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聖地  |    2026.08.29

神玉巡拝で出会う、絶景と神馬|新倉富士浅間神社と小室浅間神社

赤い五重塔のむこうに、桜と富士山。

観光ポスターやSNSで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。「これぞ日本」と世界中で紹介されている一枚です。

実はあの塔のすぐそばに、1300年前から続く神社があります。しかも車で5分ほどのところには、本物の馬に会える神社まであるんです。

今回は富士吉田市の二社——新倉富士浅間神社と小室浅間神社を、「神玉(かみたま)」を集めながらめぐりました。

新倉山浅間公園から望む五重塔と富士山。「これぞ日本」として世界中に知られる風景

神玉巡拝とは?7つ集めて1つのお守りに

富士山麓の7つの神社では、参拝の証として「神玉」を受けられます。

神玉は、神社ごとにゆかりのある絵柄が描かれた木製の玉。7社を巡って集め、神紐(かみひも)を通すと、ご縁をつないだ1つのお守りになります。もともと茨城県の神社で始まった取り組みを、富士北麓の若手神職の皆さんが7社の巡拝として実現しました。

7社すべての神玉を集めた姿。神紐の色は神社ごとに異なり、揃うと七色の房が扇のように広がる。7社を巡ると、最後に参拝した神社で「神社巡拝達成証明書」を受け取れる

一社目・新倉富士浅間神社——「絶景の神社」の意外な顔

まずは、噂の398段

新倉富士浅間神社は、富士急行・下吉田駅から歩いて5分ほど。参拝を済ませたら、いよいよあの展望デッキへ。社殿の脇から石段が続いています。

その数、398段

下から見上げた398段。この先はまだ見えません

……正直に申し上げます。けっこう、きついです。

最初の100段は「余裕、余裕」。ところが200段を過ぎると会話が減り、300段では完全に無言でした。ゆっくり登って15分ほど。歩きやすい靴と飲み物は必須です。

この石段、「咲くや姫階段」といいます。御祭神・木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)にちなんだ名前で、3・9・8で「さくや」。名前を知ると、少しやさしい気持ちになりますね。

赤い灯籠が並ぶスロープの道。398段を使わずに上がれるが、展望デッキの手前は階段になっている

山そのものが、神社の境内でした

登りきった展望デッキ。目の前の朱色の五重塔は「忠霊塔」、戦没者を慰霊するために建てられた塔です。世界中に知られているのは、ここから望む、忠霊塔ごしの富士山です。

展望デッキのある公園と、下で参拝した神社。別々の場所だと思っていたのですが——新倉山浅間公園は、忠霊塔も展望デッキもふくめて、まるごと新倉富士浅間神社の境内でした。山そのものが神社なのです。398段を登っているあいだも、絶景に見とれているあいだも、私はずっと神域の中にいたことになります。

この日は曇天で、富士山はすっぽり雲の中。それでも展望デッキから人は減らない。雲のむこうに何があるかを、みなさん知っている。右手が忠霊塔

新倉富士浅間神社は、噴火を鎮める祈りの場

その新倉富士浅間神社は、社伝によれば、807年の富士山噴火を鎮めるために、国をあげて祈りが捧げられた場所でした。このとき平城天皇から贈られたのが「三國第一山」の称号です。

社殿の前に立つ木柱にも「三國第一山 新倉富士浅間神社」の文字

絶景を見にきたつもりが、思いがけず1300年ぶんの時間に触れてしまいました。石段を下りる足が、少しだけゆっくりになります。

授与所で、最初の神玉と神紐、御朱印を授かりました。神紐は、桜色を思わせるやさしいピンクです。

新倉富士浅間神社の神玉と桜色の神紐、そして文月(7月)の御朱印。朝顔と風鈴、舞う蝶

二社目・小室浅間神社——本物の馬に会える神社

空気が、がらりと変わります

車で5分ほど下って、下吉田の町なかへ。次に向かったのは小室浅間神社(おむろせんげんじんじゃ)、地元では「下宮(しもみや)さん」と呼ばれて親しまれています。

朱色の鳥居をくぐった瞬間、空気が変わりました。しだれ柳が揺れ、赤い太鼓橋がかかり、参道には紅白の提灯。それなのに、とても静かなんです。聞こえるのは木々のざわめきと、自分の足音くらい。同じ町のなかで、こんなに違うものかと驚きます。

しだれ柳ごしに朱色の鳥居と拝殿。紅白の提灯が連なり、右手前に赤い太鼓橋

矢ではなく、「蹄の跡」で占う流鏑馬

この神社でいちばん驚いたのが、毎年9月19日流鏑馬(やぶさめ)祭のお話です。

流鏑馬といえば、馬上から的を射抜く勇ましい神事を思い浮かべますよね。ところがこの神社で注目されるのは、矢ではありません。

馬が走ったあとに残る、蹄(ひづめ)の跡なんです。

流鏑馬祭の乗り手と馬。弓と矢を携えているが、この神事で読まれるのは矢の行方ではない(写真提供:小室浅間神社)

祭り当日、飾りつけた馬が馬場を駆けます。1回走るごとに「占人(うらびと)」と呼ばれる人が出てきて、蹄の跡をじっと確かめる。跡のかたちや深さから、その年の地域の吉凶を読み取るのだそうです。

