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フード  |    2024.08.15

雨音と北アルプスの絶景が織りなす癒しの時間。白馬村の古民家カフェ「かっぱ亭」

長野県の北西部、北アルプスの麓に位置する「白馬村」。3000m級の山々が連なる県内屈指の観光スポットで、スキーや登山、トレッキングなど幅広いアウトドアレジャーを楽しめます。

晴れた日は存分に自然の美しさを楽しめますが、観光客が困るのは雨天時の過ごし方。「どう過ごせばいいの?」と旅で訪れるスポットに頭を悩ませる方は多いようです。

そんな方におすすめしたいのが、古民家カフェ「かっぱ亭」です。雨音と古民家の落ち着いた雰囲気が調和し、温かみを感じる特別な時間を過ごせます。今回は「雨の日だからこそ訪れたい」かっぱ亭の魅力をご紹介します。

北アルプスの麓に佇む趣深い古民家カフェ

JR白馬駅から車で3分ほどの場所にある古民家カフェ「かっぱ亭」は、白馬村を代表する観光名所「大出公園」のすぐそばにお店を構えています。

駐車場に車を停め、公園内を歩きながらお店へ進んでいくと、白馬山麓の山々が連なる北アルプスの雄大な景色が目の前に飛び込んできます。ここでは、晴れた日も雨の日もそれぞれの異なった素晴らしい表情を見せる、北アルプスの景色を眺めることができます。

そんな景色を横目に、吊り橋を渡ると見えてくるのが古民家カフェ「かっぱ亭」です。水車から水が流れる音が聞こえ、大きな茅葺屋根が目を引く昔ながらのその建物は、ひと昔前にタイムスリップしたような懐かしさを感じられます。

店内へ入ると、古民家の雰囲気をそのままに開放的な空間が広がっています。ワンちゃん連れでも楽しめる「土間スペース」や、椅子に腰掛けて食事を楽しみたい方にも嬉しい「小上がりのテーブル席」、さらに、子連れでも食事がしやすい「座敷席」など、訪れる人それぞれが過ごしやすい空間で食事を楽しめるようになっています。

店作りで大切にしていることについて、オーナーの平瀬夏女さん(以下、夏女さん)は「料理も空間作りも、肩肘張らずに自分たちらしく、お客さんをおもてなしできればと考えています」と話します。

店内は、小さいお子さん向けのローチェアや授乳スペースなども用意されており、子連れでも過ごしやすい空間になっています。これもお子さん2人を育てる平瀬さんご夫妻が「自分が食事する時にあったらいいなと思ったこと」を、ごく自然に取り入れているだけだと言います。

地元出身のご主人の「懐かしい味」を再現。こだわり溢れる料理に舌鼓

かっぱ亭で提供されるメニューは、どれも地産地消にこだわったものばかり。地元で採れる野菜や果物をふんだんに使った料理は、白馬村の食文化を感じられます。

料理を担当するご主人の平瀬真登さん(以下、真登さん)は、かなりの職人気質だそう。素材一つ一つにこだわりを持ち、例えば料理に使用している信州サーモンは、仕入れた際の水分量によって、日々水抜きの仕方を変えているのだといいます。

一番の人気メニューである「姫川かっぱ亭食」は、白馬村産の川魚の塩焼きを中心に、信州サーモンのお造り、はくば豚の角煮など彩り豊か。料理一つ一つにどれも手が込んでいるのが伝わってきて、口にするたびにそのおいしさに感動を覚えます。

かっぱ亭ではフルーツほおずきを使ったスイーツメニューも人気。もともと6次産業化を目指して、真登さんのお母さんが栽培していたフルーツほおづきを「白馬村の特産品になるように、店のメニューに加えることで一助になれれば」との思いから、オリジナルのスイーツメニューを考えたのだそうです。

