大阪でピザボックスを土俵にした紙相撲大会が開かれていると聞き、その主催者に話を伺ってきました。スナックをはじめ、いろんな場所で開催されている紙相撲大会の仕掛け人は、WEB制作事業を手掛ける奥谷さん。
夜な夜な自宅で力士を作り、地域のお店の集客の一助になるのではないかと取り組んでいます。一見すると奇抜な取り組みに見えますが、話を聞いていくと、そこには20代で経験したアフリカでの原体験から、将来アフリカで実現したい夢まで、一本の線でつながったストーリーがありました。
大阪の事業者と紙相撲?異色の取り組み
「夜な夜な52歳が1人で家で叩きながら力士を作ってるんですよ」
そう笑いながら語るのは、大阪・北新地で月に1回ランチ会を主催する奥谷さんです。
奥谷さんが今、力を入れているのが「紙相撲」を使った集客戦略。土俵はピザボックスで、力士は自作。一見突飛に見える取り組みですが、そこには地域の店舗と海外からの観光客をつなぎたいという明確な狙いがあります。
紙相撲と聞いて、懐かしさを感じる人も多いのではないでしょうか。
一方で、若い世代には馴染みがない人も多いでしょう。「今まで知らない人に会ったことがなかったけど、大体20代なんです」と奥谷さんは言います。逆に言えば、それだけ忘れられかけている日本の遊び文化とも言えます。
なぜ紙相撲を始めたの?

きっかけは、ゴミ拾いボランティアへの参加でした。
「前から環境問題に興味があって、タイでもビーチがあまり綺麗じゃない部分があって、意識を持っていた」という奥谷さんは、そこでスナックのママと知り合いました。
話をするうちに見えてきたのが、スナックが抱える構造的な課題でした。
「スナックは常連さんを大事にするシステムなんですよ。でも常連が40代、50代になったら、もう退職が近づいてくるじゃないですか」
一方で、新しい若い方はなかなかスナックに入りづらいですよね。
「このままでは客層が途絶えることが見えている」と言います。
そこに万博開催とインバウンド需要の波が重なりました。「じゃあ、インバウンドを取り込んで新しい客層を作れないか」と考えたとき、奥谷さんの頭に浮かんだのが紙相撲でした。
紙相撲で何を実現する?

奥谷さんの構想は、単にスナック1軒を盛り上げるだけにとどまりません。
「海外の人に知ってほしい店や人がいっぱいいるじゃないですか」
例えば、素晴らしいデザインを持っているのに、店を持つほど予算がない職人。海外の人に届けたいのに、手段がない人たちなど…。そこで奥谷さんが考えたのが、紙相撲大会と飲食店のコラボでした。
仕組みはとてもシンプルです。
まず「紙相撲バトル」でガチ勝負。奥谷さんに勝ったら30秒のPR時間がもらえ、負けたらクーポンを提供します。奥谷さんが勝って集めたクーポンを賭けて大会で争い、勝ち残った人が手にする仕組みです。クーポンは転売禁止ですが、友人にあげることはできます。
紙相撲という文化体験を入り口に、大阪の店舗を知ってもらう。地域と観光客をつなぐ、新しい形のプロモーションです。
すべての活動に共通する「つなぐ」思い
紙相撲の取り組みは、奥谷さんの活動の一部に過ぎません。
「全て『人をつなぐ』というところにつながっているんです」
ランチ会は、個人事業主以上を対象に北新地で開催しています。場所選びではアクセスの良さを重視し、参加者の負担を少しでも軽くすることで、つながりやすくする工夫をしています。
WEB制作の仕事でも、奥谷さんが重視するのは「見られる仕組み」を作ることです。マーケティングやブランディングを通じて、クライアントと顧客をつないでいます。
「僕の中では、すごくちゃんと結ばれていて、最終的なゴールはアフリカに向かっています」と奥谷さんは言います。
アフリカで見た景色とは

奥谷さんが「人をつなぐ」ことにこだわるのは、20代で経験したアフリカでのバックパック旅行が原点にあります。
当時、英語も話せず、辞書も持たずにケニアへ向かったそうです。乗り継ぎで降りたインドのムンバイでは、時間の都合上ホテルに泊まれず、空港に戻って一夜を過ごしました。
その悔しさを胸に、ケニアに入国。旅行会社で出会った日本人に語学学校を紹介してもらい、ゲストハウスを教えてもらって、なんとか生活を始めました。
アフリカで1年間過ごす中で、奥谷さんが最も印象に残っているのは現地の人々の笑顔でした。
「日本の昔よりもはるかに貧しいんですけど、笑顔で素敵なんですよ。貧しいからできないとか言わない。肌の色も違うし、貧富も関係なく助けてくれる」
滞在中、ルワンダ大虐殺が起きた時期とも重なっていました。
「流れてきた人が僕の泊まっているところに何人かいて。僕は何も事情がわからなかった。新聞も読めなかったから」
その中でも、ルワンダから来た人たちと友達になり、丁寧に状況を教えてもらったそうです。
「やっぱり、なんか返したいなと思って」
日本に帰国してから30年近く経った今も、その思いは変わりません。将来的には、アフリカでハローワークのような仕組みを作りたいと言います。
インバウンドと地域をつなぐ未来
紙相撲を通じて実現したいのは、インバウンド客と大阪の店舗をつなぐこと。その先には、海外と日本、日本とアフリカをつなぐ壮大な構想があります。
奥谷さんが特につながりたいと考えているのが、インバウンド向けの事業を展開している企業です。
紙相撲大会で提供するクーポンも、単なる割引券ではなく、文化体験と店舗訪問をつなぐツールとして機能する。インバウンド客が日本の遊び文化に触れ、その流れで地域の店を知る。体験と消費が自然につながる仕組みです。
こうした活動の全てが、最終的にはアフリカでの構想につながっています。日本で培った「人をつなぐ」ノウハウを、いつかアフリカで実現する。WEB制作、ランチ会、紙相撲。それぞれが独立した活動ではなく、一本の線でつながっているのです。
最後に

夜な夜な紙相撲の力士を作る。スナックでインバウンド客を呼び込む。一見すると奇抜に見える取り組みですが、全て一貫したストーリーの中にあります。
紙相撲というアナログな遊びが、大阪の街と海外からの観光客をつなぎ、やがてはアフリカでの夢にまでつながっていく。奥谷さんの挑戦は、これからも続きます。
今回取材させていただいた奥谷さんの公式サイトやSNSはこちらです。