一頭が走り終えるごとに、馬場に残された蹄の跡が確かめられる(写真提供:小室浅間神社)

最後、馬は馬場から外へと駆け出していきます。これは「山の神さまが富士山へ帰っていく姿」なのだとか。境内の案内板によると、流鏑馬が山への信仰と結びついていることを今に伝える、県内でただひとつの例だそうです。

そして、本当に馬がいます

境内の一角に、「神馬馬場(しんめばば)」と書かれた立札。その先に柵で囲まれた馬場が広がり、奥には厩(うまや)が並んでいます。

境内の一角に立つ「神馬馬場」の立札。柵のむこうに馬場が広がり、奥には厩が並ぶ

そして——本当に、馬がいるんです。

栗色の毛並みの立派な馬が、柵のすぐそばまで近づいてきてくれました。大きな瞳でこちらをじっと見て、鼻先をふんと動かす。想像していたよりずっと大きくて、ずっと、おだやかです。

柵のそばまで近づいてきてくれた神馬

厩には「神馬舎(しんめしゃ)」の扁額。中には、艶やかな黒鹿毛の馬が静かに立っています。ただし、触れたり、エサをあげたりはできません。神さまにお仕えする馬ですから、そっと見守るのが作法です。

「神馬舎」の扁額。中には黒鹿毛の馬が静かに立っていた

馬場のそばには、4か国語の貼り紙もありました。「このエサは池の魚用です。馬には絶対に与えないでください」……つい、あげたくなる人がいるんでしょうね。

境内には、白い馬の像をお祀りしたお社もあります。掲げられた額は、さきほどの厩と同じ「神馬舎」。生きた馬がいて、白馬の像もお祀りされている。この神社にとって馬がどれほど特別な存在か、伝わってきます。

もうひとつの「神馬舎」(左)。白馬の像は金の鈴と紅白の房を下げている(右)

二つ目の神玉

授与所で、二つ目の神玉と神紐、御朱印を授かりました。神紐は深い紫。神社ごとに房の色が変わるんですね。次はどんな色だろうと、先が楽しみになります。

小室浅間神社の神玉と紫の神紐、そして御朱印。神玉は馬蹄のなかに馬、御朱印にも馬蹄の印と馬を駆る人の姿が

神玉を追いかけた先に、町とともにある信仰があった

絶景で世界中の人を集める神社と、地元で「下宮さん」と呼ばれ、馬とともにある神社。同じ富士吉田の町に、こんなに違う二つの顔がありました。

にぎわいも静けさも、どちらもこの町の暮らしのなかにあるもの。神玉を追いかけていなければ、二社目の鳥居はくぐらないままだったと思います。

次に訪れるときは、どうか晴れますように。五重塔のむこうの富士山に、今度こそ会えますように。

新倉富士浅間神社の基本情報

所在地
〒403-0031
山梨県富士吉田市浅間2-4-1

電話番号
0555-23-2697

授与所・御朱印の受付時間
9:00〜16:00

駐車場
市営新倉山浅間公園駐車場をご利用ください(有料・24時間利用可能・トイレあり)。
※ご祈祷を受ける方には専用駐車場(無料)の案内があります(ご祈祷は予約制)。
※駐車場までの道が細いため、観光バスは駐車できません。料金や観光バスについては「新倉山浅間公園・忠霊塔|富士吉田市観光ガイド」をご参照ください。

車でのアクセス
中央自動車道・河口湖ICから山中湖方面へ約10分

公共交通機関でのアクセス
富士急行線・下吉田駅から徒歩約5分

公式サイト
https://www.arakurafujisengen.com

小室浅間神社の基本情報

正式名称
冨士山下宮小室浅間神社(ふじさんしもみやおむろせんげんじんじゃ)

所在地
〒403-0004
山梨県富士吉田市下吉田3-32-18

電話番号
0555-22-1025

授与所・御朱印の受付時間
9:00〜17:00

駐車場
あり

車でのアクセス
中央自動車道・河口湖ICから約15分/中央自動車道・富士吉田西桂スマートICから約10分/東富士五湖道路・富士吉田ICから約15分

公共交通機関でのアクセス
富士急行線・下吉田駅から徒歩約4分

公式サイト
http://www.fgo.jp/~yabusame/

神玉巡拝の基本情報
  • 神玉初穂料:1社につき500円
  • 神紐初穂料:1社につき300円
  • 対象:富士山麓の7社
  • 7社をすべて巡ると、最後に参拝した神社で巡拝達成証明書を受け取れます
  • 神玉の絵柄と神紐の色は、神社ごとに異なります

各神社の神玉授与時間やモデルコースなど、神玉巡拝の最新情報は以下をご確認ください。

富士山麓神玉巡拝ガイド(富士吉田市観光ガイド)
https://fujiyoshida.net/feature/kamitamajunpai/kamitamajunpai

富士山神玉巡拝(山梨県公式観光サイト)
https://www.yamanashi-kankou.jp/volunteer/event/fujisankamitamajyunpai.html

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この記事を書いた人

宮沢 まみ

山梨県甲府市在住の取材ライター。 地元・山梨を拠点に、観光地や地域に根ざすお店を訪ね、土地の物語や人の想いを丁寧に取材・執筆しています。海外生活の経験も活かし、日本各地の観光と暮らしの魅力を伝えることを目指しています。

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