
岡山県赤磐市(あかいわし)には古墳や神社などの多くの歴史スポットがあり、県外からも多くの人が訪れます。一方、もっと古い時代に着目する人たちが赤磐市を拠点にして活動していることを知る人は少ないでしょう。
今回は、地球の歴史を研究している地球史研究所を紹介するので、興味がある人はイベント等に参加してみてくださいね。きっとあなたも地球に興味を持つことでしょう!
地球史研究所とは?

地球史研究所は、NPO法人地球年代学ネットワーク(jGnet)の研究拠点として、2017年に赤磐市周匝(すさい)の旧県立備作高校跡地に開設されました。
地球史研究所では、地球惑星科学の最先端研究と地域の地質や地形の研究をしています。また、赤磐市民向けの講座やサロン、主に赤磐市内の小中学校での出前授業などの地域教育や啓発活動なども行っています。
なお、研究推進グループと教育連携グループという2つの組織から成り、イベント開催時には全員が協力して活動を行っているそうです。
NPO法人地球年代学ネットワークとは?
地球史研究所の母体であるNPO法人地球年代学ネットワーク(jGnet)は、2014年に設立されました。地球年代学および関連分野に携わる若手研究者の育成を目的とし、研究開発や普及活動、国際協力、調査データ提供事業などに取り組んでいるそうです。
これは、官民協業による最先端技術の研究開発を通じて、防災や資源開発などの課題へ貢献できる人材を育成し、成果を科学教育などで社会還元するということ。とても貴重な取り組みであり、有意義だと思います。

NPO法人地球年代学ネットワークの公式キャラクターの「うをうを」は国の特別天然記念物であるオオサンショウウオをモデルとしたほのぼの系のかわいいキャラクターです。
地球史研究所の活動について
地球史研究所の研究活動と普及活動について紹介します。これらの内容は、地球史研究所の所長の乙藤洋一郎さんへの取材とNPO法人地球年代学ネットワークの竹下浩征さんにご用意いただいた資料を参考にしました。
研究開発

地球史研究所では、地球の誕生から現在までの歴史を研究しています。そのメインになる研究が古地磁気の解析です。地球ではこれまで極の移動や大陸の移動が繰り返されたことはよく知られています。

古い火成岩にはその時代の地磁気(古地磁気)が残されているため、大陸の移動や地球の成り立ちを推測できるそうです。
火成岩とは、火山から噴出したマグマが急冷されて固まった火山岩と、マグマが地下深くでゆっくり固まった深成岩のことです。鉄を豊富に含む火成岩は磁気を帯びるため、解析によりデータ取得ができます。古い岩石ほど、磁気がいくつも上書きされているそうです。
古い岩石を割って加熱処理を加えることで、上書きされた磁気が消失し、古地磁気を測定できるようになります。古い岩石に残された古地磁気の方向や強さを測定し、計算式に入れると、磁気モーメントが得られ、この値をもとに大陸の移動を推定します。

また、地球の内核の形成時期についても推測可能であり、これまで言われていた年代(27億年前)よりもかなり新しい時代(10〜5億年前)にできた可能性が高いそうです。
なんとも難しい物理学の話なのですが、「泥臭い仕事を着実にこなすことで、いつか地球の成り立ちを解明する!」という夢とロマンがあふれる研究だと感じました。筆者のようなバイオ研究者が「生命の神秘を解き明かしたい!」と基礎研究に励むのと同じですね。
また地球史研究所では、地域地質(勝田層・備北層群の隆起)、ラドン測定による地震予知、歴史的石造物の石材の産地同定(産地を科学的に分析して突き止めること)と流通、地質と文化の関わり、ジオパークのマネジメントなど多岐にわたる研究を精力的に行っています。
普及活動

地球史研究所では、研究成果の発表や調査データや分析データの提供、各種イベントの開催などによる普及活動も行っています(NPO法人地球年代学ネットワークの活動の一環として)。
赤磐市内の小中学校への出張授業による教育支援や一般の方々への地質学の啓蒙などを行う市民サロンでは、地球学や地元の地質が理解できて「誇らしい」「楽しい」などの声をいただくそうです。教育は教科書を読むだけでなく、見て触れて興味を持つことが大切なので、このような機会を設けることは、社会にとってよいことだと思います。
また、お菓子(スポンジケーキなど)を使って地層の構造を分かりやすく説明する取り組みをされているそうです。どんな断面なのか、想像するだけでも楽しいですね。

