赤い五重塔のむこうに、桜と富士山。
観光ポスターやSNSで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。「これぞ日本」と世界中で紹介されている一枚です。
実はあの塔のすぐそばに、1300年前から続く神社があります。しかも車で5分ほどのところには、本物の馬に会える神社まであるんです。
今回は富士吉田市の二社——新倉富士浅間神社と小室浅間神社を、「神玉(かみたま)」を集めながらめぐりました。

神玉巡拝とは?7つ集めて1つのお守りに
富士山麓の7つの神社では、参拝の証として「神玉」を受けられます。
神玉は、神社ごとにゆかりのある絵柄が描かれた木製の玉。7社を巡って集め、神紐(かみひも)を通すと、ご縁をつないだ1つのお守りになります。もともと茨城県の神社で始まった取り組みを、富士北麓の若手神職の皆さんが7社の巡拝として実現しました。

一社目・新倉富士浅間神社——「絶景の神社」の意外な顔
まずは、噂の398段
新倉富士浅間神社は、富士急行・下吉田駅から歩いて5分ほど。参拝を済ませたら、いよいよあの展望デッキへ。社殿の脇から石段が続いています。
その数、398段。

……正直に申し上げます。けっこう、きついです。
最初の100段は「余裕、余裕」。ところが200段を過ぎると会話が減り、300段では完全に無言でした。ゆっくり登って15分ほど。歩きやすい靴と飲み物は必須です。
この石段、「咲くや姫階段」といいます。御祭神・木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)にちなんだ名前で、3・9・8で「さくや」。名前を知ると、少しやさしい気持ちになりますね。

山そのものが、神社の境内でした
登りきった展望デッキ。目の前の朱色の五重塔は「忠霊塔」、戦没者を慰霊するために建てられた塔です。世界中に知られているのは、ここから望む、忠霊塔ごしの富士山です。
展望デッキのある公園と、下で参拝した神社。別々の場所だと思っていたのですが——新倉山浅間公園は、忠霊塔も展望デッキもふくめて、まるごと新倉富士浅間神社の境内でした。山そのものが神社なのです。398段を登っているあいだも、絶景に見とれているあいだも、私はずっと神域の中にいたことになります。

新倉富士浅間神社は、噴火を鎮める祈りの場
その新倉富士浅間神社は、社伝によれば、807年の富士山噴火を鎮めるために、国をあげて祈りが捧げられた場所でした。このとき平城天皇から贈られたのが「三國第一山」の称号です。

絶景を見にきたつもりが、思いがけず1300年ぶんの時間に触れてしまいました。石段を下りる足が、少しだけゆっくりになります。
授与所で、最初の神玉と神紐、御朱印を授かりました。神紐は、桜色を思わせるやさしいピンクです。

二社目・小室浅間神社——本物の馬に会える神社
空気が、がらりと変わります
車で5分ほど下って、下吉田の町なかへ。次に向かったのは小室浅間神社(おむろせんげんじんじゃ)、地元では「下宮(しもみや)さん」と呼ばれて親しまれています。
朱色の鳥居をくぐった瞬間、空気が変わりました。しだれ柳が揺れ、赤い太鼓橋がかかり、参道には紅白の提灯。それなのに、とても静かなんです。聞こえるのは木々のざわめきと、自分の足音くらい。同じ町のなかで、こんなに違うものかと驚きます。

矢ではなく、「蹄の跡」で占う流鏑馬
この神社でいちばん驚いたのが、毎年9月19日の流鏑馬(やぶさめ)祭のお話です。
流鏑馬といえば、馬上から的を射抜く勇ましい神事を思い浮かべますよね。ところがこの神社で注目されるのは、矢ではありません。
馬が走ったあとに残る、蹄(ひづめ)の跡なんです。

祭り当日、飾りつけた馬が馬場を駆けます。1回走るごとに「占人(うらびと)」と呼ばれる人が出てきて、蹄の跡をじっと確かめる。跡のかたちや深さから、その年の地域の吉凶を読み取るのだそうです。

