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もの・こと  |    2026.07.22

ポトマック河畔の桜並木を実現したエリザ・シドモアと「シドモア桜の会 横浜」

シドモア家墓地

アメリカ・ワシントンD.C.の春を象徴する、ポトマック河畔の桜並木。
日本から贈られた桜として知られていますが、その植樹に陰ながら尽力したのがアメリカ人女性ジャーナリストのエリザ・R・シドモアです。

本記事では、日本を愛し日米友好の架け橋として活躍したシドモアの生涯を振り返るとともに、彼女の功績を讃え語り継ぐために設立された「シドモア桜の会 横浜」について紹介します。

日本を愛した女性ジャーナリスト、エリザ・R・シドモア

エリザ・ルアマー・シドモアは、ジャーナリストであり写真家。
ニューヨークタイムズ紙などで記者として活躍し、ナショナル ジオグラフィック協会初の女性理事にもなった人です。

日本にまつわる本としては、『シドモア日本紀行 明治の人力車ツアー』などがあります。
ちなみに、世界に向けて初めて「TSUNAMI」という言葉を発信したのはシドモア。
1896年(明治29年)、明治三陸地震が発生した際に英語記事で日本語の「津波」をそのまま用いたそうです。(ただし、諸説あり)

明治18年、28歳で初来日したシドモア

兄ジョージが晩年暮らしたとされる「山手十番館」辺り

1856年10月14日、エリザ・R・シドモアはアイオワ州クリントンで生まれました。
(ただし、墓石には1855年生まれと記載あり) 
生まれてからしばらくして、ワシントンD.C.に引越します。

初来日は1885年(明治18年)6月、28歳のとき。
兄が外交官として横浜に駐在していたため、その兄を訪ねて日本にやってきました。
(兄のジョージ・H・シドモアは横浜と縁が深く、晩年は横浜総領事も務めた方です)

来日後、すぐ日本の魅力に気づき、母国に向けて日本を紹介する記事を書きます。
特に、麗らかな春の日に人々が上野公園や向島、隅田川でお花見を楽しむ光景に、故郷のポトマック河畔もこんな風に桜でいっぱいにしたいと想うようになりました。

※生年月日、出生地、初来日の年齢などは諸説ありますが、2026年現在の調査研究の結果、上記が最も正確だと考えられています。

ワシントンに日本の桜を……

アメリカへ帰国したシドモアは、当時の政権に対し「殺風景なポトマック河畔に桜を植えて欲しい」と嘆願します。
このときは全く理解されませんでしたが、その後も諦めず何度もアメリカ当局に提案を続けました。

それから20年以上の月日が流れた1909年4月、なんとホワイトハウスから桜の植栽を約束する手紙が届きます!
手紙の差出人は、当時のタフト大統領の夫人ヘレン・タフト。
実はシドモアとヘレンは1904年に日本で会っており、それ以来、親交を深めていたのだそう。

その後はどんどんと話が進み、1910年には2000本の桜がワシントンD.C.に到着します。
待ちに待った桜でしたが、残念ながらこの桜は害虫に汚染されており、全て焼却処分になりました。

関係者はかなり落胆しましたが、もう一度、前回より丁寧に苗木づくりから準備を重ねます。
そして1912年、6040本の桜が横浜港から船に乗りアメリカへ……。
今回はワシントンD.C.とニューヨークに3020本ずつが贈られ、どちらも無事に到着しました。

1912年3月27日、ワシントンD.C.で記念式典が行われ、タフト大統領夫人と駐米日本大使夫人が桜を植樹。
「ワシントンに桜並木を」と願い続けたシドモアの夢が、25年以上の歳月を経てようやく叶った瞬間でした。

この桜は一般的に「東京市長の尾崎行雄がワシントンに贈った」と言われますが、そのきっかけを作ったのはシドモアです。

もちろん、その他にも
・化学者で実業家の高峰譲吉
・駐米総領事の水野幸吉
・植物学者のデビッド・フェアチャイルド
・病気や害虫汚染のない苗木を作った農事試験場技師の熊谷八十三
・植物の輸送に関する技術を活かし苗木の梱包や発送をした横浜植木
・無償で輸送を申し出た日本郵船
など、多くの人が関わっていました。

スイスで永眠したシドモア、横浜外国人墓地に埋葬

シドモア家のお墓がある横浜外人墓地

その後、1922年に兄ジョージが横浜総領事在任中に亡くなりました。
このときの兄の自宅は横浜山手246番にあり、これは現在の「山手十番館レストラン&カフェ」の辺りです。

1925年、シドモアはスイス・ジュネーブに移住。
そして、1928年11月3日早朝、72年の生涯を終えました。

彼女の遺骨は日本政府の配慮により、母や兄も眠る横浜外国人墓地に埋葬されることになります。
1929年(昭和4年)11月30日、冷たい雨の中で納骨式が行われました。
親交の深かった新渡戸稲造が英語で弔辞を述べ、約100人が参列するほどの盛大な式だったようです。

1987年に「シドモア桜の会」が発足

墓前の顕彰碑「日本の桜を愛した女性ここに眠る」

親日家だったシドモア家。
しかし、兄も妹のシドモア自身も独身だったため、やがて墓地の存在は忘れられ荒れ果ててしまいます。
そんなシドモアに再び光を当てたのは、1986年(昭和61年)、外国人墓地を取材していた毎日新聞の記者でした。

