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フード  |    2024.04.28

座席数もスタッフ数も、経営的には非常識。すべてはママの元気のために|さいたま「UP COFFEE」

さいたまスーパーアリーナの最寄り駅「さいたま新都心駅」から歩くこと10分。けやきが立ち並ぶ氷川参道のかたわらに佇む「UP COFFEE(アップコーヒー)」は、行列も珍しくない人気店です。

ブルーグレーのシンプルな外観に惹かれ店内に一歩足を踏み入れると、そこには一脚ずつデザインの異なるイスや、さりげなく飾られた花やアートが。

センスあふれるこのお店、実はママのためのカフェ。2020年の開店以来「ファミリーファースト」を貫きお店作りをしてきたオーナー・溝口奈々さんに、思いを聞きました。

日々奮闘するママたちのための休憩場所を作りたい

いつでも明るい笑顔が溢れる場所

溝口さんの前職は大手シアトル系コーヒーチェーン店社員。バリスタや店舗運営などの経験を積みながら、独立を目指していたといいます。そんなさなか、息子さんを出産。これが今の店のコンセプトへとつながりました。

「出産を境に子ども中心の生活になり、思い描いていたことが何もできぬまま日が暮れる。目標ややりたいことに向かって行動したい私にとって、それは愕然とする現実でした。一方で、世のお母さんたちがとてもがんばっていることにも気づかされましたね。だからこそ、ママが笑顔になれる場所をこの手で作りたい、と思いました」

看板メニューの「カフェラテ」と「レモンケーキ」。焼き菓子は全てヴィーガンフード

それを形にしたのが、UP COFFEE。ここでコーヒー片手に過ごすひとときで、気持ちが少し上向きに、誰もが笑顔になれるように――店名には、そんな思いが込められています。

空間にも人手にも、ママたちに手を差し伸べやすい余白を

UP COFFEEの敷地面積は、約16坪。飲食店経営のセオリーで言えば、24席ほど客席を確保できる広さです。ところが同店の席数は16席。

銀行への融資依頼や売り上げという面では、客席を3分の2に抑えるのは不利なはず。それでも溝口さんが貫いたのは、ママが安心して過ごせる環境作りでした。

お子さんをベビーカーに乗せたまま店内を移動でき、さらにはベビーカーと隣り合って親子で座れるように。通路にも座席同士の間隔にも、たっぷりとしたゆとりが。

さらに、授乳室やおむつ替え用のベビーベッドも準備しました。

のびのびお絵描きできるキッズスペースも。勢いあまって紙から壁へとはみ出したペンの跡にも「必要だと思ったら塗り直せばいいかな」と溝口さんは大らかに笑います。

そんな溝口さんの思いは、スタッフの数にも表れます。シフトには常に0.5~1人程度の余裕をもたせているのだとか。

どんなにお店が混雑していても、ママへのお手伝いを後回しにしたくないから。ベビーカーでの入店時は段差があるのでスタッフがサポートします。オーダーやお手洗いでママが席を離れるときに、お子さんを見守ることも。リフレッシュのためのお出かけが、帰る頃にはむしろ疲労困憊って、育児あるあるですよね。だから、周りへの気遣いも念のための荷物も最小限で、思い立ったら気軽に立ち寄れる場所を作りたかったんです」――経営のセオリーよりも大切なものを、迷わず握りしめる。そんな溝口さんのあり方に、お客さまの笑顔の秘密が見えた気がします。

お店の変化の数だけ、ママたちの笑顔が増えていく

親子を見守る姿勢は、子どもたちの身長が刻まれた柱にも

昨年から開店時間を10時から9時へと繰り上げ、この4月からは定休日だった月曜日も営業日に変更するといいます。

「朝ってただでさえ慌ただしいのに、子は園に行きたくないと駄々をこねるのも日常茶飯事。休み明けなんてなおさらです。そんな戦いを乗り越えたママに、ここでほっとしてほしくて」

そんな溝口さんにとって、とてもうれしい出来事があったのだそう。

「まさに月曜日の朝イチに、保育園デビューした赤ちゃんを送り届けたばかりのママが来店なさいました。ご本人はそわそわ、でも私はその姿を見て本当にうれしかった!慣らし保育って、最初は本当に短時間。家に戻るには中途半端だし、なにより気持ちが落ち着かない。そんな時に『この場所がある』と思い浮かべてもらえたことに、やっと思いが届いた!と感じた瞬間でした

お客さま自身も気づいていない思いまで汲み取って、さりげなく手を差し伸べるしなやかさ。変化を新たな喜びにつなげるUP COFFEEのそのあり方が、これからも多くのママの心をほどき続けることでしょう。

UP COFFEE

住所:  埼玉県さいたま市大宮区吉敷町2-123
営業時間: 9:00~17:00、火曜定休
Instagram:https://www.instagram.com/upcoffee.jp/

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この記事を書いた人

矢島 美穂

埼玉県さいたま市在住、実家は県内のイチゴ農家|2人の姉妹を育てる、40代のフリーランスライター|日常に横たわるストーリーを発掘し手渡すことで、読者の目に映る世界がちょっと変わるのが喜び。Mediallでは、情報だけではなく、この土地に生きる人々のストーリーもお伝えしたいと思います|チョコレート・コーヒー・カフェ・読書・手帳・紙モノが大好き

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