松山市三番町にある「美ゆき 松山店」。昭和28年(1953年)に大洲市で創業して以来、家族・親族で味を守り続けてきた老舗の鉄板焼き店です。
名物は、ご飯と中華麺を炒め合わせた「ちゃんぽん」。その味の決め手となるのが、創業以来受け継がれている秘伝のソースです。
現在、松山店を切り盛りするのは3代目店主の丸井健一さん(以下、健一さん)。4代目となる息子の竣介さんも厨房に立っています。
今回は健一さんに、70年以上続く「美ゆき」の歴史や、変わらない味へのこだわりについて伺い、名物のハーフちゃんぽんも実食しました。
大洲から松山へ、70年以上続く「美ゆき」

「美ゆき」は1953年、昭和28年に愛媛県大洲市で創業しました。
創業者は健一さんの祖父・甫さん。その後、健一さんの父・健夫さんが店を受け継ぎ、昭和55年には松山店を開業しました。
現在は大洲店・松山店・宇和店の3店舗があり、家族・親族でそれぞれの店を守っています。

健一さん自身が店を手伝い始めたのは17歳の頃。
「ここに生まれた以上は継がないかんのやなと思って」
当時から、いずれは店を継ぐものだと考えていたそうです。

ただ、最初から強い責任感があったわけではありません。
父・健夫さんが何度も入院するようになり、20〜21歳頃には店を任される機会も増えました。そうした経験を重ねる中で、少しずつ店を背負うようになったといいます。
常連客の一言から生まれた名物「ちゃんぽん」

美ゆきの看板メニューといえば、ちゃんぽんです。
一般的な長崎ちゃんぽんとは違い、ご飯と中華麺を炒め合わせた、いわゆる「そばめし」のような一品。
エビ、豚、キャベツ、もやし、ネギなどを炒め、ライスと中華麺を合わせ、最後に特製ソースで仕上げます。

誕生したのは昭和45年頃。
「時間がないから焼きそばと焼き飯を一緒に食べたい」という常連客のリクエストがきっかけだったそうです。

現在使っている麺は、地元の製麺業者に特注したオリジナルの細麺。
以前は乾麺を使っていましたが、取引していた業者が製造をやめたことから、新たな麺を探して現在の形になりました。
麺は変わりましたが、健一さんは「基本的な味の違いは変わってない」と話します。
その理由を尋ねると、「こだわりは、親父から受け継いだまんま。変えないように」という答えが返ってきました。
味の決め手は創業以来の秘伝ソース

ちゃんぽんの味を支えているのが、創業以来受け継がれている秘伝のソースです。
ベースはウスターソース。そこに唐辛子を加えて煮込み、こしたあとにさらに調味料を加え、もう一度煮込みます。
仕込みには半日ほどかかり、最後は手作業で絞るそうです。このソースはちゃんぽんだけではなく、お好み焼きやステーキなどにも使用されています。

健一さんいわく、「うちの店の万能調味料」なのだとか。
長年使っているソースメーカーが一時、倒産した際には「どうしようかと思った」というほど、店にとって欠かせない存在です。
【実食】ハーフちゃんぽんをいただきました

今回は名物ちゃんぽんのハーフサイズを実食。
鉄板の上でエビや豚、キャベツ、もやしなどが炒められ、ライスと細麺が加わります。最後に秘伝ソースが入ると、食欲をそそる香りが一気に広がります。

一口食べると、まず感じるのは野菜の甘みと具材の旨み。その後から、ピリッとした辛みが追いかけてきます。
ソースが前面に出るというより、ご飯や麺、具材と一体になった味わい。食べ進めるほどに、じわじわと旨みと辛みを感じます。

細い麺とご飯が組み合わさった独特の食感も楽しく、一般的な焼きそばやチャーハンとは違う「美ゆき」ならではの一皿です。
そして、ハーフサイズでも十分なボリューム。
このハーフちゃんぽんは、もともと年齢を重ねて一人前を食べるのが難しくなった常連客のために生まれたそうです。

「ちゃんぽんが食べたいけど食べられんけん」というお客さんの声に応えて作られたメニュー。
長く通うお客さんの声を大切にしてきたことも、美ゆきが愛され続ける理由の一つなのかもしれません。
4代目へ受け継がれる「味」

現在は、4代目となる竣介さんも店を支えています。
健一さんに「これだけは残してほしいもの」を尋ねると、「味やね、やっぱり」と即答。
一方で、これから変えていく部分については、「それは彼がこれから考えていったらいいんじゃない」と話します。
守るべき味は守る。そのうえで、次の世代が自分で考えていく。
70年以上続く「美ゆき」は、こうして少しずつ次の世代へバトンを渡しています。
できるうちはやりたい

コロナ禍や松山の渇水など、長い歴史の中ではさまざまな困難もありました。
それでも健一さんは、「流れに任せるしかない」と振り返ります。
そして、これから何歳まで店に立ちたいかと聞くと、「できるうちはやりたい」と力強く話します。
先代から受け継いだ味を守り、次の世代へつないでいく。
「味が落ちたと言われんように頑張るだけ」そんな実直な姿勢こそが、美ゆきの70年以上の歴史を支えてきたのかもしれません。
松山で長く愛されてきた、独自の味わいを持つちゃんぽん。
家族の歴史とともに受け継がれてきた一皿を、ぜひ味わってみてください。
美ゆき 松山店
愛媛県松山市三番町7丁目4−13
営業時間:11:30〜14:00/17:00〜21:00
定休日:月曜定休
電話:089-941-3308