プロスキーヤーから転向。転機となったかっぱ亭との出会い

実は、平瀬さん夫妻には意外な経歴があります。もともと二人ともプロスキー選手として活躍していたのです。真登さんは、フリースタイルスキーの日本代表として、夏女さんはモーグル競技の日本代表として、W杯や全日本選手権などトップレベルの大会で活躍していました。

二人は2016年に結婚し、しだいに引退後の第二のキャリアを考えるようになりました。そんな状況の中で出会ったのが、かっぱ亭です。当時のオーナーが高齢化によって営業を続けるのが難しくなって担い手を探しており、「かっぱ亭を継いでもらえないだろうか?」と平瀬さん夫妻に声がかかったといいます。

8年前の当時、かっぱ亭のある大出地区は観光客が少なく、観光地と言えば、村の西側のスキー場エリアが中心でした。それでも平瀬さん夫妻は、一つ返事で「かっぱ亭を継ぎます」と快諾しました。夏女さんは「自然豊かで魅力的なこの地域で、こんな素敵な建物でお店ができるなんて、大変そうというよりは『やってみたい!』という気持ちの方が大きかったですね」と当時を振り返ります。

しかし、いざ開業してみると、順調にはいきません。お客がゼロの日が何度もあったといいます。

夏女さん「開店当初は苦労の連続でした。でも、落ち込むというよりも常に前向きに『どう改善しようか?』と主人とたくさん話をしました。そんな中で、メニューを試行錯誤して、少しずつ今のかっぱ亭が形作られていきました」

暗中模索を続ける中、かっぱ亭に転機が訪れました。JRの中吊り広告に、大出公園の吊り橋から撮影された、北アルプスの写真が採用されたのです。

そして、写真が電車内に掲載されるとともに、大出地区が有名になり、多くのお客さんが訪れるようになりました。夏女さんは「自分たちがやりたいと思っていたことと、周りの環境との歯車が徐々に噛み合っていったような感じでした」と振り返ります。

大出地区が有名になるとともに、かっぱ亭の名前も広まっていき、今では多くの客が訪れる名物カフェとして知られるようになりました。

「地域の食文化を繋ぐ」これからのかっぱ亭

そんな「かっぱ亭」の今後の展望について、夏女さんは次のように話します。

夏女さん「かっぱ亭は、地域の方の暮らしの中にひっそりと佇んでいる感じ。だからこそ、地産地消の食材を使って白馬村らしい食事を提供したいし、地域の方に応援してもらえるようなお店にしていきたいです」

現在、白馬村は急速に開発が進み、ホテルや商業施設などの建設が盛んに行われています。そんな変化を目の当たりにして「観光促進や職業の確保を考えると、変化することも大切。ただ、もともとあった文化が途絶えてしまうのは残念なことです」と話す夏女さん。

「私たちは、このかっぱ亭を守っていくことで、白馬村の食文化を繋いでいくことに少しでも貢献していきたいです」と想いを話してくれました。

かっぱ亭について語る夏女さんの言葉の一つ一つには、この地域を愛する気持ちが詰まっていることがひしひしと感じられます。

あくまでも自分たちらしく、地域を繋いでいくーーそんな思いが形になった場所だからこそ、多くの人を引き寄せる魅力を持っているのかもしれません。

晴れの日も雨の日も魅力にあふれる古民家カフェ「かっぱ亭」。白馬村へお越しの際には、ぜひ一度、出かけてみてはいかがでしょうか。

◾️店舗情報
店名/古民家カフェ かっぱ亭
住所/長野県北安曇郡白馬村大字北城大出
電話番号/080-3391-7718
営業時間/10:00〜16:00(L.O.15:30)
定休日/火曜、水曜、木曜(冬季休業)

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この記事を書いた人

横川あきな|長野の取材ライター

愛知県出身・長野県在住の取材ライター。長野の北アルプス地域を中心に、周辺エリアの人やものの魅力をお届けします。みなさんの「行ってみたい」「食べてみたい」「会ってみたい」そんな思いが湧き立ってくるようなワクワクする情報を発信していきます。

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