特に素晴らしいと感じたのは、年に1回開催される「ジオフェスタ in あかいわ」というイベントです。化石や石の展示、レプリカ作成などの体験コーナーが盛りだくさんのイベントで、大人から子供まで楽しく地球について学べます。
また赤磐市との協業で、あかいわジオシティ構想を立ち上げ、数年前から本格的な活動を行っています。
あかいわジオシティ構想とは?
ジオシティとは、大地の成り立ちを正しく学び、そこにある地質資源を適切に、かつ過剰にならないように保全し、市民生活(教育・経済・農業・産業・文化活動など)に積極的に活用する地域のことです。
この考えをもとに、赤磐市とNPO法人地球年代学ネットワークがタッグを組んで赤磐市におけるジオシティのあり方を提案し、「あかいわジオシティ構想」を実現するために歩き出しています。
地質資源(ジオ)と地形は農業や生活、観光に大きく関わりますが、それ以外の天文や文化財など赤磐市独自の魅力を含めて地域を盛り上げようとしています。
赤磐市の地質資源(ジオ)の価値を分かりやすく説明できるガイドを養成するためのジオツアーガイド養成講座を開催したり、赤磐市のジオの魅力を学ぶための「あかいわジオシティ講座」を開催中です。
あかいわのジオスポットの紹介
赤磐市には貴重なジオスポットが複数あり、地質学的にとてもエキサイティングな地域です。その中で、ぜひおすすめしたいジオスポットをいくつか紹介します。
岩神神社のゆるぎ岩

赤磐市惣分地区にある「岩神神社」の御神体のひとつである「ゆるぎ岩」。長さ約5mもの巨大な岩が4mほどの巨岩の上に絶妙なバランスで乗っかっています。巨岩が落ちそうで落ちないことから、受験生にも人気がある赤磐市のパワースポットの一つです。
ゆるぎ岩は、1979年に赤磐市指定の天然記念物に登録されています。
ゆるぎ岩の誕生は解明されており、以下のようにして形成されたそうです。
まず、約8000万年前(白亜紀後期)に形成された花崗岩が大地の隆起により節理(せつり)と呼ばれる規則正しい割れ目を生じながら地表に露出します。
次に、節理の部分が風化によって消失し、巨岩であるコアストーンのみが残存し、たまたまうまい具合に重なったのです。
偶然の産物ですが、まるで巨人が積み木遊びをしたあとのような光景なので、神秘的だけど面白いパワースポットになっています。
ゆるぎ岩の情報
住所:岡山県赤磐市惣分1172
連絡先:086-957-4824(赤磐市赤坂支所 産業建設課)
駐車場:あり
アクセス:山陽自動車道山陽ICから約25分またはJR瀬戸駅からタクシー約30分
公式HP:https://www.city.akaiwa.lg.jp/kankou/spot/shiseki/878.html
熊山遺跡

岡山県南で最も標高が高い山(508m)として知られる「熊山(くまやま)」。古くから信仰の山として知られた熊山の山頂には33基もの石積遺構が存在しています。
このうち、1956年に国指定の史跡に登録された熊山遺跡は、山上にある巨大なピラミッド型(方形三段)の石積遺構。奈良時代に築かれた仏塔と考えられており、二段目の各面に龕(がん/石窟や家屋の壁面に掘られた仏像・仏具を納めるためのくぼみ)を設け、頂部に深さ2メートルの竪穴をもちます。
筆者も子どもの頃に遠足で行きましたが、とにかく神秘的で不思議な遺跡だと感じました。一見の価値ありです。
熊山遺跡の情報
住所:岡山県赤磐市奥吉原
連絡先:086-966-6310(赤磐市熊山遺跡管理等)
駐車場:あり
アクセス:山陽自動車道和気ICから約30分またはJR香登駅・JR伊部駅からタクシー約25分
公式HP:https://www.city.akaiwa.lg.jp/kankou/spot/shiseki/884.html
赤磐市のジオスポットを巡りませんか?

赤磐市のジオスポットはたくさんあります。赤磐市とNPO法人地球年代学ネットワークの協業により、赤磐市の地質やジオスポットを紹介したマップや動画が配信されているので、ぜひ参考にしてくださいね。また、NPO法人地球年代学ネットワークの活動や楽しいイベントについては、関連記事で詳しく紹介しています。
なお、パワースポットには「足王神社」もありますので、こちらの記事もご覧ください。
赤磐市のジオ(石や遺跡、果物など)に触れると、きっとあなたも赤磐市の虜になるはず。赤磐市が果物の栽培に適している理由は、気候以外に土壌の成り立ちが関係しており、花崗岩が風化してできた真砂(まさ)が豊富だからなんです。
桃や洋梨(パスクラサン)でも有名な赤磐市に、まあいっぺん来てみられえ!
地球史研究所の情報
地球史研究所では野外活動も行うため、不在の場合もあります。見学や訪問は、あらかじめ電話で予約を取ってください。
住所:岡山県赤磐市周匝1599(旧県立備作高校跡地)
電話番号:086-956-3538(地球史研究所)または086-201-3131(事務局:株式会社 蒜山地質年代学研究所 地質技術センター内)
公式サイト:地球史研究所公式ホームページ
※本稿の地球史研究所の研究活動内容に関する記述は、地球史研究所・乙藤洋一郎さんへの取材とNPO法人地球年代学ネットワーク・竹下浩征さんから提供していただいた資料に基づいたものです。