そして、1987年(昭和62年)に「シドモア桜の会」が発足。
かつてワシントンD.C.で植樹式が行われたのと同じ3月27日に、第1回墓前祭が開催されました。
このとき、「日本の桜を愛した女性ここに眠る」の顕彰碑も建立されます。

その後も毎年墓前祭を開催。
1991年(平成3年)には、ワシントンから里帰りした桜の苗木が墓前に植えられました。
2020年からは新体制「シドモア桜の会 横浜」になり、シドモア桜を全国に植樹する活動などを行っています。

「里帰り桜」と「シドモア桜」

横浜外国人墓地・アメリカ碑の「里帰り桜」

「シドモア桜の会 横浜」では、「里帰り桜」と「シドモア桜」について次のように区別しています。

「里帰り桜」は、1991年(平成3年)にポトマック河畔から里帰りした桜です。
外国人墓地内のシドモア家墓前に2本、アメリカ碑苑内に3本が植樹されました。
枯れてしまったものもあり、現存する里帰り桜はシドモア家墓前に1本とアメリカ碑に1本の、計2本のみになります。

元町・谷戸橋近くの「シドモア桜」

「シドモア桜」は、里帰り桜から接ぎ木などの手法を用いて苗木を育てた桜です。
現在は、このシドモア桜を全国に植樹するプロジェクトが進んでいます。

ただし例外として、2012年の日米桜交流100周年記念の際に贈られた桜をシドモア桜の名称で植樹しているところもあります。

「シドモア桜の会 横浜」は「GREEN×EXPO 2027」にも出展予定!

山下町・開港広場の「シドモア桜」

「シドモア桜の会 横浜」では、日米友好の象徴として知られるワシントンD.C.の桜がシドモアの発案により実現したことを広く伝えるとともに、横浜の文化遺産ともいえる「横浜外国人墓地」や「里帰り桜」を大切に守り、日米親善の架け橋となるべく活動を行っています。

横浜市内をはじめ、日本全国にシドモア桜を植える計画も進行中です。
既に市内各所で育っているので、ぜひ探してみてください。
神奈川県外への植栽も進んでおり、例えば、ペリーが来航した静岡県下田市、シドモアと親交が深かった新渡戸稲造の故郷・岩手県花巻市、復興支援「わくら千本桜プロジェクト」の石川県七尾市などに植えられました。
その数は今後も増えていくでしょう。

西区・掃部山公園のシドモア桜

子ども達と一緒にシドモア桜の苗木作成もしています。
さらに、シドモアに関する講演会を各地で行っており、2027年開催の「GREEN×EXPO 2027」への出展も決まりました。
2027年3月19日から28日の10日間、屋内展示ブースに出展されるそうです。

シドモアの日米友好への想いを未来にも

日本を愛し、日本のさまざまな文化をアメリカに伝えたシドモア。
ポトマック河畔の桜並木に込めた日米友好に懸ける想いを、今を生きる私たちがしっかりと受け継ぎ未来へ繋げていきたいですね。

「シドモア桜の会 横浜」では会員を募集中。
また、「GREEN×EXPO 2027」に向けた寄付も募っています。
詳しいことについては、以下の公式サイトをご確認ください。

シドモア桜の会 横浜

シドモアが眠る横浜外国人墓地

住所:神奈川県横浜市中区山手町96
アクセス:みなとみらい線「元町・中華街駅」から徒歩8分
     JR根岸線「石川町駅」から徒歩16分

横浜外国人墓地資料館
入館料:無料(墓地への入苑の指定日を除く)
開館時間:9:00〜17:00
休館日:月・火
施設情報:横浜市観光公式サイト

墓地内への入苑は指定日のみ可能(墓地の維持管理費として500円程度を募金)
指定日:2月から7月、9月から12月の土・日・祝日(12:00〜16:00)

※指定日については、念のため最新情報をご確認ください。
 指定日以外に墓地内の見学はできません。
 また「墓地」のため、静かに回るようにしましょう。

ところで、横浜外国人墓地から徒歩1分ほどの場所にある「アメリカ山公園」。
四季折々、さまざまな花を楽しめる開放感のある公園です。
この地域の歴史に関する解説板も設置されているのですが、実はそのなかにシドモアが来日した時代と思われる古い写真を見つけました。
まさにこの風景をシドモアが見ていたのかもしれないと思うと、感慨深かったです。
写真の中には、かつてこの地にあった「グランドホテル」(ホテルニューグランドではありません)、ヘボン式ローマ字生みの親のヘボン博士邸、昔の谷戸橋なども写っています。

アメリカ山公園

住所  :神奈川県横浜市中区⼭⼿町97-1
アクセス:みなとみらい線「元町・中華街駅」直結(6番出口)
     JR根岸線「石川町駅」から徒歩15分
開園時間:6:00〜23:00
休園日 :年中無休
入園料 :無料
公式サイト:https://www.seibu-la.co.jp/mt_america/

近くを通られた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。

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この記事を書いた人

もりや 未久

横浜に住んで、気付けば25年近くが経ちました。 私が大好きな横浜の魅力を、少しでも多くの方に伝えていければと思っています。 横浜のちょっとマイナーな部分も紹介していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

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