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アート  |    2026.08.31

【2026】古楽器の音色と若き演奏家に出会う|国際古楽コンクール〈山梨〉

2026年4月、山梨で毎年春に開かれる国際古楽コンクール〈山梨〉が開催されました。初めて訪れる人にも「また来たい」と思わせてくれる、あたたかなコンクールです。

会場には、若い音楽家たちの演奏を楽しみに訪れた人々が集まり、チェンバロやフォルテピアノ、クラヴィコードなどの古楽器が並びます。

演奏家それぞれの音楽に耳を澄ませ、古楽器が織りなす音の表情にふれ、気になる演奏家を見つける。そんな出会いがあることも、このコンクールの魅力です。

会場で聴いてこそわかる、音楽との近さ

開演前の会場。観客が続々と入場し、コンサートへの期待が高まります

国際古楽コンクール〈山梨〉の魅力は、本選だけではありません。

期間中は、甲府市中心街にあるライブハウス「桜座」や、ジャズクラブとして親しまれる「Cotton Club」、山梨県立図書館など、街なかのさまざまな会場で予選や演奏会などの関連イベントが行われます。

入賞者コンサートの開演を待つCotton Clubのステージ。チェンバロが置かれ、これから始まる演奏への期待が高まります

今年も国内外から演奏家が参加し、会場には県内外から多くの聴衆が集まりました。オーストラリア、台湾、韓国、ロシアなどからの応募者もあり、国際コンクールとしての広がりも感じられます。

本番前、桜座のステージでチェンバロの感触を確かめる出場者

桜座にはチェンバロやクラヴィコードが展示され、来場者は実際に鍵盤に触れて音を確かめることができます。本番前には、出場者が思い思いに楽器の感触を確かめ、静かに指慣らしをする姿も見られました。真剣な表情で楽器に向かう演奏家たちの姿からは、これから始まるコンクールの緊張感が伝わってきます。

桜座に置かれていたクラヴィコード。奏者が実際に触れながら、その繊細な音色を確かめていました

国際古楽コンクール〈山梨〉の会場は、演奏者と聴衆の距離が近いことも印象的です。大きなホールで舞台を遠くから眺めるのではなく、同じフロアで音に耳を澄ませるような距離感があります。息遣いまで伝わってくるような空間だからこそ、自然と演奏の世界に引き込まれていきます。

予選開演前のチェンバロ調律。古楽器の響きを整え、本番に備えます

演奏を聴くだけでなく、楽器に触れ、演奏家を身近に感じられることも、このコンクールならではの魅力です。実行委員長の荒川恒子先生が「お気に入りの演奏家を見つけに来てください」と話されるように、実際に耳を傾けていると、「また聴きたい」と思える演奏家に出会えるかもしれません。

「また聴きたい」と思える演奏家に出会う

予選開演前の会場。商工会議所の会議室に来場者が集まり、演奏の始まりを待ちます

コンクールと聞くと、速く、正確に、難しい曲を弾き切る技術の高さを競う場という印象を持つ方もいるかもしれません。けれど、会場で耳を澄ませていると、一人ひとりの演奏家がどのように音楽と向き合っているのかが伝わってきます。

印象に残ったのは、「この人は自分の世界を持っている」と感じる演奏家がいたことでした。

演奏には確かな技術が求められます。しかし、心に残ったのは技術だけではありませんでした。一音目が鳴った瞬間に空気が変わる人、音楽の向こうに風景や物語が見えてくる人。演奏者それぞれが異なる世界を描き、その世界へ聴き手を招き入れてくれます。

フォルテピアノ。現代のピアノとは異なる構造を持つ、18〜19世紀に広く使われた鍵盤楽器です

特に心を動かされたのが、フォルテピアノの演奏でした。現代のピアノとは異なる構造を持つフォルテピアノは、音の立ち上がりや響き方も異なります。

演奏を聴きながら、「なんて素敵な世界なのだろう」と引き込まれていると、演奏が終わった瞬間、審査員席には満足そうな表情が浮かんでいました。満面の笑みを見せる人や、静かにうなずく人もいます。

それまで真剣な表情で演奏に向き合っていた審査員たちが、ふっと表情を和らげたのを見て、自分が惹かれた理由も少しわかった気がしました。演奏家と審査員、そして客席が、言葉にできない何かを共有したように感じられた瞬間でした。

楽器を知ると、聴こえ方が変わる

チェンバロを鍵盤側から見た比較。鍵盤が一段のもの、二段のものがあることがわかります

古楽の面白さは、演奏だけでなく、楽器そのものにもあります。

フォルテピアノの鍵盤下に備えられた、膝で押し上げて操作するダンパーペダル。現代のピアノの足ペダルとは異なり、奏者が膝で板状の部品を押し上げて響きを調整します。

例えばフォルテピアノには、現在のピアノのように足で踏むペダルではなく、膝で押し上げるレバーが付いたものがあります。実際にその仕組みを見せていただくと、楽器の構造が違えば演奏方法も変わり、そこから生まれる音の表情も変わることが自然に伝わってきました。

2台のチェンバロ。楽器ごとに音色や響きの厚みが異なり、同じチェンバロでも違った表情を持っています
チェンバロ内部に施された装飾。音を奏でる楽器でありながら、美しい工芸品としての魅力も備えています

夜のCotton Clubで行われた入賞者コンサートでは、演奏中にヴァイオリンのガット弦が切れるハプニングもありました。けれど、その場でガット弦と現在一般的に使われるスチール弦の違い、羊の腸から弦を作る工程、さらにかつて使われていた優れた製法が一度失われ、現在その復活が試みられていることなどのお話を聞くことができました。

一つの弦にも、素材や製法、受け継がれなかった技術、そしてそれを取り戻そうとする人たちの物語があります。思いがけない出来事をきっかけに、古楽器の音が多くの人の手と知恵によって支えられていることを感じました。

「お気に入り」ができる楽しさ

もう一つ、このコンクールの楽しみは、人との再会です。

昨年のコンクールで心に残った演奏家が、今年は入賞者コンサートの舞台に立っていました。言葉を交わしたことがあるわけではありません。それでも、研鑽を重ねた姿にもう一度出会えたことが、思いがけずうれしく感じられました。

また、本番前に桜座で真剣に指慣らしをする姿を見て、「頑張ってほしい」と思っていた若い奏者が入賞したことも、個人的にはうれしい出来事でした。

順位だけではなく、一人ひとりの歩みや成長を長く見守れることも、このコンクールの魅力なのだと思います。

古楽コンクールを立ち上げ、長年主宰してきた荒川恒子 山梨大学名誉教授

荒川先生が以前おっしゃっていた「お気に入りを見つけに来てね」という言葉が、今年はより実感をもって心に残りました。

私自身、これまで何度もこのコンクールに足を運び、そのたびに演奏家や楽器、音色との新しい出会いがありました。順位を競う場であると同時に、聴く側にとっても「お気に入り」を見つける場所なのだと思います。

今年もまた、会場でしか味わえない音や空気に触れ、多くの発見がありました。

▼公式サイト

国際古楽コンクール〈山梨〉
2026年の開催情報はこちらからご覧になれます。
https://icemy.jp

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この記事を書いた人

金子 よし子

山梨県出身、山梨県在住のwebライター。 山梨県の魅力をたくさん発信していきたいと思います!

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