまれるのも、この美術館ならではの魅力です。

 

建築様式や展示空間の構成にも一貫したこだわりが見られ、空間づくりという視点からも、本展を多角的に鑑賞できます。

古代エジプトから東へ:大陸を横断する古代の美術を一挙堪能

エジプトの展示を抜けると、視点はそのまま西アジア、さらに東へと移っていきます。


秩序のもとに築かれたエジプトとは対照的に、大陸ではメソポタミアをはじめとする多様な文化が行き交い、影響しあいながら新たな表現が生まれていきました。

アレクサンドロス大王の遠征以降、ギリシアの写実的な美術は、アジアの遊牧文化やインドの意匠と交わり、ガンダーラ美術へとつながっていきます。そこには、ギリシア・ローマに由来する楽園のイメージと、仏教の世界観が重なり合う、ダイナミックな変化を見ることができます。

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー常設展(ギリシア・ローマ彫刻)
1世紀につくられた大理石の青年胸像。後方の壁画には、ローマ人が夢見た「楽園」の風景が描かれている

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー常設展(ガンダーラ芸術・仏像)
2世紀後半のガンダーラ芸術。世界的にも初期につくられた礼拝の対象の仏像で、衣のひだや顔立ちにギリシア・ローマ彫刻の影響が見られる

 

展示をたどっていくと、地域ごとの違いだけでなく、「どこか似ているかたち」「受け継がれている要素」が見えてくるのも興味深いところです。異なる文化が交わることで生まれた造形の広がりが、具体的な美術のかたちとして感じられます。

 

古代エジプトにおけるナイル川流域から始まった視点は、シルクロードを経て東アジアへ――。

ひとつひとつの展示を追いながら、広い世界がゆるやかにつながっていく流れを、体感することができます。

滋賀で出会う、古代から世界に広がる美術の軌跡

MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)滋賀・美術館・建築ー常設展

滋賀県甲賀市で体感できる、古代からつながるダイナミックな世界の流れ。

美術と建築、そして自然が織りなす空間を味わう休日を、MIHO MUSEUMで過ごしてみるのもいいかもしれません。

 

前編はこちら

有名建築家が手がけた、山中に現れる美術館|滋賀・MIHO MUSEUMを訪ねて【前編】

 

MIHO MUSEUM 詳細情報

住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300

開館時間:午前10時~午後5時(最終入館 午後4時)

入館料:大人 1300円、高校・大学生 1000円、小学・中学生 無料

交通

  • JR石山駅より帝産バス「ミホミュージアム」行乗車(約50分)
  • で、新名神高速「信楽IC」より約15分、同「草津田上IC」より約20分、名神高速「栗東IC」より約30分、京滋バイパス「瀬田東IC」より約30分、名阪国道「壬生野IC」より約35分

駐車場:大型バス20台 普通車300台(駐車無料)

*館内にレストラン、カフェ、売店あり

URL: https://www.miho.jp/

2026年4月時点の情報です。最新情報は美術館Webサイトをご確認ください。

 

記事をシェアする

この記事を書いた人

夏子

伝統と現代、文化と商業、都市と地域、日本と海外など、異なる視点を行き来しながら地域や人が持つストーリーを読み解くのが好き。これまでに海外3カ国で暮らし、10年以上かけて国内39都道府県を訪ねました。「旅 × 地方創生」をテーマに、地域の文化や暮らしを読み解き、広く伝わる価値として綴ります。

関連記事