最後、馬は馬場から外へと駆け出していきます。これは「山の神さまが富士山へ帰っていく姿」なのだとか。境内の案内板によると、流鏑馬が山への信仰と結びついていることを今に伝える、県内でただひとつの例だそうです。
そして、本当に馬がいます
境内の一角に、「神馬馬場(しんめばば)」と書かれた立札。その先に柵で囲まれた馬場が広がり、奥には厩(うまや)が並んでいます。

そして——本当に、馬がいるんです。
栗色の毛並みの立派な馬が、柵のすぐそばまで近づいてきてくれました。大きな瞳でこちらをじっと見て、鼻先をふんと動かす。想像していたよりずっと大きくて、ずっと、おだやかです。

厩には「神馬舎(しんめしゃ)」の扁額。中には、艶やかな黒鹿毛の馬が静かに立っています。ただし、触れたり、エサをあげたりはできません。神さまにお仕えする馬ですから、そっと見守るのが作法です。

馬場のそばには、4か国語の貼り紙もありました。「このエサは池の魚用です。馬には絶対に与えないでください」……つい、あげたくなる人がいるんでしょうね。
境内には、白い馬の像をお祀りしたお社もあります。掲げられた額は、さきほどの厩と同じ「神馬舎」。生きた馬がいて、白馬の像もお祀りされている。この神社にとって馬がどれほど特別な存在か、伝わってきます。

二つ目の神玉
授与所で、二つ目の神玉と神紐、御朱印を授かりました。神紐は深い紫。神社ごとに房の色が変わるんですね。次はどんな色だろうと、先が楽しみになります。

神玉を追いかけた先に、町とともにある信仰があった
絶景で世界中の人を集める神社と、地元で「下宮さん」と呼ばれ、馬とともにある神社。同じ富士吉田の町に、こんなに違う二つの顔がありました。
にぎわいも静けさも、どちらもこの町の暮らしのなかにあるもの。神玉を追いかけていなければ、二社目の鳥居はくぐらないままだったと思います。
次に訪れるときは、どうか晴れますように。五重塔のむこうの富士山に、今度こそ会えますように。
新倉富士浅間神社の基本情報
所在地
〒403-0031
山梨県富士吉田市浅間2-4-1
電話番号
0555-23-2697
授与所・御朱印の受付時間
9:00〜16:00
駐車場
市営新倉山浅間公園駐車場をご利用ください(有料・24時間利用可能・トイレあり)。
※ご祈祷を受ける方には専用駐車場(無料)の案内があります(ご祈祷は予約制)。
※駐車場までの道が細いため、観光バスは駐車できません。料金や観光バスについては「新倉山浅間公園・忠霊塔|富士吉田市観光ガイド」をご参照ください。
車でのアクセス
中央自動車道・河口湖ICから山中湖方面へ約10分
公共交通機関でのアクセス
富士急行線・下吉田駅から徒歩約5分
公式サイト
https://www.arakurafujisengen.com
小室浅間神社の基本情報
正式名称
冨士山下宮小室浅間神社(ふじさんしもみやおむろせんげんじんじゃ)
所在地
〒403-0004
山梨県富士吉田市下吉田3-32-18
電話番号
0555-22-1025
授与所・御朱印の受付時間
9:00〜17:00
駐車場
あり
車でのアクセス
中央自動車道・河口湖ICから約15分/中央自動車道・富士吉田西桂スマートICから約10分/東富士五湖道路・富士吉田ICから約15分
公共交通機関でのアクセス
富士急行線・下吉田駅から徒歩約4分
公式サイト
http://www.fgo.jp/~yabusame/
神玉巡拝の基本情報
- 神玉初穂料:1社につき500円
- 神紐初穂料:1社につき300円
- 対象:富士山麓の7社
- 7社をすべて巡ると、最後に参拝した神社で巡拝達成証明書を受け取れます
- 神玉の絵柄と神紐の色は、神社ごとに異なります
各神社の神玉授与時間やモデルコースなど、神玉巡拝の最新情報は以下をご確認ください。
富士山麓神玉巡拝ガイド(富士吉田市観光ガイド)
https://fujiyoshida.net/feature/kamitamajunpai/kamitamajunpai
富士山神玉巡拝(山梨県公式観光サイト)
https://www.yamanashi-kankou.jp/volunteer/event/fujisankamitamajyunpai.html




