兵庫県神戸市にある新長田といえば阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた街です。阪神・淡路大震災から30年以上が経ちました。私自身は震災当時を経験している世代ですが、まだ幼く記憶はありません。今では子どもたちの世代にとって、震災は教科書や映像の中の出来事になりつつあります。
そんな折、はっぴいひろばで知り合った陸上自衛隊の中辻さんから「今度、防災イベントをするんです」と声をかけていただきました。
会場は鉄人広場(若松公園)。2026年5月30日に開催された「防災フェスタ2026」は、子どもから大人まで楽しみながら防災を学べる体験型イベントです。震災の記憶をどう次世代へ伝えていくのか。防災を“体験”として学ぶ機会にはどんな意味があるのか。実際に参加してきました。
子どもたちが楽しみながら学ぶ防災体験

会場となった若松公園は、新長田の復興のシンボルとして親しまれる「鉄人28号モニュメント」がある公園です。阪神・淡路大震災では周辺地域も大きな被害を受けましたが、復興とともにまちづくりが進められ、現在は地域イベントの会場としても活用されています。
当日は公園全体を使って防災体験ブースや展示が行われ、多くの家族連れで賑わっていました。会場では、スタンプラリー形式で展示や体験コーナーを巡ることができるようになっており、私も参加者の一人として会場を回ることにしました。
仕事終わりにそのまま参加した私は、最初は写真だけ撮らせてもらおうかと思っていたのですが、スタッフの方から「ぜひ体験していってください!」と声をかけていただき、思い切って参加することにしました。
まず挑戦したのはジェットシューターによる消火体験です。小学生の頃にも体験したことがありましたが、久しぶりにノズルを握ると当時の感覚がよみがえってきました。勢いよく放水すると見事に的へ命中。無事に「消火成功」となり、スタッフの方からも声をかけていただきました。
会場には車両展示もあり、隊員の方から車両の特徴や用途について説明を受けることができます。普段なかなか近くで見ることのない車両に、子どもたちは興味津々。実際に乗車して写真撮影を楽しむ姿も見られました。

防災を身近に感じる工夫
会場では制服の試着体験も行われていました。私も陸上自衛隊の制服を着用させていただき記念撮影。また、会場には自衛隊の活動を紹介するパネルも展示されています。
子どもたちは親御さんに「あの写真のお船はなにするの?」と質問し、「地震の時にご飯を運んだり、みんなを守ってくれる船だよ」と説明を受ける場面もありました。真剣な表情で、自衛隊員やスタッフの方、そして両親の話に耳を傾ける子どもたち。
その姿からは、自衛隊や防災への関心が少しずつ育まれていることが伝わってきます。さらに、子どもたちは次々と笑顔で制服に袖を通し、普段はなかなか接する機会のない自衛隊を身近に感じている様子でした。
防災や災害支援というと難しく感じがちですが、まずはこうした体験を通して興味を持つことも大切なのかもしれません。
担架づくりを体験して気づいた「知っている」と「できる」の違い

担架づくりは小学生の頃にも体験したことがあり、今回も挑戦してみました。スタッフの方が一緒についてくださるため、一人でも安心して参加できます。
私自身、看護師時代にも担架づくりを学んだ経験があります。しかし実際にやってみると、手順を少し忘れていました。
担架づくりでは、まず人形を運ぶ体験からスタート。ちなみに人形の名前は「Sさん」。スタッフの方の名前から付けられたそうで、思わず笑ってしまいます。
説明では、担架の専用の道具がなくても、毛布や物干し竿など家庭にあるもので代用できることも教えていただきました。知識として知っているつもりでも、実際に手を動かしてみると意外と覚えていないものです。
防災は特別な備えだけではなく、身近なものをどう活用するかを知っておくことも大切だと実感しました。
「経験として覚えていてほしい」中辻さんの思い

「今はインターネットで何でも調べられる時代です。でも、実際に体験したことは記憶に残ります」
そう話してくれたのは、防衛省自衛隊兵庫地方協力本部神戸出張所長田募集案内所長を務める中辻寛徳さん。
子どもの頃に担架づくりや消火体験をした記憶があれば、大人になった時に
「あの時やったな」「今使えるかもしれない」と思い出すきっかけになればいいと話します。
実際に私自身も、小学生の頃に体験したジェットシューターや担架づくりを思い出しながら参加していました。また、会場には、自衛隊による災害派遣活動の写真も展示されていました。能登半島地震での給水支援や救助活動、入浴支援などの様子が紹介されており、災害時にどのような支援が行われているのかを知ることができます。
そしてその中には、阪神・淡路大震災当時の写真も展示されていました。私自身は震災当時の記憶はありません。しかし神戸で暮らしていると、
「たくさんの人たちに助けられた」
「今でも感謝している」
という話を耳にすることがあります。展示された写真を見ながら、災害時に支援を行う人たちの存在と、その活動が今も地域の記憶として受け継がれていることを改めて感じました。
知識として知るだけではなく、経験として残す。そして、その記憶を次の世代へ伝えていく。このイベントには、そんな思いが込められているように感じました。
震災の記憶を次世代へつなぐために、防災を『体験』として伝えるということ

会場では、兵庫県防衛協会青年部会の方々や地域の方、大学生ボランティアの方々が運営を支えていました。
その様子を見ていると、近くにいた参加者の方が「この町で震災があったからこそ伝えられることがありますよね」と話しているのが聞こえてきました。
阪神・淡路大震災から30年以上が経った今も、この地域には震災の経験を次の世代へ伝えようとする人たちがいます。私自身、小学生の頃に体験した担架づくりやジェットシューターの記憶が残っていたからこそ、今回の体験にも自然と参加することができました。防災は一度学んで終わりではありません。体験したことを覚えておき、必要な時に思い出せることも大切です。
会場では、子どもたちが楽しそうに体験しながらも、説明には真剣な表情で耳を傾けていました。こうした経験の積み重ねが、いざという時に役立つ記憶として残っていくのかもしれません。
阪神・淡路大震災を経験した新長田だからこそ、防災を「知る」だけではなく「体験として残す」取り組みができる。この日、楽しそうに体験していた子どもたちの記憶が、いつか誰かを助ける力になるかもしれません。
震災の経験と教訓が、これからも次の世代へ受け継がれていくことを願っています。



