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ライフ  |    2025.12.03

【地方×複業】山形県・白鷹町で季節とともに働く!「マルチワーク」という選択

白鷹町に広がる棚田の様子

山形県の南西部に位置する白鷹町は、東西を白鷹丘陵、朝日連峰に囲まれ、中央を日本三大急流の一つ・最上川が流れる、四季折々の自然が美しい町。そんなこの地で、「マルチワーク」という新しい働き方を提案しているのが、しらたかマルチワーク事業協同組合(通称:たかマル)です。

農業や観光、ものづくりなど、地域の多彩な仕事をかけ合わせることで、移住者に「自分らしい働き方」を見つけてもらう——そんな挑戦が始まっています。

今回お話を伺ったのは、「たかマル」事務局長の菅原大夢(すがわら・ひろむ)さんです。

「しらたかマルチワーク事業協同組合」事務局長の菅原大夢さん

「たかマル」って何?——季節の仕事と移住者をつなぐ

——「しらたかマルチワーク」のコンセプトや特徴を教えてください。

菅原さん:「しらたかマルチワーク」は、白鷹町でさまざまな季節の仕事に携わる「マルチワーカー」を育成・支援する仕組みです。国の「特定地域づくり事業協同組合制度」という、人口減少が進む地域に外部から人を呼び込む仕組みのもとに設計されています。いわば、地域の事業者と移住者をつなぐ人材派遣的な仕組みをベースにしているのですが、ただ人を派遣をするだけではありません。

マルチワーカーは組合の正社員として、安定した収入と福利厚生を得ることができます。また、マルチワーカー同士や地域の人々が継続的に交流することで、自然と新しいつながりが生まれていくのも大きな魅力です。

しらたかマルチワークの仕組み
しらたかマルチワークのはたらき方
引用元:たかマル | しらたかマルチワーク事業協同組合 公式HP

——設立することになった背景を教えてください。

菅原さん:白鷹町では、人口減少や担い手不足が進む中で、「地域の仕事を、点でなく線でつなぐ」仕組みが求められていました。特に農業や観光業では繁忙期と閑散期の差が大きく、若者を正規雇用するのが難しい状況です。しかし、単なる季節労働にすると、働く人の収入や暮らしの安定が確保できません。そこで、「季節ごとの仕事を組み合わせることで、地域全体で持続可能な働き方をつくれるのでは?」と考え、町と事業者が一体となって2023年7月11日から立ち上げに向けて動き出しました。

——ほか地域で行われるマルチワーク制度との差別化ポイントは?

菅原さん:単に仕事をかけ持ちするだけではなく、ワーカーが地域の産業全体を学び、一緒に支える仲間になる」というスタンスが、「たかマル」ならではの魅力です。「たかマル」のパートナーは、トマト、ホップ、米、ぶどう、りんごなどを栽培する農家さんを中心としていますので、「農業がやりたいけれど、何から始めたらいいのかわからない」という方にもおすすめです。そのほか、観光タクシー会社、家電店など地域の全16事業者の現場を横断しながらスキルを磨き、その中で自分の得意・苦手を探せる環境が整っています。

「たかマル」が描く新しい移住のかたち

しらたかマルチワーク
「たかマルインターン」の一環で、筆者もパートナー事業者「果樹園BEARS」さんのりんご畑で葉摘みに挑戦

——どうして「地域おこし協力隊」制度のほかに、「マルチワーク」という選択肢を設けたのでしょう?

菅原さん:地域おこし協力隊は、「地域の課題がある特定の場所に派遣される」イメージがあるかと思います。例えば、「伝統工芸士が不足している工房の働き手になる」といった具合ですね。しかし、それ以外の地域課題には関わりにくい側面もあるんです。

一方でマルチワークは、人手が不足している農家をはじめ、さまざまな事業者さんのもとで仕事に取り組めます。

つまり、特定の分野に偏らず、自分に合った働き方を探せるのです。さらに、正社員という安定雇用をベースにしつつ、起業準備をしながらの週3日勤務なども可能で、もちろん副業もできます。地域の人々に寄り添いながら、移住者が「自分らしく」町に馴染んでいける仕組みになっているのではないかと思います。

——マルチワーカーの方々には、今後どのようになっていってほしいですか?

菅原さん:「たかマル」という名前には、「地域とともに高まる」という思いが込められています。参加する方々には、白鷹町の一員として、自分の得意を活かしながら地域の未来をつくる存在になってほしいです。

でも同時に、自分の苦手なことも、素直に感じてほしいとも思っています。せっかく移住してきたのだから、マルチワークを通じて、自分がどうしたら幸せになれるのかをじっくりと考えてみてほしいんです。そのうえで、自信を持って「白鷹で暮らす」選択をしてもらえたら嬉しいですね。

「たかマル」が描くこれから

——今後の展開についてお聞かせください。

菅原さん:今後は、町内事業者のさらなる連携を強めつつ、マルチワークの魅力を発信する場を広げていきたいと思っています。今年2025年の10月には、1名の体験希望者を招いて4日間の「たかマルインターン」を初開催しました。観光ツアーを通じた関係人口や移住希望者との接点づくりの構想もあります。

白鷹町が、「季節とともに働く暮らし」のモデル地域として全国に知られるような存在になれば嬉しいです。

——最後に、まだ白鷹町を訪れたことがない方々へメッセージをお願いします。

菅原さん:白鷹町は、豊かな自然と、あたたかい人のつながりが残る魅力的な町です。一度訪れれば、最上川沿いの景色や、地元の人たちの優しさにきっと惹かれるはず。ぜひ、まずは旅の延長線上に、あなたらしい働き方や暮らしのあり方を見つけに来てください。

「話だけでも聞きたい!」という方は、「たかマルの菅原さんって人に会いたいんですけど……」と役場や町民の方に聞いてみてください。きっと誰かが、たかマルの事務所まで案内してくれるはずです(笑)。

Instagramや公式サイトからのお問い合わせも、お待ちしております!

公式HP:
しらたかマルチワーク事業協同組合事務局

【場所】
山形県西置賜郡白鷹町大字荒砥甲1004-2 シェアハウス木林森101号室
【営業時間】
月〜金(祝祭日除く)9:00〜17:00
SNS: https://www.instagram.com/shirataka_multiwork/ 

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この記事を書いた人

谷口 由佳

東京都⇔鹿児島県の2拠点生活をお試し中の20代編集ライター。 紙媒体を得意とする編集プロダクションを退職後、フリーランスとして活動。「衣食住」にまつわるインタビュー・原稿執筆を通して、さまざまな【暮らし=生き方】をご提案。日本のよいもの知り、全国に広げていきます!

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